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第二章 青春をもう一度
ダンスパーティー
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その時ローズマリーは会場の外で花火が上がるのを見た。
「マリーッ」
ダンスの途中で急にその場にしゃがみ込んだローズマリーにレイモンドが駆け寄る。
「大丈夫か」
「足がもつれてしまって。すみませんがちょっと休ませていただたきますわ」
相手をしてくれていた生徒にローズマリーはニコリと微笑むとレイモンドと一緒に壁際に退散する。
「もう大丈夫だ」
レイモンドが耳元でそう囁く。笑顔を張り付けたままローズマリーは小さく頷く。まだ涙を流すわけにはいかない。これからが本番である。
最後のダンス曲が流れ終わると、生徒会のメンバーと学園長や教授たちが舞台の上に勢ぞろいした。
生徒会代表としてレイモンドがマイクの前に立つ。
「今宵の生徒会主催のダンスパーティー、楽しんでいただけましたでしょうか。私にとってはこれが最後の生徒会会長としてのイベントになります」
凛とした声が会場内に響く。
「本来ならここで、先生方に感謝の言葉を述べたいところなのですが、今日は私からみなさんにお伝えたしたいことがあります」
レイモンドが会場内をぐるりと見渡す。
「『脳筋単細胞王子』」
レイモンドの一言に会場が一瞬ざわりとざわめく。
「最近どうやら私は陰でこう呼ばれているようです」
ニコリと微笑みながら続ける。
「『氷のような冷たい心の令嬢。平民は虫けらとしか思っていない。傲慢。嫌味な女』」
生徒たちがお互いをチラチラとみながらざわつく。しかしそれもだんだんおさまると、会場は水を打ったかのような静けさに包まれた。
「誰のことか、みなさん一度は耳にしているはずですね」
ゆっくりとした口調だった。
「私は単純で剣を振ることばかり考えているようなダメな王子なことは確かです。だがもう一つの令嬢に対する評価はすべて間違っています」
「みなさんは街で猫カフェに行ったことはありますか?動物たちの保護施設を街の孤児院を誰が運営しているかご存じですか」
再び会場が小さくざわめく。
「確かに彼女は誤解を招いても仕方ないほど言葉遣いが傲慢なのは認めます。でもそれは決して彼女の本当の気持ちではありません。彼女は決して権力を笠にするような令嬢でもなければ、冷たい女性でもありません」
レイモンドは続ける。
「むしろ優しすぎるぐらい優しくて。それでいてとても頭の良い優秀な女性です」
はっきりと言葉にする。
「私はそんな彼女を心から尊敬し慕っています。ここでみなさんの誤解を一掃するとともに、そしてどうか皆さんには私の愛の告白の見届け人になって欲しいと思います」
レイモンドがちらりと学園長を見た後、ローズマリーの前で片足を立てて膝まづく。
「ローズマリー・フローレスどうか私と結婚を前提にお付き合いしてください」
「言葉がなっていないとは心外ですが。でも間違っていなことも認めますわ」
尊大な態度でレイモンドの言葉を受け止め、一言言い返したのち、
「有難くそのお言葉頂戴いたしますわ。後から取り消しは許しませんことよ」
レイモンドの手を取る。
静まり返っていた会場で学園長が初めにパチリと手を叩いた、それは伝染するかのように大き拍手となって鳴り響いた。
「どこに行くんですか、教授」
鳴り止まない拍手の中で苦虫をつぶしたような顔の女性教授が一人、会場の出口に向かって歩みを速めて。
その肩をキールががっちりとつかむ。
「パーティーは終わったようだから先に失礼しようと思って」
「そうですか、ではその手に握りつぶした魔法石のゴミはこちらで処分しておくので、渡していただけますか」
ニコリと微笑みながらキールが手を前に出す。それを聞いた女性教授はギロリと睨みつけると、何かを口の中で唱えた。しかしそれが唱え終える前にキールの鋭い手刀が首に入る。まるでキールに寄り掛かるように女性教授はそのまま気を失った。
