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第三章 告白をもう一度
失言
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「また──アップルパイ?」
さっきまでの暖かな日差しのようなほんわかした空気が、一瞬で北風によって一吹きにされたそんな気がした。
ユアンは自分が犯してしまった最大の過ちに気が付いた時には、メアリーの紅色だった頬はすっかりもとに戻り、小さく微笑むその瞳の奥は暗い光を放っているかのようだった。
「すみません。アップルパイなんて作ったことないので」
心を押し殺したような何の感情も感じられない言葉でやんわりと謝る。
「あっ、違うんです、今度アップルパイの美味しいお店ができたから、ぜひ、そこのアップルパイを、メアリーさんと一緒に、食べれたらなぁって。そして、それを作ってくれたら、うれしいな……」
変な汗がとめどなく背中に流れる。
ようやくユアンを見たメアリーの視線から今度はユアンが目をそらす。
「わかりました」
フウと深いため息とともにメアリーがそう言った。
「えっ、じゃあ今度一緒に──」
「はい」
しかしその「はい」がなぜかすごく怖いと感じたユアンだった。
「なぜアップルパイって言ってしまったんだ僕は」
寮に戻ってからユアンは自分の失言を後悔した。しかしあの時ユアンの脳裏にはある日の思い出がよみがえっていたのだ。
(メアリーのこの反応、昔にも一度……)
あれは前回の人生でユアンたちがまだ付き合う前、ユアンがメアリーの手作りのアップルパイを頬張りながら何気なく言った一言にメアリーが見せた行動と全く同じだったのだ。
『メアリーさんの作る料理は本当にどれもおいしいなぁ。ずっとメアリーさんの料理を食べてたいな。ねぇメアリーさん僕のためにずっと料理作ってくれないかな』
ユアンにとっては本当にただ料理がおいしくてでた何気ない言葉だった。しかしメアリーはそれをプロポーズと勘違いしたのだ。
確かに文面だけみればプロポーズと取れなくもない。付き合ってはいなかったものの、あのころはほとんど毎日一緒にいたし卒業も間近だったメアリーが、そんな風に言われたら勘違いしても仕方ないとも言えなくはない。しかし自分の体形にコンプレックスを持っていたユアンはメアリーは大切な友達で、付き合えるなどと夢にも思っていなかった。
だからメアリーがそんな勘違いをしたなんて見当もつかず、次の日からいやによそよそしくもとれる態度をとるようになったメアリーにすごいショックを受け落ち込んだものだった。
ショックのあまり、大好きな食事も喉を通らなくなったユアンに慌てたのはメアリーだった。
そして、メアリーはユアンを意識してしまいどう接していいか戸惑っていたことを正直に話してくれたのだ。
(あの時のメアリーの反応とさっきまでのメアリーの反応は酷似している)
ユアンを友達としてではなく、初めて男として意識した時のメアリーの戸惑い。
だから、今回ももしかしてそうなんじゃないかと、つい嬉しくなって。クッキーと言おうと思っていたのに、口が気が付いた時には思い出のアップルパイになっていたのだ。
「はぁ」
ユアンがため息を付く。
「でも、メアリーがあんな態度をとったということは、少なからず今回もメアリーは僕を男として意識してくれたってことだよね」
ユアンは握りこぶしを作ると自分を鼓舞するように胸に当てる。そして「次のデートで僕はメアリーに告白する!」とひとり誓いを立てたのだった。
さっきまでの暖かな日差しのようなほんわかした空気が、一瞬で北風によって一吹きにされたそんな気がした。
ユアンは自分が犯してしまった最大の過ちに気が付いた時には、メアリーの紅色だった頬はすっかりもとに戻り、小さく微笑むその瞳の奥は暗い光を放っているかのようだった。
「すみません。アップルパイなんて作ったことないので」
心を押し殺したような何の感情も感じられない言葉でやんわりと謝る。
「あっ、違うんです、今度アップルパイの美味しいお店ができたから、ぜひ、そこのアップルパイを、メアリーさんと一緒に、食べれたらなぁって。そして、それを作ってくれたら、うれしいな……」
変な汗がとめどなく背中に流れる。
ようやくユアンを見たメアリーの視線から今度はユアンが目をそらす。
「わかりました」
フウと深いため息とともにメアリーがそう言った。
「えっ、じゃあ今度一緒に──」
「はい」
しかしその「はい」がなぜかすごく怖いと感じたユアンだった。
「なぜアップルパイって言ってしまったんだ僕は」
寮に戻ってからユアンは自分の失言を後悔した。しかしあの時ユアンの脳裏にはある日の思い出がよみがえっていたのだ。
(メアリーのこの反応、昔にも一度……)
あれは前回の人生でユアンたちがまだ付き合う前、ユアンがメアリーの手作りのアップルパイを頬張りながら何気なく言った一言にメアリーが見せた行動と全く同じだったのだ。
『メアリーさんの作る料理は本当にどれもおいしいなぁ。ずっとメアリーさんの料理を食べてたいな。ねぇメアリーさん僕のためにずっと料理作ってくれないかな』
ユアンにとっては本当にただ料理がおいしくてでた何気ない言葉だった。しかしメアリーはそれをプロポーズと勘違いしたのだ。
確かに文面だけみればプロポーズと取れなくもない。付き合ってはいなかったものの、あのころはほとんど毎日一緒にいたし卒業も間近だったメアリーが、そんな風に言われたら勘違いしても仕方ないとも言えなくはない。しかし自分の体形にコンプレックスを持っていたユアンはメアリーは大切な友達で、付き合えるなどと夢にも思っていなかった。
だからメアリーがそんな勘違いをしたなんて見当もつかず、次の日からいやによそよそしくもとれる態度をとるようになったメアリーにすごいショックを受け落ち込んだものだった。
ショックのあまり、大好きな食事も喉を通らなくなったユアンに慌てたのはメアリーだった。
そして、メアリーはユアンを意識してしまいどう接していいか戸惑っていたことを正直に話してくれたのだ。
(あの時のメアリーの反応とさっきまでのメアリーの反応は酷似している)
ユアンを友達としてではなく、初めて男として意識した時のメアリーの戸惑い。
だから、今回ももしかしてそうなんじゃないかと、つい嬉しくなって。クッキーと言おうと思っていたのに、口が気が付いた時には思い出のアップルパイになっていたのだ。
「はぁ」
ユアンがため息を付く。
「でも、メアリーがあんな態度をとったということは、少なからず今回もメアリーは僕を男として意識してくれたってことだよね」
ユアンは握りこぶしを作ると自分を鼓舞するように胸に当てる。そして「次のデートで僕はメアリーに告白する!」とひとり誓いを立てたのだった。
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