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第四章 誓いをもう一度
クリス登場
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トントン。
それからしばらくして再び部室の扉をノックする音に思わず皆がビクリと体を強張らせる。
メアリーがユアンに心配げな視線を送る。ユアンはそれに大丈夫だというように小さく頷いて返す。
恐る恐るという感じでメアリーが再び扉を開けた。
「こんにちは、ここは魔法道具研究倶楽部で間違いないでしょうか?」
声変りの途中なのか大人にしては高い、子供にしては低い少しかすれた声音の少年がそう訊ねた。
「誰だい君は」
艶のよいぷっくりした肌に 背はメアリーと同じぐらいだろうか、魔法学部制服を着ているが、着せられている感がいなめない少年にユアンが尋ねる。
「あぁ、はい」
少しおどおどしながら、一歩部屋の中に足を踏み入れる。
ユアンが眉を寄せる。なんだか見覚えがある、そしてなぜだかすごく親近感が湧く。
「僕はクリス──」
「クリス様! どうしてここに」
少年が自己紹介を口に仕掛けるより前にルナが叫んだ。
「クリスだって!」
思わずユアンも声にだしてしまい回りの視線が集まる。
「知合いですか」
「いや、ちょっと聞いたことある名前だったから」
しどろもどろに誤魔化す。
クリスは将来ルナの旦那になる男だ。でも今回の人生ではルナはクリスの話をしていなかったので、てっきり出会わなかったのかと思っていたが、どうやら違っていたらしい。
ルナの様子からも初対面ではないことは確かだ。
「ハーリング嬢」
ルナを見つけてクリスの顔がパッと明るくなる。
それを目ざとく見ていたローズマリーが「あらあら」とにやけ顔になる。
「話なら後で聞きます。今は部活中ですから、出てってください」
クリスのもとに小走りに近づくと、その背中を出口の方に押す。
「ハーリング嬢僕の話を聞いてください。僕は今日この部に入部しに来たんです」
メアリーとローズマリーがユアンを見てくる。
なんだか身に覚えのある展開だ。
「入部ですって?」
「ダメなんですか?」
ルナがユアンのほうを振り返す。
「いや、別に入部するのに決まりはないけど」
まぁ、ここは少し変わっているし、秘密事もあることにはあるが、それは将来のクリスを知っているし、大丈夫だろう。
「お兄様」
ユアンの答えにルナが悲鳴を上げる。
「ルナはなにか問題があるのか?」
逆に尋ねられ、ルナがぷくっとその頬を膨らませる。
「問題というか、だいたいクリスあなたも振った女のいる部活に入るなど正気ですか?」
ローズマリーとメアリーがまぁと手を口元を隠す
その目は興味津々というところだ
「僕はあきれめません。別に嫌いじゃないっておっしゃたじゃないですか、ならもっと自分がどういう人間か見てから判断してもらおうと思っただけです」
前回の人生ではルナの方がべたぼれでクリスの世話を焼いていたので気が付かなったのだが、クリスもルナに一目ぼれだったんだな。
なんだかますます親近感が湧いてユアンが温かい眼差しを向けてしまった。
「勝手にしてください」
そういうルナの耳も少し色づき満更でもないようだった。
それからしばらくして再び部室の扉をノックする音に思わず皆がビクリと体を強張らせる。
メアリーがユアンに心配げな視線を送る。ユアンはそれに大丈夫だというように小さく頷いて返す。
恐る恐るという感じでメアリーが再び扉を開けた。
「こんにちは、ここは魔法道具研究倶楽部で間違いないでしょうか?」
声変りの途中なのか大人にしては高い、子供にしては低い少しかすれた声音の少年がそう訊ねた。
「誰だい君は」
艶のよいぷっくりした肌に 背はメアリーと同じぐらいだろうか、魔法学部制服を着ているが、着せられている感がいなめない少年にユアンが尋ねる。
「あぁ、はい」
少しおどおどしながら、一歩部屋の中に足を踏み入れる。
ユアンが眉を寄せる。なんだか見覚えがある、そしてなぜだかすごく親近感が湧く。
「僕はクリス──」
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「クリスだって!」
思わずユアンも声にだしてしまい回りの視線が集まる。
「知合いですか」
「いや、ちょっと聞いたことある名前だったから」
しどろもどろに誤魔化す。
クリスは将来ルナの旦那になる男だ。でも今回の人生ではルナはクリスの話をしていなかったので、てっきり出会わなかったのかと思っていたが、どうやら違っていたらしい。
ルナの様子からも初対面ではないことは確かだ。
「ハーリング嬢」
ルナを見つけてクリスの顔がパッと明るくなる。
それを目ざとく見ていたローズマリーが「あらあら」とにやけ顔になる。
「話なら後で聞きます。今は部活中ですから、出てってください」
クリスのもとに小走りに近づくと、その背中を出口の方に押す。
「ハーリング嬢僕の話を聞いてください。僕は今日この部に入部しに来たんです」
メアリーとローズマリーがユアンを見てくる。
なんだか身に覚えのある展開だ。
「入部ですって?」
「ダメなんですか?」
ルナがユアンのほうを振り返す。
「いや、別に入部するのに決まりはないけど」
まぁ、ここは少し変わっているし、秘密事もあることにはあるが、それは将来のクリスを知っているし、大丈夫だろう。
「お兄様」
ユアンの答えにルナが悲鳴を上げる。
「ルナはなにか問題があるのか?」
逆に尋ねられ、ルナがぷくっとその頬を膨らませる。
「問題というか、だいたいクリスあなたも振った女のいる部活に入るなど正気ですか?」
ローズマリーとメアリーがまぁと手を口元を隠す
その目は興味津々というところだ
「僕はあきれめません。別に嫌いじゃないっておっしゃたじゃないですか、ならもっと自分がどういう人間か見てから判断してもらおうと思っただけです」
前回の人生ではルナの方がべたぼれでクリスの世話を焼いていたので気が付かなったのだが、クリスもルナに一目ぼれだったんだな。
なんだかますます親近感が湧いてユアンが温かい眼差しを向けてしまった。
「勝手にしてください」
そういうルナの耳も少し色づき満更でもないようだった。
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