「アレクとアスタも生徒を確保したわ」
アンリがキールのもとに駆け寄るとそう伝える。そしてお酒に酔った女性教授を介抱でもしているように二人で支えながら会場の外に連れ出す。
「怪しい動きをしていた者は、もういないようね」
そうしてまだ拍手のなりやまない会場を後にした。
「マリーッ」
ダンスの途中で急にその場にしゃがみ込んだローズマリーにレイモンドが駆け寄る。
「大丈夫か」
「足がもつれてしまって。すみませんがちょっと休ませていただたきますわ」
相手をしてくれていた生徒にローズマリーはニコリと微笑むとレイモンドと一緒に壁際に退散する。
「もう大丈夫だ」
レイモンドが耳元でそう囁く。笑顔を張り付けたままローズマリーは小さく頷く。まだ涙を流すわけにはいかない。これからが本番である。
最後のダンス曲が流れ終わると、生徒会のメンバーと学園長や教授たちが舞台の上に勢ぞろいした。
生徒会代表としてレイモンドがマイクの前に立つ。
「今宵の生徒会主催のダンスパーティー、楽しんでいただけましたでしょうか。私にとってはこれが最後の生徒会会長としてのイベントになります」
凛とした声が会場内に響く。
「本来ならここで、先生方に感謝の言葉を述べたいところなのですが、今日は私からみなさんにお伝えたしたいことがあります」
レイモンドが会場内をぐるりと見渡す。
「『脳筋単細胞王子』」
レイモンドの一言に会場が一瞬ざわりとざわめく。
「最近どうやら私は陰でこう呼ばれているようです」
ニコリと微笑みながら続ける。
「『氷のような冷たい心の令嬢。平民は虫けらとしか思っていない。傲慢。嫌味な女』」
生徒たちがお互いをチラチラとみながらざわつく。しかしそれもだんだんおさまると、会場は水を打ったかのような静けさに包まれた。
「誰のことか、みなさん一度は耳にしているはずですね」
ゆっくりとした口調だった。
「私は単純で剣を振ることばかり考えているようなダメな王子なことは確かです。だがもう一つの令嬢に対する評価はすべて間違っています」
「みなさんは街で猫カフェに行ったことはありますか?動物たちの保護施設を街の孤児院を誰が運営しているかご存じですか」
再び会場が小さくざわめく。
「確かに彼女は誤解を招いても仕方ないほど言葉遣いが傲慢なのは認めます。でもそれは決して彼女の本当の気持ちではありません。彼女は決して権力を笠にするような令嬢でもなければ、冷たい女性でもありません」
レイモンドは続ける。
「むしろ優しすぎるぐらい優しくて。それでいてとても頭の良い優秀な女性です」
はっきりと言葉にする。
「私はそんな彼女を心から尊敬し慕っています。ここでみなさんの誤解を一掃するとともに、そしてどうか皆さんには私の愛の告白の見届け人になって欲しいと思います」
レイモンドがちらりと学園長を見た後、ローズマリーの前で片足を立てて膝まづく。
「ローズマリー・フローレスどうか私と結婚を前提にお付き合いしてください」
「言葉がなっていないとは心外ですが。でも間違っていなことも認めますわ」
尊大な態度でレイモンドの言葉を受け止め、一言言い返したのち、
「有難くそのお言葉頂戴いたしますわ。後から取り消しは許しませんことよ」
レイモンドの手を取る。
静まり返っていた会場で学園長が初めにパチリと手を叩いた、それは伝染するかのように大き拍手となって鳴り響いた。
「どこに行くんですか、教授」
鳴り止まない拍手の中で苦虫をつぶしたような顔の女性教授が一人、会場の出口に向かって歩みを速めて。
その肩をキールががっちりとつかむ。
「パーティーは終わったようだから先に失礼しようと思って」
「そうですか、ではその手に握りつぶした魔法石のゴミはこちらで処分しておくので、渡していただけますか」
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