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第四章 誓いをもう一度
後夜祭
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呼び出されるのは予想していたのだが、まさか学術祭の最中になるとは、魔術大会に出る予定だったローズマリーは今回は泣く泣く棄権。ローズマリーという司令塔をなくしたチームはあえなく敗退したのだった。
「まさかこんなにすぐに呼び出されるとは」
「王宮にはアスタとアレクそれにレイモンドいるから大丈夫だとは思うけど」
アンリがキールの横でそんなことを言う。
「はい、そこは僕も大丈夫だと思います」
頭の回転も速く口の達者なメンバーだ研究のこともうまく説明して、その使用許可もとってくるだろう。
ユアンが落ち込んでいるのはそんなことではない、今回魔法道具研究倶楽部の代表者であるローズマリーは当たり前だが、他のメアリーやルナ、クリスまで呼び出されたのだ、書類上はユアンも部員なのだが、あくまで人数合わせのために、メアリーの恋人であるユアンが名義を貸していると上に言ってしまったてまえ今回は置いてきぼりをくらった。
そしてこの後メアリーと一緒に回る予定だった事柄がすべてなくなってしまったことに肩を落としていたのだった。
キールはアンリ先輩がいるしいいよな。とユアンは口を尖らす。
さすがに久々のデートを邪魔するほどユアンも大人げなくない、でも親友まで失い、もう今年の学園祭は終わったも同然だった。
「ユアンもクラスメメイトと回ればいいだろ」
確かに今のユアンなら声をかければ誰かしら一緒にまわってくれるだろう。
「いい、今日はもう休む、もしかしたら後夜祭には帰ってくるかもしれないし」
それにメアリーが買い込んだ食べ物も一度寮におきに行きたいとユアンはそう言うとしょんぼりしながらキール達と別れたのだった。
そして後夜祭。
ユアンはキャンプファイヤーを少し離れた場所から眺めていた。
本当なら今頃、メアリーと二人であの楽し気に踊る生徒たちと同じ場所に二人で立っていたはずなのに、それでも一縷の望みをかけて、こうして待っている自分もずいぶんあきらめが悪い男だと自嘲的に笑う。
「ユアン!」
その時だった、ハアハアと肩で息を切らせながらこちらに向けて小走りに駆け寄って来るメアリーが見えた。
「マリーが、生徒会会長として……、最後の挨拶をしないと、ならないって、どうにか解放してもらいました」
息を整えながらたどたどしく説明する。
「話し合いはまた後日。でも、アスタ先輩たちは、まだ残って、色々話してるので、もう大丈夫かも……」
そうして大きく深呼吸すると、ニコリと微笑んだ。
一年目は先約があった。二年目はローズマリーのゴタゴタで参加を控えた。
そしてようやく──
走ってきたせいで高揚しているメアリーよりさらに真っ赤な顔で、ぐっとこぼれそうになった涙を抑えると、はに噛みながら手を差し出す。
「メアリー」
「はい」
「来てくれてありがとう」
「あたりまえじゃないですか」
そんなふうに笑顔を向けるメアリーが愛おしくてたまらない。
「行こう、メアリー」
お互いの手をしっかりと握ると、キャンプファイヤーの周りでダンスをしている生徒たちの間に、二人は入っていった。
「まさかこんなにすぐに呼び出されるとは」
「王宮にはアスタとアレクそれにレイモンドいるから大丈夫だとは思うけど」
アンリがキールの横でそんなことを言う。
「はい、そこは僕も大丈夫だと思います」
頭の回転も速く口の達者なメンバーだ研究のこともうまく説明して、その使用許可もとってくるだろう。
ユアンが落ち込んでいるのはそんなことではない、今回魔法道具研究倶楽部の代表者であるローズマリーは当たり前だが、他のメアリーやルナ、クリスまで呼び出されたのだ、書類上はユアンも部員なのだが、あくまで人数合わせのために、メアリーの恋人であるユアンが名義を貸していると上に言ってしまったてまえ今回は置いてきぼりをくらった。
そしてこの後メアリーと一緒に回る予定だった事柄がすべてなくなってしまったことに肩を落としていたのだった。
キールはアンリ先輩がいるしいいよな。とユアンは口を尖らす。
さすがに久々のデートを邪魔するほどユアンも大人げなくない、でも親友まで失い、もう今年の学園祭は終わったも同然だった。
「ユアンもクラスメメイトと回ればいいだろ」
確かに今のユアンなら声をかければ誰かしら一緒にまわってくれるだろう。
「いい、今日はもう休む、もしかしたら後夜祭には帰ってくるかもしれないし」
それにメアリーが買い込んだ食べ物も一度寮におきに行きたいとユアンはそう言うとしょんぼりしながらキール達と別れたのだった。
そして後夜祭。
ユアンはキャンプファイヤーを少し離れた場所から眺めていた。
本当なら今頃、メアリーと二人であの楽し気に踊る生徒たちと同じ場所に二人で立っていたはずなのに、それでも一縷の望みをかけて、こうして待っている自分もずいぶんあきらめが悪い男だと自嘲的に笑う。
「ユアン!」
その時だった、ハアハアと肩で息を切らせながらこちらに向けて小走りに駆け寄って来るメアリーが見えた。
「マリーが、生徒会会長として……、最後の挨拶をしないと、ならないって、どうにか解放してもらいました」
息を整えながらたどたどしく説明する。
「話し合いはまた後日。でも、アスタ先輩たちは、まだ残って、色々話してるので、もう大丈夫かも……」
そうして大きく深呼吸すると、ニコリと微笑んだ。
一年目は先約があった。二年目はローズマリーのゴタゴタで参加を控えた。
そしてようやく──
走ってきたせいで高揚しているメアリーよりさらに真っ赤な顔で、ぐっとこぼれそうになった涙を抑えると、はに噛みながら手を差し出す。
「メアリー」
「はい」
「来てくれてありがとう」
「あたりまえじゃないですか」
そんなふうに笑顔を向けるメアリーが愛おしくてたまらない。
「行こう、メアリー」
お互いの手をしっかりと握ると、キャンプファイヤーの周りでダンスをしている生徒たちの間に、二人は入っていった。
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