116 / 147
第四章 誓いをもう一度
研究成果は誰の手に
しおりを挟む
それからしばらくして魔法陣を使うことにより魔法石にためた魔力を他の魔法使いが使えることが新聞で取り上げられた。
長らく魔法陣は使用を危険視され禁止されていたが、今回スクロールでないこと。他の魔法使いの魔力を使える有効性などがとりあげられ、それは魔法使いたちにも魅力的だったためか問題点は多く挙げられたが、結局その研究を禁止しろという声はあがらなかった。
ただし魔獣の召喚などの魔法陣は研究してはならないなど、いくつか条件が付いたりはしたが、そんなものはアスタたちの予測範囲内だった。
その新聞の記事が出た翌日、部室に数人の魔法使いたちとともに、前にユアンに冷たい視線を向けた教授がやってきた。
「なんですか、教授?」
入り口に立つ教授の前にローズマリーが仁王立ちで立ちはだかる。
研究の話をしていたメアリーとルナとクリスが、眉をひそめてその様子をうかがう。
そんな三人を守るようにユアンもそっと立った。
「フローレス嬢、ここで行われている研究は今日からこのフーブル学園の魔法研究学部で引き継ぐことが決まった」
優しい笑みを浮かべた教授はやんわりとした口調でそう言った。
要するにいままで魔法道具研究倶楽部でやってきたものを全て自分たちのものにするという話だ。
「教授、この研究はすでにアスタと私の共同名義で特許をとっていますわ。それを私たちになんの相談もなく、共同研究だなんて」
「フローレス嬢も知っているだろう、学生はその研究・論文にいたるまで、その成果は学園に帰属しているということ」
「はい、だから今回の論文や構造上の資料などは、すでに全部学園長にお渡ししましたはずですわ」
「あぁ、見せてもらったよ。そのうえで、この研究はもっと手を入れてやった方がいいという結論になったのだよ」
言葉では手を貸すようないいかただが、そのくせ全ての権限を奪ってしまおうという感じがユアンにも伝わってくる。
ローズマリーが話にならないとばかりに、ため息を吐く。
「わかりました。ですが今日までの成果はすでにお渡しした書類のみですわ。せっかく大勢できていただきましたところすみませんが、もうお渡しするようなものはありませんの」
「そうか、まぁ、でもこれから、君たちも共同研究の仲間だから、ここにあるものは新しい研究所に全て移させてもらうよ」
「はぁ?」
おもわずそう声をだしたのはルナだった。
「いくら何でもそんないきなり無茶苦茶です」
教授に噛みつこうとするルナをユアンが抑える。
「お兄様」
「ルナちゃん、大丈夫だから」
メアリーもルナの肩を掴むと、大人しくするように目で訴える。
ルナは仕方なく椅子に座りなおす。
「では、始めていいかね」
「しかたないですわ」
ローズマリーが教授を睨みつけながらそう言った。
長らく魔法陣は使用を危険視され禁止されていたが、今回スクロールでないこと。他の魔法使いの魔力を使える有効性などがとりあげられ、それは魔法使いたちにも魅力的だったためか問題点は多く挙げられたが、結局その研究を禁止しろという声はあがらなかった。
ただし魔獣の召喚などの魔法陣は研究してはならないなど、いくつか条件が付いたりはしたが、そんなものはアスタたちの予測範囲内だった。
その新聞の記事が出た翌日、部室に数人の魔法使いたちとともに、前にユアンに冷たい視線を向けた教授がやってきた。
「なんですか、教授?」
入り口に立つ教授の前にローズマリーが仁王立ちで立ちはだかる。
研究の話をしていたメアリーとルナとクリスが、眉をひそめてその様子をうかがう。
そんな三人を守るようにユアンもそっと立った。
「フローレス嬢、ここで行われている研究は今日からこのフーブル学園の魔法研究学部で引き継ぐことが決まった」
優しい笑みを浮かべた教授はやんわりとした口調でそう言った。
要するにいままで魔法道具研究倶楽部でやってきたものを全て自分たちのものにするという話だ。
「教授、この研究はすでにアスタと私の共同名義で特許をとっていますわ。それを私たちになんの相談もなく、共同研究だなんて」
「フローレス嬢も知っているだろう、学生はその研究・論文にいたるまで、その成果は学園に帰属しているということ」
「はい、だから今回の論文や構造上の資料などは、すでに全部学園長にお渡ししましたはずですわ」
「あぁ、見せてもらったよ。そのうえで、この研究はもっと手を入れてやった方がいいという結論になったのだよ」
言葉では手を貸すようないいかただが、そのくせ全ての権限を奪ってしまおうという感じがユアンにも伝わってくる。
ローズマリーが話にならないとばかりに、ため息を吐く。
「わかりました。ですが今日までの成果はすでにお渡しした書類のみですわ。せっかく大勢できていただきましたところすみませんが、もうお渡しするようなものはありませんの」
「そうか、まぁ、でもこれから、君たちも共同研究の仲間だから、ここにあるものは新しい研究所に全て移させてもらうよ」
「はぁ?」
おもわずそう声をだしたのはルナだった。
「いくら何でもそんないきなり無茶苦茶です」
教授に噛みつこうとするルナをユアンが抑える。
「お兄様」
「ルナちゃん、大丈夫だから」
メアリーもルナの肩を掴むと、大人しくするように目で訴える。
ルナは仕方なく椅子に座りなおす。
「では、始めていいかね」
「しかたないですわ」
ローズマリーが教授を睨みつけながらそう言った。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
異世界転移したよ!
八田若忠
ファンタジー
日々鉄工所で働く中年男が地球の神様が企てた事故であっけなく死亡する。
主人公の死の真相は「軟弱者が嫌いだから」と神様が明かすが、地球の神様はパンチパーマで恐ろしい顔つきだったので、あっさりと了承する主人公。
「軟弱者」と罵られた原因である魔法を自由に行使する事が出来る世界にリストラされた主人公が、ここぞとばかりに魔法を使いまくるかと思えば、そこそこ平和でお人好しばかりが住むエンガルの町に流れ着いたばかりに、温泉を掘る程度でしか活躍出来ないばかりか、腕力に物を言わせる事に長けたドワーフの三姉妹が押しかけ女房になってしまったので、益々活躍の場が無くなりさあ大変。
基本三人の奥さんが荒事を片付けている間、後ろから主人公が応援する御近所大冒険物語。
この度アルファポリス様主催の第8回ファンタジー小説大賞にて特別賞を頂き、アルファポリス様から書籍化しました。

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる