【完結】二度目の人生、君ともう一度!〜彼女を守りたいだけなのに〜

トト

文字の大きさ
上 下
118 / 147
第四章 誓いをもう一度

ダンスパーティー

しおりを挟む
 アスタとローズマリーは研究学部の方で共同研究をするが正式に決まり、魔具研は自然消滅したように他の生徒たちには見えた。

 しかし、密かにデートをする振りをしてメアリーとユアンは、ローズマリーが経営する猫カフェの奥に作られた研究ラボで、実験を続けていた。
 ルナとクリスもいまではそこに足を運んで研究を手伝っている。
 そうして、ユアンの学園生活は静かに終わろうとしていた。

 昨年は散々な目に合ったダンスパーティー。
 今回はちゃんと参加できた。
 キールはアンリがいないため多くの女生徒たちから狙われていたが、同じくパートナーが卒業しているローズマリーと一緒に入ることで、お互いを狙うファンを牽制することに成功した。

「メアリー踊りましょ」

 ローズマリーがメアリーを誘う。
 別に絶対男女で踊らなくてはならないという決まりはないが、それはとても画期的な誘いと言えた。

「でも私男性パートなんて踊れないわ」
「大丈夫ですわ、私はこの日のために練習してきましたの」

 ローズマリーはいったいどこを目指しているのか、そんなことをさらりという。
 そして昨年とは違い、男性パートを踊るローズマリーを非難の目で見るものなどいない、逆にうっとりとそれを眺める他の生徒たち特に下の学年の女生徒などは、次は私と踊ってくださいと、その後長蛇の列ができたほどだ。

「お兄様、ルナと踊ってください」

 メアリーがローズマリーに奪われてしまったユアンのもとに今だとばかりにルナがやってくる。

「ルナさん、次は僕と」

 モジモジとその後ろでクリスがルナを誘う。

「まぁそうね考えとくは」

 冷たく言い放つが、クリスから見えないところで満更でもなさそうな顔をのぞかす。

「クリスにもう少しやさしくしてやれよ」
「あら、私はいつだってやさしいですよ」

 これは将来尻に引かれるクリスが見えたきがして、ハハっと小さく笑う。

「メアリー」
「ユアン」

 ようやくそれぞれ解放された二人がお互いに手を取る。

「ねぇ、メアリー知ってる?」
「何をですか?」
「三年のダンスパーティーで最後の曲を踊った男女は、ずっと一緒にいられるらしいよ」

 最後の曲までにはまだあと何曲かある。

「じゃあ、最後の曲はユアンを予約しときますね」

 メアリーはコロコロと鈴が鳴るような声で、可愛らしいことを言う。

「じゃあ僕もメアリーを予約させてもらってもいいかな」
「仕方ないですね」

 冗談ぽくメアリーが返す。
 そこにキールが割って入った。

「メアリーごめん、次俺と踊ってくれないか?」
「あら、キール様どうしたのですか?」
「なんか女性たちが今年怖くて」

 昨年はアンリのために出席したが、あんな事件があったので、探りを入れるために色々な女生徒たちとも踊ったキールだったが、今年はアンリもいないし断ろうとしていたようだが、ローズマリーが「私主催のダンスパーティーを欠席などしませんわよね」といわれてしまい、仕方なく出席したのだ。

学友たちと食事をしながら語らってればいいか、と軽い気持ちで参加したようだが、さっきからキールを狙う女生徒たちに追いかけまわされているようだった。
 学友からも睨みつける女性たちを前に「俺たちはいいから踊ってこい」と売られてしまったようだ。

 そして、次は私の番とばかりに争いを始める女生徒たちから逃げるように、今は知り合いを転々と頼っているらしい。

「いいですよ。キール様にも色々お世話になりましたし、私で良ければ隠れ蓑に使ってください」
「すまん、メアリー。そしてちょっとメアリーを借りるぞユアン」
「まぁメアリーがいいなら」

 キールには一番のライバルになりうると変な八つ当たりをしたこともあったな。なんて思い出しながら、二人が踊る様子を眺める。

「あの、ハーリング様よかったら私と踊っていただけませんか?」

 二人ばかりを気にしていたユアンに、そんな声がかかる。
 ダンスに誘われるなんて思ってもいなかったので、思わず驚いた目を向ける。

「次は、私とも踊ってくださいねハーリング様」

 そこには何人かのクラスメートたちの顔があった。
 前回の人生ではこうやって、クラスメートたちとダンスをするなど考えられたなかったことだ。

「僕で良ければ」

 ユアンが照れくさそうに笑うと、女生徒たちも笑い返す。
 前回とは違う。今はクラスメートの顔だけではなく名前もわかる。

 そしてユアンとメアリーはそれぞれダンスを楽しんだ後、最後に再び手を取り合うとラストダンスを踊った。

 ちなみにキールのラストダンスの相手は同じく婚約者のいるローズマリーで落ち着いたようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。 そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。 婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。 どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。 実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。 それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。 これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。 ☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

処理中です...