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第四章 誓いをもう一度
三年目の学術祭
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「ユアン」
メアリーが手を振りながら駆け寄ってくる。
昨年は魔術研究発表会や魔術大会は一緒に見たがあれは魔具研究のメンバーとしてみんなも一緒だった
しかし今年は違う。ようやくメアリーと二人っきりでどうどうと学術祭を回れるのだ。
「メアリー」
そうはいっても午後からの剣術大会にはキールの応援もあるしいつものメンバーで集まる予定ではあるが、この二人だけの貴重な時間をおもいっきり楽しもうと満面の笑みで手を振り返す。
「見てください、あれ買いましょう」
最近新しい国から入ってきたタピオなるものが入った飲み物だった。
「すごいよく再現されてます」
メアリーが露店のものを買い、この間ユアンとともに市街地の店で飲んだそれと味を比べるように一口飲むたびに考え込む。
「この黒糖は……あっ、すみませんまた私一人で夢中になってしまって」
ニコニコとそんなメアリーを見つめているユアンに気が付くと、メアリーがパッと頬を染めて謝った。
「いや、大丈夫。夢中でタピオを飲んでるメアリーも見ていて面白いから」
口の中でタピオの弾力を確かめるたびに、眉お寄せたり、驚いたり、うっとりしたり、一人百面相を繰り広げので本当に見ていて飽きない。
「もうユアンの意地悪」
それを聞いてメアリーがさらに耳まで赤くして、ぐるぐるとタピオジュースを意味もなくストローでかき混ぜる。
「ほら、あれもおいしそうだよ」
さっきまで口を尖らしていたのに、ユアンが指さしたものを見てメアリーの目が輝く。
「可愛いな」
「なんか言いました」
首を傾げながら問いかけるメアリーに首を横に振る。
前回もキールに学術祭では我慢せず食べると言ったが。
今回は、前回以上に食べてしまいそうだ。
(いつもよりたくさんトレーニングをして、太らないようにしないと)
メアリーの腕にかかっている袋が、どんどん食べ物たちで膨らんでいくのを眺めながらユアンは苦笑した。
「メアリー、それ重そうだから」
そういって手を伸ばす。
言われて初めて、パンパンになっている手提げ袋に気が付くメアリー。
「だ、大丈夫です」
「いいから、これもトレーニングみたいなものだよ」
キールには一年の買い出しの時、散々荷物を持たされたことを思い出す。
あれからだいぶ鍛えられたユアンの二の腕なら、荷物だけでなくメアリーごともう抱えられそうだ。
「じゃあ遠慮なく」といって、メアリーが手荷物を渡す。
ズシリとした確かな重みがユアンの腕にかかった。
「えっ……」
「…………?」
キョトンと小首を傾げるメアリー。
予想していた重さよりだいぶ重たい。
(これを片手にぶら下げたまま、顔色一つ変えず笑顔のまま、まるで羽がはえているようにあちらこちらの店を飛び回っていたのか)
「どうしました?」
「大丈夫、次の店に行こう」
余裕の表情をしながら、帰ったらトレーニングのランクを数倍上げようと心に誓ったユアンだった。
メアリーが手を振りながら駆け寄ってくる。
昨年は魔術研究発表会や魔術大会は一緒に見たがあれは魔具研究のメンバーとしてみんなも一緒だった
しかし今年は違う。ようやくメアリーと二人っきりでどうどうと学術祭を回れるのだ。
「メアリー」
そうはいっても午後からの剣術大会にはキールの応援もあるしいつものメンバーで集まる予定ではあるが、この二人だけの貴重な時間をおもいっきり楽しもうと満面の笑みで手を振り返す。
「見てください、あれ買いましょう」
最近新しい国から入ってきたタピオなるものが入った飲み物だった。
「すごいよく再現されてます」
メアリーが露店のものを買い、この間ユアンとともに市街地の店で飲んだそれと味を比べるように一口飲むたびに考え込む。
「この黒糖は……あっ、すみませんまた私一人で夢中になってしまって」
ニコニコとそんなメアリーを見つめているユアンに気が付くと、メアリーがパッと頬を染めて謝った。
「いや、大丈夫。夢中でタピオを飲んでるメアリーも見ていて面白いから」
口の中でタピオの弾力を確かめるたびに、眉お寄せたり、驚いたり、うっとりしたり、一人百面相を繰り広げので本当に見ていて飽きない。
「もうユアンの意地悪」
それを聞いてメアリーがさらに耳まで赤くして、ぐるぐるとタピオジュースを意味もなくストローでかき混ぜる。
「ほら、あれもおいしそうだよ」
さっきまで口を尖らしていたのに、ユアンが指さしたものを見てメアリーの目が輝く。
「可愛いな」
「なんか言いました」
首を傾げながら問いかけるメアリーに首を横に振る。
前回もキールに学術祭では我慢せず食べると言ったが。
今回は、前回以上に食べてしまいそうだ。
(いつもよりたくさんトレーニングをして、太らないようにしないと)
メアリーの腕にかかっている袋が、どんどん食べ物たちで膨らんでいくのを眺めながらユアンは苦笑した。
「メアリー、それ重そうだから」
そういって手を伸ばす。
言われて初めて、パンパンになっている手提げ袋に気が付くメアリー。
「だ、大丈夫です」
「いいから、これもトレーニングみたいなものだよ」
キールには一年の買い出しの時、散々荷物を持たされたことを思い出す。
あれからだいぶ鍛えられたユアンの二の腕なら、荷物だけでなくメアリーごともう抱えられそうだ。
「じゃあ遠慮なく」といって、メアリーが手荷物を渡す。
ズシリとした確かな重みがユアンの腕にかかった。
「えっ……」
「…………?」
キョトンと小首を傾げるメアリー。
予想していた重さよりだいぶ重たい。
(これを片手にぶら下げたまま、顔色一つ変えず笑顔のまま、まるで羽がはえているようにあちらこちらの店を飛び回っていたのか)
「どうしました?」
「大丈夫、次の店に行こう」
余裕の表情をしながら、帰ったらトレーニングのランクを数倍上げようと心に誓ったユアンだった。
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