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最終章 一度目のその先へ
キールの結婚
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「アスタ先輩、花嫁が引くほど泣いてたな」
「そうですね」
卒業してから二年半、見習い期間が終わりその後半年足らずで隊長補佐になったキールから、結婚の招待状が届いた。
式はアンリの治めるオルレアン領の教会。
今日は二人の晴れ舞台であった。
アスタのシスコンぶりをあまり知らないクリスなど、式の間中泣いているアスタをただただ、よい兄としてもらい泣きをしていた。
ユアンはその横でいつ「ちょっと待った!」とアスタが叫び出すんじゃないかとひやひやしっぱなしだったが、式は何事もなく無事に終わった。
長く煌めくような銀色の髪と真っ白なウエディングドレスに身を包んだアンリはとても綺麗で、隣に立つキールも学生だったころの幼さはすっかりなくなり、精悍な男の顔になっていた。
「ユアン先輩も早く結婚してください。ルナさんがユアン先輩が結婚するまで結婚しないなんていってるんですよ」
アンリに祝福の花びらを撒いているルナとメアリーを眺めながら、クリスがユアンの隣で愚痴をこぼす。
ユアンと同じぐらいチビでぽっちゃりしていたクリスも、ルナの指導のもと今ではすっかりスラリとした長身の優男になっていた。
学園卒業後は、前の人生と同じように教会で奉公活動をしながら聖職者を目指していた。
ルナもいつからかクリスの猛アタックを受け入れ、卒業と同時に婚約し今は花嫁修業中である。
「うん、ごめんね」
プロポーズの次の日、本当に二人はユアンの両親に婚約の挨拶にいった。メアリーの両親にも手紙で知らせ、卒業と同時に許可をもらった。メアリーの両親はもちろん、ユアンの両親も拍子抜けするほど二人の婚約をすぐに認めてくれ、喜んでくれた。
しかし卒業後すぐに籍をいれなかったのは、二人とも仕事が軌道にのるまでお互いに頑張ると決めたからだ。
そしてこの二年でメアリーも独立し”ピローネ”二号店を任されることになった。まだ小さいながらも数人のバイトも雇わないとメアリー1人では手が回らない程度には繁盛していた。
ユアンも初めの一年半ほどは貿易船に乗り、信頼関係を結ぶため各国を回ってほとんどフーブル国にはいない状態だった、その後も帰ってきてはまた出かけてをくりかえし、ようやくこの半年フーブル国にいながら仕事ができるようになってきたところだった。
「僕も早くそうしたいんだけど……」
学園卒業後、婚約はしていてもだいたい二年間は修行やら弟子やら見習い期間のため結婚する者は少ない。
ユアンとメアリーも、親の援助なしで生活できる基盤はできた。
ユアンは今すぐにでも籍を入れて結婚式も上げたいところなのだが、新婚旅行まで考えたら、なかなかお互いの都合が合う日が取れなくて、キールに先を越されてしまったのだ。
「そういえば、神父の資格はもう取れたんだよな、なら神父はクリスに頼んでいいかな」
ポリポリと頬を掻きながらそう頼む。
「はい。いつでもいってください」
式の後は立食パーティーだった。
レイモンドは忙しくて出席してないが、ローズマリーは先ほどから新郎新婦以上に色々な人に囲まれている。
ローズマリーも魔法学部の研究生を今年卒業し、近いうちにレイモンドと結婚をすることが決まっている。このまま順調にいけば時期王太子妃である。今のうちに仲良くしておこうと貴族たちが群がっているのだ。
そしてユアンたちが研究してきた魔法石を使った街灯の発表も、その結婚発表とともに一緒にすることが決まっていた。
偉大な発明をした次期王太子妃。それが今回のローズマリーだ。
(街灯建設が前回の人生よりだいぶ早く叶いそうだ。魔法石ももっと買っておこう)
ついつい商売のことも考えて頭の中で計算するユアン。
「みんな今日はアンリとキールのためにありがとう」
酔いつぶれたアスタを部屋に置いて、アレクがそんなユアンたちのところにやってきた。
「ところでユアン、だいぶ荒稼ぎしてるみたいだな」
アレクがユアンの耳元でささやく。
「最近なんてユアンが取引すると、必ず流行りが来るから流行神とか言われてるらしいじゃないか」
「美味しいものを見つけるのは昔から得意だったんで、たまたまです」
「確かに食い物に関してだけは口うるさかったからな」
アレクも納得いったというようにハハハと笑った。
「まあそのおかげで、街灯に使う魔法石も大量に仕入れ出来たし、ありがたいことだ」
貿易船に乗って色々な人と会いパイプを作った相手はこの数年でかならず何かしらの流行りを叩きだすところを優先して選んだ。
食べ物の流行りすたりは早いので、だいたい季節ごとに何かが流行る。そしてそれを知っているユアンは、先回りして大量に契約を入れていくのだ。なので最近ではユアンが大量契約したものは必ず流行ると噂になっているのだ。
あまりに目立つのも危険な気がするので、それでもたまに赤字にならない程度にどうでもよいものも挟んだりするのだが、まだ貿易を始めたばかりのユアンが赤字にならないことがすごいことのようだった。
