【完結】二度目の人生、君ともう一度!〜彼女を守りたいだけなのに〜

トト

文字の大きさ
上 下
95 / 147
第二章 青春をもう一度

ダンスパーティー

しおりを挟む
 その時ローズマリーは会場の外で花火が上がるのを見た。

「マリーッ」

 ダンスの途中で急にその場にしゃがみ込んだローズマリーにレイモンドが駆け寄る。

「大丈夫か」
「足がもつれてしまって。すみませんがちょっと休ませていただたきますわ」

 相手をしてくれていた生徒にローズマリーはニコリと微笑むとレイモンドと一緒に壁際に退散する。

「もう大丈夫だ」

 レイモンドが耳元でそう囁く。笑顔を張り付けたままローズマリーは小さく頷く。まだ涙を流すわけにはいかない。これからが本番である。

 最後のダンス曲が流れ終わると、生徒会のメンバーと学園長や教授たちが舞台の上に勢ぞろいした。
 生徒会代表としてレイモンドがマイクの前に立つ。

「今宵の生徒会主催のダンスパーティー、楽しんでいただけましたでしょうか。私にとってはこれが最後の生徒会会長としてのイベントになります」

 凛とした声が会場内に響く。

「本来ならここで、先生方に感謝の言葉を述べたいところなのですが、今日は私からみなさんにお伝えたしたいことがあります」

 レイモンドが会場内をぐるりと見渡す。

「『脳筋単細胞王子』」

 レイモンドの一言に会場が一瞬ざわりとざわめく。

「最近どうやら私は陰でこう呼ばれているようです」

 ニコリと微笑みながら続ける。

「『氷のような冷たい心の令嬢。平民は虫けらとしか思っていない。傲慢。嫌味な女』」

 生徒たちがお互いをチラチラとみながらざわつく。しかしそれもだんだんおさまると、会場は水を打ったかのような静けさに包まれた。

「誰のことか、みなさん一度は耳にしているはずですね」

 ゆっくりとした口調だった。

「私は単純で剣を振ることばかり考えているようなダメな王子なことは確かです。だがもう一つの令嬢に対する評価はすべて間違っています」

「みなさんは街で猫カフェに行ったことはありますか?動物たちの保護施設を街の孤児院を誰が運営しているかご存じですか」

 再び会場が小さくざわめく。

「確かに彼女は誤解を招いても仕方ないほど言葉遣いが傲慢なのは認めます。でもそれは決して彼女の本当の気持ちではありません。彼女は決して権力を笠にするような令嬢でもなければ、冷たい女性でもありません」

 レイモンドは続ける。

「むしろ優しすぎるぐらい優しくて。それでいてとても頭の良い優秀な女性です」

 はっきりと言葉にする。

「私はそんな彼女を心から尊敬し慕っています。ここでみなさんの誤解を一掃するとともに、そしてどうか皆さんには私の愛の告白の見届け人になって欲しいと思います」

 レイモンドがちらりと学園長を見た後、ローズマリーの前で片足を立てて膝まづく。

「ローズマリー・フローレスどうか私と結婚を前提にお付き合いしてください」
「言葉がなっていないとは心外ですが。でも間違っていなことも認めますわ」

 尊大な態度でレイモンドの言葉を受け止め、一言言い返したのち、

「有難くそのお言葉頂戴いたしますわ。後から取り消しは許しませんことよ」

 レイモンドの手を取る。
 静まり返っていた会場で学園長が初めにパチリと手を叩いた、それは伝染するかのように大き拍手となって鳴り響いた。


「どこに行くんですか、教授」

 鳴り止まない拍手の中で苦虫をつぶしたような顔の女性教授が一人、会場の出口に向かって歩みを速めて。
 その肩をキールががっちりとつかむ。

「パーティーは終わったようだから先に失礼しようと思って」
「そうですか、ではその手に握りつぶした魔法石のゴミはこちらで処分しておくので、渡していただけますか」

 ニコリと微笑みながらキールが手を前に出す。それを聞いた女性教授はギロリと睨みつけると、何かを口の中で唱えた。しかしそれが唱え終える前にキールの鋭い手刀が首に入る。まるでキールに寄り掛かるように女性教授はそのまま気を失った。

「アレクとアスタも生徒を確保したわ」

 アンリがキールのもとに駆け寄るとそう伝える。そしてお酒に酔った女性教授を介抱でもしているように二人で支えながら会場の外に連れ出す。

「怪しい動きをしていた者は、もういないようね」

 そうしてまだ拍手のなりやまない会場を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

処理中です...