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第四章 誓いをもう一度
聖女じゃない
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ダンスパーティーが終わってから、メアリーは色々な男子学生に声をかけられることが増えてきた。
都会の貴族の中では学生の間に婚約するのが普通なのだ。
メアリーも両親からいい相手は見つかったか催促の手紙が来ていた、もし見つかっていないのなら、フーブル学園に通っている娘という肩書があるうちにお見合いをしろと、休みの時などそんな連絡もあった。
しかしメアリーはそれをやんわりと断っていた。
しかしいよいよ卒業がまじかにせまり両親もメアリーも決断しないとならなくなっていた。
「私だって結婚したくないわけじゃないわよ」
ローズマリーとレイモンド。
キールとアンリ。
幸せそうな四人を見ていると、メアリーだって夢を見る。
でもただお嫁さんになるのが夢なわけではない、ローズマリーは周りからどう思われようが、結局は大好きな自分の研究を目をキラキラさせながら続けている。
アンリも女でありながら、領民たちに慕われる領主として、いかに人々の生活を守っていくか豊かにしていくか高みを目指している。その一つが兄弟で取り組んでいる一般市民でも使える魔法石の研究だった。今も、アンリ達からの寄付金で研究は続けられている。
「私は──」
魔力があるからと魔法学園に無理やり入学させれらて、でもそこで魔具研のメンバーに出会い毎日少しづつではあるが魔力を高めることに成功した。人の役に立つかもしれない聖魔法が使えるようになるのはうれしいが、でもローズマリーのように研究自体が好きなわけではない、みんなの役に立てていると思うことがうれしいだけなのだ、じゃあ自分が本当にやりたいことは、輝けることは、そう思った時、おいしそうに自分の作った料理を食べてくれるユアンの顔が思い浮かんだ。
自分が作った料理をおいしいおいしいと言って食べてくれる人がいる、それはなんて幸せなことなのだろう。
そして、クリスが聖水を魔法石に閉じ込める研究をしている時にふと思った、自分の料理にも魔法をかけられないだろうか。
どうやら自分には聖魔法を声にのせて皆に伝える能力があるらしい、それなら声だけでなく、料理にものせることはできないだろうか。
突拍子もない考えだったが、料理を作るとき、「おいしくなあれ」というと美味しくなると母から聞いたことがある。心を込めて作った料理には心がこめられるという。
ただの気持ちの問題かもしれないが、メアリーはユアンたちに振舞う料理にはいつもおいしく、元気になるおまじないをかけながら作ることにした。
でも、傷が目に見えてよくなる魔法と違って、それができているか立証することは難しかった。
それでも、ユアンが「美味しい」と食べてくれる姿。たまたまかもしれないが「なんか力が沸く」と言われた時など嬉しく思った。
思い込みかもしれない、でも人に自分の作った料理が美味しく食べてもらえることに喜びを感じるていることは絶対に思い込みではなかった。
だからユアンに相談した。
「私は学園には残らず街で料理を学びたい」
普通貴族の娘がそんなことをいったら、みな鼻で笑うか、馬鹿なことを言うなと叱り飛ばすだろう。
でもユアンは満面の笑みを浮かべると。
「それは楽しみだ。メアリーの店なら街一番の店になるよ」
と心から応援してくれた。
皆が言うように将来自分とは関係ないからそんなことが軽々しく言えるのだとはメアリーは思わない。
ただ、もしかしたらユアンが婚約の話を出さないのは、街で平民に混じって料理店などをやろうとしている娘など、嫁とは認められないと家の人に言われている可能性は捨てきれていなかった。
だいぶこの国では身分差はなくなりつつあるとはいえ、ハーリング家は伯爵家である、何代か前には宰相も出している家柄だ。
(そんな家に辺境の男爵家でそれも平民たちと一緒に料理店を開きたいという娘が受け入れてもらえるのだろうか)
それでもユアンなら最終的には、家を捨ててでも自分を選んでくれる。そんな確信めいた気がメアリーにはあった。
うぬぼれかもしれない。でもユアンが自分を見る目は、本当にそう思わすだけの愛にいつもあふれている。
たまに、自分の中のさらに奥で違う何かを見ている時もあるが、それでも私が好きだといったユアンの言葉を疑うことはもうしない。
ただ、ユアンは気がついていないようだが、学園を一緒に歩いているとユアンをチラチラ見てくる令嬢がいる。ユアンはあんなに素敵なのに、どうしてか自分を卑下する節がある。たぶん小さいときのトラウマのようなのだが、もしそれを克服して周りに目を向けたら、素敵な令嬢がたくさんいることに気がつくかもしれない。
「だから私は聖女じゃない」
ずるいとわかっているが、教えてあげない。きっかけが私に似た誰かであって、自分でないとわかったときもそれさえも受け入れた振りをしてユアンを離さなかった。
そんなことを考えて歩いていたらいつのまにか校門の前まできていた。