結婚式が終わると、ユアン達魔具研のメンバーはそのまま屋敷に泊まっていくことになっていた。
久々のメンバー全員集合である。
「そうですね」
卒業してから二年半、見習い期間が終わりその後半年足らずで隊長補佐になったキールから、結婚の招待状が届いた。
式はアンリの治めるオルレアン領の教会。
今日は二人の晴れ舞台であった。
アスタのシスコンぶりをあまり知らないクリスなど、式の間中泣いているアスタをただただ、よい兄としてもらい泣きをしていた。
ユアンはその横でいつ「ちょっと待った!」とアスタが叫び出すんじゃないかとひやひやしっぱなしだったが、式は何事もなく無事に終わった。
長く煌めくような銀色の髪と真っ白なウエディングドレスに身を包んだアンリはとても綺麗で、隣に立つキールも学生だったころの幼さはすっかりなくなり、精悍な男の顔になっていた。
「ユアン先輩も早く結婚してください。ルナさんがユアン先輩が結婚するまで結婚しないなんていってるんですよ」
アンリに祝福の花びらを撒いているルナとメアリーを眺めながら、クリスがユアンの隣で愚痴をこぼす。
ユアンと同じぐらいチビでぽっちゃりしていたクリスも、ルナの指導のもと今ではすっかりスラリとした長身の優男になっていた。
学園卒業後は、前の人生と同じように教会で奉公活動をしながら聖職者を目指していた。
ルナもいつからかクリスの猛アタックを受け入れ、卒業と同時に婚約し今は花嫁修業中である。
「うん、ごめんね」
プロポーズの次の日、本当に二人はユアンの両親に婚約の挨拶にいった。メアリーの両親にも手紙で知らせ、卒業と同時に許可をもらった。メアリーの両親はもちろん、ユアンの両親も拍子抜けするほど二人の婚約をすぐに認めてくれ、喜んでくれた。
しかし卒業後すぐに籍をいれなかったのは、二人とも仕事が軌道にのるまでお互いに頑張ると決めたからだ。
そしてこの二年でメアリーも独立し”ピローネ”二号店を任されることになった。まだ小さいながらも数人のバイトも雇わないとメアリー1人では手が回らない程度には繁盛していた。
ユアンも初めの一年半ほどは貿易船に乗り、信頼関係を結ぶため各国を回ってほとんどフーブル国にはいない状態だった、その後も帰ってきてはまた出かけてをくりかえし、ようやくこの半年フーブル国にいながら仕事ができるようになってきたところだった。
「僕も早くそうしたいんだけど……」
学園卒業後、婚約はしていてもだいたい二年間は修行やら弟子やら見習い期間のため結婚する者は少ない。
ユアンとメアリーも、親の援助なしで生活できる基盤はできた。
ユアンは今すぐにでも籍を入れて結婚式も上げたいところなのだが、新婚旅行まで考えたら、なかなかお互いの都合が合う日が取れなくて、キールに先を越されてしまったのだ。
「そういえば、神父の資格はもう取れたんだよな、なら神父はクリスに頼んでいいかな」
ポリポリと頬を掻きながらそう頼む。
「はい。いつでもいってください」
式の後は立食パーティーだった。
レイモンドは忙しくて出席してないが、ローズマリーは先ほどから新郎新婦以上に色々な人に囲まれている。
ローズマリーも魔法学部の研究生を今年卒業し、近いうちにレイモンドと結婚をすることが決まっている。このまま順調にいけば時期王太子妃である。今のうちに仲良くしておこうと貴族たちが群がっているのだ。
そしてユアンたちが研究してきた魔法石を使った街灯の発表も、その結婚発表とともに一緒にすることが決まっていた。
偉大な発明をした次期王太子妃。それが今回のローズマリーだ。
(街灯建設が前回の人生よりだいぶ早く叶いそうだ。魔法石ももっと買っておこう)
ついつい商売のことも考えて頭の中で計算するユアン。
「みんな今日はアンリとキールのためにありがとう」
酔いつぶれたアスタを部屋に置いて、アレクがそんなユアンたちのところにやってきた。
「ところでユアン、だいぶ荒稼ぎしてるみたいだな」
アレクがユアンの耳元でささやく。
「最近なんてユアンが取引すると、必ず流行りが来るから流行神とか言われてるらしいじゃないか」
「美味しいものを見つけるのは昔から得意だったんで、たまたまです」
「確かに食い物に関してだけは口うるさかったからな」
アレクも納得いったというようにハハハと笑った。
「まあそのおかげで、街灯に使う魔法石も大量に仕入れ出来たし、ありがたいことだ」
貿易船に乗って色々な人と会いパイプを作った相手はこの数年でかならず何かしらの流行りを叩きだすところを優先して選んだ。
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あまりに目立つのも危険な気がするので、それでもたまに赤字にならない程度にどうでもよいものも挟んだりするのだが、まだ貿易を始めたばかりのユアンが赤字にならないことがすごいことのようだった。
結婚式が終わると、ユアン達魔具研のメンバーはそのまま屋敷に泊まっていくことになっていた。
久々のメンバー全員集合である。
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