【完結】二度目の人生、君ともう一度!〜彼女を守りたいだけなのに〜

トト

文字の大きさ
上 下
112 / 147
第四章 誓いをもう一度

守るべきものは

しおりを挟む
「ルナ、今凄いこと閃いたのです」

 アレクに魔力制御の成長を見てもらっていたルナが突然そう声を上げた。

「聖水の力も魔法石に詰めて、街灯のように使用すれば、魔除け石みたいになったりしませんか」
「えぇ!?」

 同じくアレクに魔法制御の講義を受けていたクリスが突然のルナの発案に、そんなこと「僕にできるんですか」というような情けない顔でオロオロしている。

「そのアイデアなかなか面白そうですわね」
「そうでしょ、マリー姉さま」

 その先を考えるのはローズマリーでやるのはクリスなのに、なぜかルナが得意げに鼻を鳴らす。

 でも確かにアイデアはおもしろい。
 聖水には邪気や呪いを払う効果がある、聖水を振りかけることでそれはしばらく有効だが魔法石に閉じ込めて使えば聖水より長い時間持続させることができるかもしれない、それに聖水は硝子瓶に入れて持ち歩くため、割ってしまったりするが、魔法石ならそう簡単には砕けない。

「アスタ先輩はどう思われます?」
「なかなか面白い発想だが、二つの魔法を魔法石に詰めるのがまず大丈夫なのか実験してみないとな」

 アスタもあの教授訪問以来、部室に顔をだすのが減っているので久々の談義に花を咲かせている。

「夢が膨らみますわね」
「クリス、ちょっとやってみてくれるか?」
「あ、はい」

 おどおどしながらクリスが空の魔法石に魔力を込める。
 しかしうまく二つの魔力が魔法石に入らないようで悪戦苦闘している。

「なにボーとしてるんですか?」

 若草色の瞳を細めながらメアリーがユアンの顔をのぞき込んだ。

「クリス君とルナちゃんをどうやってくっつけようかまだ考えてるんですか?」

 クスクスとメアリーが笑う。

「まぁそれもそうなんだけど、なんだか、不思議な感じがして」
「不思議?」
「こんなすごい人たちの中に自分がいることが」

 ポリポリと頬を掻く。

「そんなら一番不思議なのはユアンです」
「僕が?」
「だってここにいるみんなは、みんなユアンに繋げてもらった人達ですよ」

 メアリーがニコリと微笑みかける。

「僕が繋げた?」

 それは言いすぎだと思うが、でもローズマリーとメアリーを繋げたのもキールとアンリ兄弟との出会いのきっかけを作ったのも、魔法道具研究倶楽部にユアンがはいったからルナがルナを追ってクリスが。

 胸がキュッとする。嬉しいような怖いような。

「ほら、ユアン様もメアリーと話してばかりいないで、何か案をだしてくださいませ」

 ローズマリーが眉間に皺を寄せながユアンを手招きする。メアリーがユアンの手をひいてみんなの輪の中に連れていく。

「ユアン、行きましょう」

 メアリーのキラキラとした笑顔を見詰めながら。ユアンは小さく微笑んだ。


 で、結局今回の合宿ではほとんどルナが発案した『聖水の力を魔法石に込める』という議題で終わってしまった。
 アスタとローズマリーとクリスはずっと三人であーでもないこーでもないとやっていて、ルナはアレクの指導を一人で受け続け、クリスといい感じになればと思っていたユアンの目論見は初日からとん挫した。まあアスタとも接近しなかったので、ユアンとしては少しばかり安心したが。

 アンリとキールはほぼ毎日二人で狩りにでていて、レイモンドは最初の日、顔をだしたでけで王宮の仕事が残っているとすぐに帰っていった。

 実験もまず魔法石に魔力が入れられないことには始まらないので、結局今回の合宿はユアンはメアリーと二人でゆっくり過ごしただけになったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...