そしてふと足をとめ顔をあげた。
メアリーがニコリと微笑む。
そこには先に帰ったはずのユアンが立っていた。
都会の貴族の中では学生の間に婚約するのが普通なのだ。
メアリーも両親からいい相手は見つかったか催促の手紙が来ていた、もし見つかっていないのなら、フーブル学園に通っている娘という肩書があるうちにお見合いをしろと、休みの時などそんな連絡もあった。
しかしメアリーはそれをやんわりと断っていた。
しかしいよいよ卒業がまじかにせまり両親もメアリーも決断しないとならなくなっていた。
「私だって結婚したくないわけじゃないわよ」
ローズマリーとレイモンド。
キールとアンリ。
幸せそうな四人を見ていると、メアリーだって夢を見る。
でもただお嫁さんになるのが夢なわけではない、ローズマリーは周りからどう思われようが、結局は大好きな自分の研究を目をキラキラさせながら続けている。
アンリも女でありながら、領民たちに慕われる領主として、いかに人々の生活を守っていくか豊かにしていくか高みを目指している。その一つが兄弟で取り組んでいる一般市民でも使える魔法石の研究だった。今も、アンリ達からの寄付金で研究は続けられている。
「私は──」
魔力があるからと魔法学園に無理やり入学させれらて、でもそこで魔具研のメンバーに出会い毎日少しづつではあるが魔力を高めることに成功した。人の役に立つかもしれない聖魔法が使えるようになるのはうれしいが、でもローズマリーのように研究自体が好きなわけではない、みんなの役に立てていると思うことがうれしいだけなのだ、じゃあ自分が本当にやりたいことは、輝けることは、そう思った時、おいしそうに自分の作った料理を食べてくれるユアンの顔が思い浮かんだ。
自分が作った料理をおいしいおいしいと言って食べてくれる人がいる、それはなんて幸せなことなのだろう。
そして、クリスが聖水を魔法石に閉じ込める研究をしている時にふと思った、自分の料理にも魔法をかけられないだろうか。
どうやら自分には聖魔法を声にのせて皆に伝える能力があるらしい、それなら声だけでなく、料理にものせることはできないだろうか。
突拍子もない考えだったが、料理を作るとき、「おいしくなあれ」というと美味しくなると母から聞いたことがある。心を込めて作った料理には心がこめられるという。
ただの気持ちの問題かもしれないが、メアリーはユアンたちに振舞う料理にはいつもおいしく、元気になるおまじないをかけながら作ることにした。
でも、傷が目に見えてよくなる魔法と違って、それができているか立証することは難しかった。
それでも、ユアンが「美味しい」と食べてくれる姿。たまたまかもしれないが「なんか力が沸く」と言われた時など嬉しく思った。
思い込みかもしれない、でも人に自分の作った料理が美味しく食べてもらえることに喜びを感じるていることは絶対に思い込みではなかった。
だからユアンに相談した。
「私は学園には残らず街で料理を学びたい」
普通貴族の娘がそんなことをいったら、みな鼻で笑うか、馬鹿なことを言うなと叱り飛ばすだろう。
でもユアンは満面の笑みを浮かべると。
「それは楽しみだ。メアリーの店なら街一番の店になるよ」
と心から応援してくれた。
皆が言うように将来自分とは関係ないからそんなことが軽々しく言えるのだとはメアリーは思わない。
ただ、もしかしたらユアンが婚約の話を出さないのは、街で平民に混じって料理店などをやろうとしている娘など、嫁とは認められないと家の人に言われている可能性は捨てきれていなかった。
だいぶこの国では身分差はなくなりつつあるとはいえ、ハーリング家は伯爵家である、何代か前には宰相も出している家柄だ。
(そんな家に辺境の男爵家でそれも平民たちと一緒に料理店を開きたいという娘が受け入れてもらえるのだろうか)
それでもユアンなら最終的には、家を捨ててでも自分を選んでくれる。そんな確信めいた気がメアリーにはあった。
うぬぼれかもしれない。でもユアンが自分を見る目は、本当にそう思わすだけの愛にいつもあふれている。
たまに、自分の中のさらに奥で違う何かを見ている時もあるが、それでも私が好きだといったユアンの言葉を疑うことはもうしない。
ただ、ユアンは気がついていないようだが、学園を一緒に歩いているとユアンをチラチラ見てくる令嬢がいる。ユアンはあんなに素敵なのに、どうしてか自分を卑下する節がある。たぶん小さいときのトラウマのようなのだが、もしそれを克服して周りに目を向けたら、素敵な令嬢がたくさんいることに気がつくかもしれない。
「だから私は聖女じゃない」
ずるいとわかっているが、教えてあげない。きっかけが私に似た誰かであって、自分でないとわかったときもそれさえも受け入れた振りをしてユアンを離さなかった。
そんなことを考えて歩いていたらいつのまにか校門の前まできていた。
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メアリーがニコリと微笑む。
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