【完結】二度目の人生、君ともう一度!〜彼女を守りたいだけなのに〜

トト

文字の大きさ
上 下
123 / 147
第四章 誓いをもう一度

聖女じゃない

しおりを挟む
 ダンスパーティーが終わってから、メアリーは色々な男子学生に声をかけられることが増えてきた。
 都会の貴族の中では学生の間に婚約するのが普通なのだ。
 メアリーも両親からいい相手は見つかったか催促の手紙が来ていた、もし見つかっていないのなら、フーブル学園に通っている娘という肩書があるうちにお見合いをしろと、休みの時などそんな連絡もあった。
 しかしメアリーはそれをやんわりと断っていた。
 しかしいよいよ卒業がまじかにせまり両親もメアリーも決断しないとならなくなっていた。

「私だって結婚したくないわけじゃないわよ」

 ローズマリーとレイモンド。
 キールとアンリ。

 幸せそうな四人を見ていると、メアリーだって夢を見る。
 でもただお嫁さんになるのが夢なわけではない、ローズマリーは周りからどう思われようが、結局は大好きな自分の研究を目をキラキラさせながら続けている。
 アンリも女でありながら、領民たちに慕われる領主として、いかに人々の生活を守っていくか豊かにしていくか高みを目指している。その一つが兄弟で取り組んでいる一般市民でも使える魔法石の研究だった。今も、アンリ達からの寄付金で研究は続けられている。

「私は──」

 魔力があるからと魔法学園に無理やり入学させれらて、でもそこで魔具研のメンバーに出会い毎日少しづつではあるが魔力を高めることに成功した。人の役に立つかもしれない聖魔法が使えるようになるのはうれしいが、でもローズマリーのように研究自体が好きなわけではない、みんなの役に立てていると思うことがうれしいだけなのだ、じゃあ自分が本当にやりたいことは、輝けることは、そう思った時、おいしそうに自分の作った料理を食べてくれるユアンの顔が思い浮かんだ。

 自分が作った料理をおいしいおいしいと言って食べてくれる人がいる、それはなんて幸せなことなのだろう。

 そして、クリスが聖水を魔法石に閉じ込める研究をしている時にふと思った、自分の料理にも魔法をかけられないだろうか。
 どうやら自分には聖魔法を声にのせて皆に伝える能力があるらしい、それなら声だけでなく、料理にものせることはできないだろうか。

 突拍子もない考えだったが、料理を作るとき、「おいしくなあれ」というと美味しくなると母から聞いたことがある。心を込めて作った料理には心がこめられるという。
 ただの気持ちの問題かもしれないが、メアリーはユアンたちに振舞う料理にはいつもおいしく、元気になるおまじないをかけながら作ることにした。
 でも、傷が目に見えてよくなる魔法と違って、それができているか立証することは難しかった。
 それでも、ユアンが「美味しい」と食べてくれる姿。たまたまかもしれないが「なんか力が沸く」と言われた時など嬉しく思った。

 思い込みかもしれない、でも人に自分の作った料理が美味しく食べてもらえることに喜びを感じるていることは絶対に思い込みではなかった。

 だからユアンに相談した。

「私は学園には残らず街で料理を学びたい」

 普通貴族の娘がそんなことをいったら、みな鼻で笑うか、馬鹿なことを言うなと叱り飛ばすだろう。
 でもユアンは満面の笑みを浮かべると。

「それは楽しみだ。メアリーの店なら街一番の店になるよ」

 と心から応援してくれた。
 
 皆が言うように将来自分とは関係ないからそんなことが軽々しく言えるのだとはメアリーは思わない。
 ただ、もしかしたらユアンが婚約の話を出さないのは、街で平民に混じって料理店などをやろうとしている娘など、嫁とは認められないと家の人に言われている可能性は捨てきれていなかった。
 
 だいぶこの国では身分差はなくなりつつあるとはいえ、ハーリング家は伯爵家である、何代か前には宰相も出している家柄だ。

(そんな家に辺境の男爵家でそれも平民たちと一緒に料理店を開きたいという娘が受け入れてもらえるのだろうか)

 それでもユアンなら最終的には、家を捨ててでも自分を選んでくれる。そんな確信めいた気がメアリーにはあった。
 うぬぼれかもしれない。でもユアンが自分を見る目は、本当にそう思わすだけの愛にいつもあふれている。
 たまに、自分の中のさらに奥で違う何かを見ている時もあるが、それでも私が好きだといったユアンの言葉を疑うことはもうしない。

 ただ、ユアンは気がついていないようだが、学園を一緒に歩いているとユアンをチラチラ見てくる令嬢がいる。ユアンはあんなに素敵なのに、どうしてか自分を卑下する節がある。たぶん小さいときのトラウマのようなのだが、もしそれを克服して周りに目を向けたら、素敵な令嬢がたくさんいることに気がつくかもしれない。

「だから私は聖女じゃない」

 ずるいとわかっているが、教えてあげない。きっかけが私に似た誰かであって、自分でないとわかったときもそれさえも受け入れた振りをしてユアンを離さなかった。

 そんなことを考えて歩いていたらいつのまにか校門の前まできていた。
 そしてふと足をとめ顔をあげた。

 メアリーがニコリと微笑む。
 そこには先に帰ったはずのユアンが立っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

婚約解消の理由はあなた

彩柚月
恋愛
王女のレセプタントのオリヴィア。結婚の約束をしていた相手から解消の申し出を受けた理由は、王弟の息子に気に入られているから。 私の人生を壊したのはあなた。 許されると思わないでください。 全18話です。 最後まで書き終わって投稿予約済みです。

乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。 自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。 魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。 しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。 前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。 「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

実験施設から抜け出した俺が伝説を超えるまでの革命記! 〜Light Fallen Angels〜

朝日 翔龍
ファンタジー
 それはある世界の、今よりずっと未来のこと。いくつもの分岐点が存在し、それによって分岐された世界線、いわゆるパラレルワールド。これは、そ無限と存在するパラレルワールドの中のひとつの物語。  その宇宙に危機を及ぼす脅威や魔族と呼ばれる存在が、何度も世界を消滅させようと襲撃した。そのたびに、最強無血と謳われるレジェンド世代と称されたデ・ロアーの8人集が全てを解決していった。やがては脅威や魔族を封印し、これ以上は世界の危機もないだろうと誰もが信じていた。  しかし、そんな彼らの伝説の幕を閉ざす事件が起き、封印されていたはずの脅威が蘇った。瞬く間に不安が見え隠れする世界。そこは、異世界線へと繋がるゲートが一般的に存在し、異世界人を流れ込ませたり、例の脅威をも出してしまう。  そんな世界の日本で、実験体としてとある施設にいた主人公ドンボ。ある日、施設から神の力を人工的に得られる薬を盗んだ上で脱走に成功し、外の世界へと飛び出した。  そして街中に出た彼は恐怖と寂しさを覆い隠すために不良となり、その日凌ぎの生き方をしていた。  そんな日々を過ごしていたら、世界から脅威を封印したファイター企業、“デ・ロアー”に属すると自称する男、フラットの強引な手段で険しい旅をすることに。  狭い視野となんの知識もないドンボは、道中でフラットに教えられた生きる意味を活かし、この世界から再び脅威を取り除くことができるのであろうか。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

処理中です...