【完結】二度目の人生、君ともう一度!〜彼女を守りたいだけなのに〜

トト

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第四章 誓いをもう一度

魔法研究発表会でお披露目です

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 剣術大会は今年はレイモンドももういないし、見なくてもキールの優勝は間違いないだろうけど一応応援にいく。そして案の定あっさり優勝をかっさらう。
 そして相変わらず隣で舌打ちをする一名に苦笑いをこぼす。

 そしていよいよ二日目。魔法道具研究倶楽部の発表の日がやって来た。
 昨年は魔法石に魔法陣を組み合わせることで威力を強めるというだけの発表だったが、今年はさらにそれを応用して、他人の魔法を使うという学園でも初の試みとなる魔法石の使い方の発表をするのだ。生徒にはまだ発表はされていないが、事前にやることを説明するため実行員や先生がたはだいたいの内容を知っている。
 そのため、会場にはいつも以上、いや魔法に関係するすべての教職員が集まっていると言ってもいいだろう。
 発表会はいつもより異様な空気を孕み開催した。

 他のクラブの発表が終わり最後に魔法道具研究倶楽部の名が呼ばれる。

 ローズマリーとメアリーが会場に現れるとワーをいう歓声とともに黄色い声があちこちであがる、昨年のローズマリーが出てきた時とは全く違う盛り上がりだ。もちろん、今回は隣にメアリーもいることも大きいだろう。
 昨年の生徒会からの放送以降、いまでもたまにメアリーが司会の生徒会放送が流れるたびに、ファンも増えているようだった。

 発表という場に慣れるために一緒に会場に上がった、ルナとクリスは、会場をわらんばかりの歓声に二人して小さい体をさらに縮こませている。

「ミーハーな奴らめ」

 面白くなさそうに口を尖らすユアンをキールとアンリが目を細めながら慰める。

「ほら、いよいよ始まるぞ」

 横でそれを面白そうに眺めていたアスタとアレクがそう声をかけた。

「今日私たちに発表の場を与えてくださいました皆様に心から感謝いたします」

 ローズマリーの挨拶が始まる。

「今日皆さんにはお見せしたいのは、これです」

 そういうとまるで空の色を閉じ込めたような綺麗な青い魔法石を見せる。誰が見ても水属性の魔力がこめられているものだと一目でわかる。

「これはここにいるクリス・ギレットの水魔法を込めた魔法石です」

 そう言ってクリスを紹介する。

「ここにいる大半の方は、私が火属性のみの魔法使いであることはご存じですわね」

 ローズマリーは良くも悪くもよく知られている。特に昨年のは魔術大会の攻撃対象として火属性しか持っていないローズマリーに対抗するために、水属性の生徒の多くが声をかけられたりもしていた。

「今から私はこの魔法石を使って水魔法をお見せします」

 会場は何を言っているのか理解できずざわついた。
 しかしローズマリーは淡々と水色の魔法石をメアリーから渡された細い筒状の何かに入れると、それを高々と空に向けて掲げる。

「水魔法”天の恵み”」

 凛としたよく通る声でそう叫ぶ。
 すると勢いよく筒から空に向かって一筋の水柱が上がった、そしてそれは上空で一瞬球体に集まると次の瞬間大きく弾け飛ぶ。
 パラパラと会場内に弾けた雫が降り注いだ。

 一瞬の静寂のあと大きなざわめきがおこった。信じられないものをみた驚きと興奮。そしていくばくかの疑念。
 でも次にメアリーがルナの土魔法を使ったことで会場は一気に興奮の渦に包まれた。

 メアリーが光と聖属性であることもこの学園で知らない者はいない。それも嘘や自分たちをだますはずがない聖女様だ。彼女が土魔法を使ったということは、これは他の人の魔法を魔法石を使って使えるようになったということを証明するには十分だった。
 どよめきが収まらないまま魔法研究発表会は幕を閉じた。


「やはり最後にしてもらって正解だったな」

 本来はクジで順番が決まるところ、アレクたちが手をまわし最後にしてもらったらしい。

「確かにあの発表の後発表するクラブは気の毒でしかないからね」

 しかし魔具研は今回大賞をとれなかった。理由は簡単だ。あまりに前例のない発表に上から待ったがかかったのだ。とりあえず審議のため賞は保留となった。
 メンバーはこの後王宮に呼ばれ詳しく説明をすることになるだろう。でもそれもアスタやアレクたちには想定済みなので、その用意もすでに終わっている。

「とりあえず、第一歩は上々だな」

 アスタが満足げにそう言った。
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