【完結】二度目の人生、君ともう一度!〜彼女を守りたいだけなのに〜

トト

文字の大きさ
上 下
105 / 147
第三章 告白をもう一度

春うらら

しおりを挟む
「どいつもこいつも、春かよクソ」
「おめでとう、メアリー」

 やっぱり研究生は暇なのかと言いたくなるほど、当たり前のように部室にいるアスタとローズマリーにユアンはメアリーと付き合うことになったことを報告した。

「ありがとうマリー、あなたが背中を押してくれたおかげよ」

 そう言うメアリーの首にローズマリーは飛びつくと、「愛を勝ち取ったのですわ」とそんなことを叫んでいる。

「ユアン様、もし次メアリーを悲しませるようなことをしたら、今度は許しませんからね」

 それから真っ赤な目をぎらつかせながらユアンを睨みつけるとそう言った。
 ユアンは「はい」とばかりに背筋を伸ばす。
 ローズマリーとユアンの「悲しませた」と思っていることは微妙に違っているがそれに二人が気が付くことはないだろう。

「お兄様」

 ハッと振り返るとプルプルとツインテールを揺らしているルナが部室の入り口に立っていた。

「ルナ、あの、メアリーさんと付き合ってことになりました」

 思わず改まって報告する。メアリーも慌てて頭を下げる。

「お兄様……おめでとうごさいます」

 予想外の反応に一瞬ポカンと口を開ける。
 前の人生ではルナは反対こそしなかったが、ここまで手放しに祝ってもくれていなかった。

「メアリー姉さまなら安心してお兄様を任せられます」

 そう言うと今度はルナがメアリーの腕の中に飛び込む。半年以上同じ部活で過ごしてきたのだ。ルナだってメアリーの人となりを知ってるのだから反対する理由はないむしろ大歓迎である。

「誰かさんとは偉い違いですわね」

 ローズマリーがアスタの方を見ながらフフフと小さく笑う。アンリから未だにデートについてこようとするアスタの愚痴をたまに聞いているのだ。

「そういえばルナは誰かいないのか、僕に紹介するような人」

 自分のことで手一杯だったが、前の人生ではこのころルナが彼氏を紹介してきたはずだった。今回も同じならまだ付き合ってはいないにせよ、出会いはしているはずだ。
 なんとなく聞いてみた。
 
 しかしルナは首をかしげる。
 隠しているというわけではなさそうだ。

「気になる相手ぐらいは……、いろいろお茶会とか開いてただろ」

 嫌な予感に背中に冷たいものが流れる。

「いませんよ」
「そんなはずは……」

 同様を隠せないユアンをルナが不思議そうに見上げる。

(まさかルナの未来がかわってしまったのか、でもなぜ?)

 そこまで考えてハッとする。
 そういえばルナがユアンに彼氏を紹介するとき言っていた言葉を思い出す。

『彼の食べてる姿がお兄様そっくりで、おもわず声をかけてしまいました』

(僕が、やせてしまったから?)

 ルナが興味を持てなかったのだろうか。一瞬ユアンは焦った。しかし──

(まぁ、彼には悪いがルナにはまた新たな恋をしてもらおう)と、気持ちを切り替える。

(本当の運命の相手なら、僕らみたいにまた縁は結ばれるはずだしな)

 メアリーを眺めながら一人頷くのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

150年後の敵国に転生した大将軍

mio
ファンタジー
「大将軍は150年後の世界に再び生まれる」から少しタイトルを変更しました。 ツーラルク皇国大将軍『ラルヘ』。 彼は隣国アルフェスラン王国との戦いにおいて、その圧倒的な強さで多くの功績を残した。仲間を失い、部下を失い、家族を失っていくなか、それでも彼は主であり親友である皇帝のために戦い続けた。しかし、最後は皇帝の元を去ったのち、自宅にてその命を落とす。 それから約150年後。彼は何者かの意思により『アラミレーテ』として、自分が攻め入った国の辺境伯次男として新たに生まれ変わった。 『アラミレーテ』として生きていくこととなった彼には『ラルヘ』にあった剣の才は皆無だった。しかし、その代わりに与えられていたのはまた別の才能で……。 他サイトでも公開しています。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

処理中です...