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第一章 出会いからもう一度
女生徒に話かけられました
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「……」
「ハーリング様?」
一度目の人生では女性から声をかけられたことなどなかったユアンは、しばらくその場で固まる、そして名前を呼ばれ、初めて本当に目の前の女生徒が自分に声をかけてきたのだと気がついた。
「 ハーリング様は、剣鬼様のお知り合いなのですか?」
"剣鬼"とはキールのギフト名である。
ギフトを授かる人はごく稀で、また授かった人物は類稀な力を発揮すると言われているので、キールも教会でギフト持ちだと正式に認定されてからすっかり有名人の仲間入りであった。
そんなわけでキールは学園では剣鬼様の愛称で呼ばれているのだ。
当の本人は「そんなの俺の価値じゃない」と、ギフトのお陰で剣術が褒めたたえられることを嫌っているのだが。
「そうですが? なにか」
女生徒に話かけられてソワソワしてしまったが、キールの名前があがったので、おもわず納得する。
ギフト持ちなうえ、将来を期待させるあの爽やかなルックスだ。女子にモテないわけがないのだ、だが思い返してみても、前の人生でキールの浮いた話なんて一度も聞かなかった。
もしかして、もてないユアンに気を遣って、恋の話などは避けていたのかもしれないが。
(それにしても、僕さえ結婚できたのに、キールは婚約者の話も最後まで聞かなかったな)
そんなことをふと思う。
「明日、私たちとご一緒にランチでもいかがですか?」
ユアンが物思いにふけっていると、そんな声が聞こえた。
「わかりました。キールに伝えときます」
「ありがとうございます」
キャーキャー言っている女生徒たちに愛想笑いを浮かべながら、キールがくれた唐揚げをパクリと口に放り込む。
「じゃあ僕はこれで」
立ち去ろうとするユアンに「約束ですよ。ではまた明日ハーリング様」と、言葉が投げかけられた。
(ん? 僕も一緒? なわけないか)
勘違いしたらいけない。
(前の人生では、友達すら出来なかった僕が誘われるわけがない、きっと明日も教室で会うからとかの挨拶だろう)
思い返せば、授業が終わると馬車を使えることをこれ幸いと、毎日のように街においしい食べ物を求め、一人繰り出していた。
それに自分のことを陰で、豚伯爵とあだ名で呼んでいるようなクラスメートと仲良くなる気さえなかったから、教室内でも最低限の会話しかしてこなかった。
だからクラスメートの顔と名前が一致する程度で、特に思い出はない。
今回の人生でも、授業はほとんど寝ているうえ、空いた時間はメアリーを探しに構内を歩きまわっているので、やはり接点は皆無だった。
それでもほぼ標準となった体形のせいなのか、それとも最初にローズマリーに恥をかかせることなく助けられたせいなのか、今のところクラスメートから陰口を叩かれたり、ローズマリーに突っかかられることはなく、快適な学園生活を送れている。
(まあなんにせよ僕には、メアリーとキール、そして家族がいればそれでいい)
「早く授業終わらないかな」
午前中も居眠りばかりしてたのに、さらに大きなあくびをひとつすると、ユアンは教室へと向かったのだった。
「ハーリング様?」
一度目の人生では女性から声をかけられたことなどなかったユアンは、しばらくその場で固まる、そして名前を呼ばれ、初めて本当に目の前の女生徒が自分に声をかけてきたのだと気がついた。
「 ハーリング様は、剣鬼様のお知り合いなのですか?」
"剣鬼"とはキールのギフト名である。
ギフトを授かる人はごく稀で、また授かった人物は類稀な力を発揮すると言われているので、キールも教会でギフト持ちだと正式に認定されてからすっかり有名人の仲間入りであった。
そんなわけでキールは学園では剣鬼様の愛称で呼ばれているのだ。
当の本人は「そんなの俺の価値じゃない」と、ギフトのお陰で剣術が褒めたたえられることを嫌っているのだが。
「そうですが? なにか」
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ギフト持ちなうえ、将来を期待させるあの爽やかなルックスだ。女子にモテないわけがないのだ、だが思い返してみても、前の人生でキールの浮いた話なんて一度も聞かなかった。
もしかして、もてないユアンに気を遣って、恋の話などは避けていたのかもしれないが。
(それにしても、僕さえ結婚できたのに、キールは婚約者の話も最後まで聞かなかったな)
そんなことをふと思う。
「明日、私たちとご一緒にランチでもいかがですか?」
ユアンが物思いにふけっていると、そんな声が聞こえた。
「わかりました。キールに伝えときます」
「ありがとうございます」
キャーキャー言っている女生徒たちに愛想笑いを浮かべながら、キールがくれた唐揚げをパクリと口に放り込む。
「じゃあ僕はこれで」
立ち去ろうとするユアンに「約束ですよ。ではまた明日ハーリング様」と、言葉が投げかけられた。
(ん? 僕も一緒? なわけないか)
勘違いしたらいけない。
(前の人生では、友達すら出来なかった僕が誘われるわけがない、きっと明日も教室で会うからとかの挨拶だろう)
思い返せば、授業が終わると馬車を使えることをこれ幸いと、毎日のように街においしい食べ物を求め、一人繰り出していた。
それに自分のことを陰で、豚伯爵とあだ名で呼んでいるようなクラスメートと仲良くなる気さえなかったから、教室内でも最低限の会話しかしてこなかった。
だからクラスメートの顔と名前が一致する程度で、特に思い出はない。
今回の人生でも、授業はほとんど寝ているうえ、空いた時間はメアリーを探しに構内を歩きまわっているので、やはり接点は皆無だった。
それでもほぼ標準となった体形のせいなのか、それとも最初にローズマリーに恥をかかせることなく助けられたせいなのか、今のところクラスメートから陰口を叩かれたり、ローズマリーに突っかかられることはなく、快適な学園生活を送れている。
(まあなんにせよ僕には、メアリーとキール、そして家族がいればそれでいい)
「早く授業終わらないかな」
午前中も居眠りばかりしてたのに、さらに大きなあくびをひとつすると、ユアンは教室へと向かったのだった。
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