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第三章 告白をもう一度
メアリー嬢は誤魔化せない
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「私どうしちゃったんだろ……」
新学期が始まり久々にユアンと会えると張り切ってクッキーを焼いてきたのに、なぜかユアンを目の前にしたら、休みの間話したかったことが全てどこかにいってしまった。挙句、渡そうと思っていたクッキーもなくしてしまうなんて。
ため息を付きながら誰もいない教室の机に顔を伏せる。
「お礼もまだちゃんとできてないのに」
久々に見たユアンの顔を思い出す。
あの事件後自宅療養することになったユアンを何度か魔具研のメンバーとお見舞いにいったのだが、いつもタイミングが悪く眠っていたりして会うことはできなかった。
そして長期休暇はメアリーも事件に巻き込まれたことを実家に説明のするため帰らなくてはならなく結局今日までユアンに会うことは叶わなかった。
「顔色、良くなって良かった」
自宅療養がよかったのか、肌艶は以前より良くなった気がする。それとちょっと見ただけだったが、また少し背も伸びた気がする。
王宮で事情を説明し終え寮へ帰る馬車の中でユアンはいきなり倒れたのだ。
前日のダンスパーティーではあんなに楽しそうにダンスを踊り、その後の事情聴取でもよどみなく質問に答えていたのに、急に胸を押さえて息も荒くなり、メアリーの見ている目の前でどんどんその顔からは血の気が失われていった。
その時のことを思い出しメアリーの心臓がギュッと痛くなる。
自分を助けるために魔力もないのに、強力な魔法石を使いすぎた反動だと後から聞かされて、メアリーの心はさらに痛んだ。
「ユアン様……」
「はい」
ふと漏れた呟きに返事が返ってきて、メアリーは心臓が飛び出るほど驚いた。そして突っ伏していた机から顔を上げると声の主を確かめる。
「ユアン様、どうしてここに!?」
ドキドキと高鳴る鼓動に気づかれないように、まっすぐにメアリーを見詰めている藍色の瞳に問いかけた。
新学期が始まり久々にユアンと会えると張り切ってクッキーを焼いてきたのに、なぜかユアンを目の前にしたら、休みの間話したかったことが全てどこかにいってしまった。挙句、渡そうと思っていたクッキーもなくしてしまうなんて。
ため息を付きながら誰もいない教室の机に顔を伏せる。
「お礼もまだちゃんとできてないのに」
久々に見たユアンの顔を思い出す。
あの事件後自宅療養することになったユアンを何度か魔具研のメンバーとお見舞いにいったのだが、いつもタイミングが悪く眠っていたりして会うことはできなかった。
そして長期休暇はメアリーも事件に巻き込まれたことを実家に説明のするため帰らなくてはならなく結局今日までユアンに会うことは叶わなかった。
「顔色、良くなって良かった」
自宅療養がよかったのか、肌艶は以前より良くなった気がする。それとちょっと見ただけだったが、また少し背も伸びた気がする。
王宮で事情を説明し終え寮へ帰る馬車の中でユアンはいきなり倒れたのだ。
前日のダンスパーティーではあんなに楽しそうにダンスを踊り、その後の事情聴取でもよどみなく質問に答えていたのに、急に胸を押さえて息も荒くなり、メアリーの見ている目の前でどんどんその顔からは血の気が失われていった。
その時のことを思い出しメアリーの心臓がギュッと痛くなる。
自分を助けるために魔力もないのに、強力な魔法石を使いすぎた反動だと後から聞かされて、メアリーの心はさらに痛んだ。
「ユアン様……」
「はい」
ふと漏れた呟きに返事が返ってきて、メアリーは心臓が飛び出るほど驚いた。そして突っ伏していた机から顔を上げると声の主を確かめる。
「ユアン様、どうしてここに!?」
ドキドキと高鳴る鼓動に気づかれないように、まっすぐにメアリーを見詰めている藍色の瞳に問いかけた。
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