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第三章 告白をもう一度
春うらら
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「どいつもこいつも、春かよクソ」
「おめでとう、メアリー」
やっぱり研究生は暇なのかと言いたくなるほど、当たり前のように部室にいるアスタとローズマリーにユアンはメアリーと付き合うことになったことを報告した。
「ありがとうマリー、あなたが背中を押してくれたおかげよ」
そう言うメアリーの首にローズマリーは飛びつくと、「愛を勝ち取ったのですわ」とそんなことを叫んでいる。
「ユアン様、もし次メアリーを悲しませるようなことをしたら、今度は許しませんからね」
それから真っ赤な目をぎらつかせながらユアンを睨みつけるとそう言った。
ユアンは「はい」とばかりに背筋を伸ばす。
ローズマリーとユアンの「悲しませた」と思っていることは微妙に違っているがそれに二人が気が付くことはないだろう。
「お兄様」
ハッと振り返るとプルプルとツインテールを揺らしているルナが部室の入り口に立っていた。
「ルナ、あの、メアリーさんと付き合ってことになりました」
思わず改まって報告する。メアリーも慌てて頭を下げる。
「お兄様……おめでとうごさいます」
予想外の反応に一瞬ポカンと口を開ける。
前の人生ではルナは反対こそしなかったが、ここまで手放しに祝ってもくれていなかった。
「メアリー姉さまなら安心してお兄様を任せられます」
そう言うと今度はルナがメアリーの腕の中に飛び込む。半年以上同じ部活で過ごしてきたのだ。ルナだってメアリーの人となりを知ってるのだから反対する理由はないむしろ大歓迎である。
「誰かさんとは偉い違いですわね」
ローズマリーがアスタの方を見ながらフフフと小さく笑う。アンリから未だにデートについてこようとするアスタの愚痴をたまに聞いているのだ。
「そういえばルナは誰かいないのか、僕に紹介するような人」
自分のことで手一杯だったが、前の人生ではこのころルナが彼氏を紹介してきたはずだった。今回も同じならまだ付き合ってはいないにせよ、出会いはしているはずだ。
なんとなく聞いてみた。
しかしルナは首をかしげる。
隠しているというわけではなさそうだ。
「気になる相手ぐらいは……、いろいろお茶会とか開いてただろ」
嫌な予感に背中に冷たいものが流れる。
「いませんよ」
「そんなはずは……」
同様を隠せないユアンをルナが不思議そうに見上げる。
(まさかルナの未来がかわってしまったのか、でもなぜ?)
そこまで考えてハッとする。
そういえばルナがユアンに彼氏を紹介するとき言っていた言葉を思い出す。
『彼の食べてる姿がお兄様そっくりで、おもわず声をかけてしまいました』
(僕が、やせてしまったから?)
ルナが興味を持てなかったのだろうか。一瞬ユアンは焦った。しかし──
(まぁ、彼には悪いがルナにはまた新たな恋をしてもらおう)と、気持ちを切り替える。
(本当の運命の相手なら、僕らみたいにまた縁は結ばれるはずだしな)
メアリーを眺めながら一人頷くのだった。
「おめでとう、メアリー」
やっぱり研究生は暇なのかと言いたくなるほど、当たり前のように部室にいるアスタとローズマリーにユアンはメアリーと付き合うことになったことを報告した。
「ありがとうマリー、あなたが背中を押してくれたおかげよ」
そう言うメアリーの首にローズマリーは飛びつくと、「愛を勝ち取ったのですわ」とそんなことを叫んでいる。
「ユアン様、もし次メアリーを悲しませるようなことをしたら、今度は許しませんからね」
それから真っ赤な目をぎらつかせながらユアンを睨みつけるとそう言った。
ユアンは「はい」とばかりに背筋を伸ばす。
ローズマリーとユアンの「悲しませた」と思っていることは微妙に違っているがそれに二人が気が付くことはないだろう。
「お兄様」
ハッと振り返るとプルプルとツインテールを揺らしているルナが部室の入り口に立っていた。
「ルナ、あの、メアリーさんと付き合ってことになりました」
思わず改まって報告する。メアリーも慌てて頭を下げる。
「お兄様……おめでとうごさいます」
予想外の反応に一瞬ポカンと口を開ける。
前の人生ではルナは反対こそしなかったが、ここまで手放しに祝ってもくれていなかった。
「メアリー姉さまなら安心してお兄様を任せられます」
そう言うと今度はルナがメアリーの腕の中に飛び込む。半年以上同じ部活で過ごしてきたのだ。ルナだってメアリーの人となりを知ってるのだから反対する理由はないむしろ大歓迎である。
「誰かさんとは偉い違いですわね」
ローズマリーがアスタの方を見ながらフフフと小さく笑う。アンリから未だにデートについてこようとするアスタの愚痴をたまに聞いているのだ。
「そういえばルナは誰かいないのか、僕に紹介するような人」
自分のことで手一杯だったが、前の人生ではこのころルナが彼氏を紹介してきたはずだった。今回も同じならまだ付き合ってはいないにせよ、出会いはしているはずだ。
なんとなく聞いてみた。
しかしルナは首をかしげる。
隠しているというわけではなさそうだ。
「気になる相手ぐらいは……、いろいろお茶会とか開いてただろ」
嫌な予感に背中に冷たいものが流れる。
「いませんよ」
「そんなはずは……」
同様を隠せないユアンをルナが不思議そうに見上げる。
(まさかルナの未来がかわってしまったのか、でもなぜ?)
そこまで考えてハッとする。
そういえばルナがユアンに彼氏を紹介するとき言っていた言葉を思い出す。
『彼の食べてる姿がお兄様そっくりで、おもわず声をかけてしまいました』
(僕が、やせてしまったから?)
ルナが興味を持てなかったのだろうか。一瞬ユアンは焦った。しかし──
(まぁ、彼には悪いがルナにはまた新たな恋をしてもらおう)と、気持ちを切り替える。
(本当の運命の相手なら、僕らみたいにまた縁は結ばれるはずだしな)
メアリーを眺めながら一人頷くのだった。
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