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第二章 青春をもう一度
悪意
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あれから裏でレイモンドが色々動いているようなのだが、噂はあいかわらず流されていて、いまだにローズマリーを悪意的な目で見るものは減っていなかった。
しかし当の本人は犯人の意図がわかってからはあまり気にしてないようで「私がちゃんと正しい行いをしていけば、どちらが正しいか生徒たちはわかってくれますわ」とあっけらかんとしていた。
自分個人の問題というより王位継承争いに巻き込まれたとわかって寧ろ気持ち的には納得がいったという感じなのだろう。
「学術祭も終わって、先輩たちも忙しそうで、なんだか少し寂しいですわ」
先輩たちも将来に向けての課題が増え忙しくあまり魔具研に顔を出さなくなった。
そして昼はメアリーとローズマリーは魔法学部の食堂ではなく、天気の良い日などはユアンと三人校庭で食べることが増えた。
「そうね。でもマリーも生徒会の仕事が忙しそうだけど大丈夫?」
そう学術祭が終われば後期の行事で残されているのは、ダンスパーティーのみである。
ダンスパーティーは生徒会主導のもと、二年生と三年生だけが参加できる催しである、いわゆる卒業後の社交界デビューの練習というわけだ。
そんなことを話していると、三人の少し先で食事をしていた生徒が紙くずをポイと花壇に投げ捨ててそのまま立ち去ろうとしているのが見えた。
すかさずローズマリーがその生徒を呼び止め、ゴミを拾うように注意する。
「たく、うるせぇな偉そうに」
生徒は「あっ」と振り返ったが、そこにローズマリーの姿を見るや否や、明らかに不機嫌そうな表情でそう言った。
「ゴミを花壇に捨てることは間違っていることです。それを注意されて反省するどころか、文句をいうなんておかしいのはあなたです」
何か言い返そうと口を開いたローズマリーより先に、メアリーがその生徒に向かってそう訴えた。
「──ッ。……」
生徒の様子から、そんなことをいったらメアリーに襲い掛かってくるのではないかと、ユアンがメアリーたちと生徒の間に割って入る。
しかし言われた生徒は何か言おうとしたが、急に勢いをなくしたように口を閉ざすと、花壇から自分が投げ捨てたゴミを拾い、いそいそとその場から立ち去った。
「ユアン様ありがとうございます」
「ユアン様に恐れをなして逃げていくなんて、女だからと甘く見ているのですわ」
メアリーとローズマリーが憤慨しながらそんなことを話していたが、ユアンだけが何か考えるように眉間を寄せた。
「どうしました?」
「マリーさんそれとメアリーさん、ちょっとお願いしてもいいですか」
「いいですよ」
「いいですわよ」
お願いの内容など聞かなくてもすぐ承諾する二人を前に、ユアンは思わず笑みをこぼした。
ユアンの指示で些細な事、例えば服装の乱れなど校則違反をしている生徒を探す。
そしてその生徒に向かってローズマリーが注意をする。
反発があればメアリーがさらに指摘したりユアンが間に入ったり、そんなことを何十人と繰り返す。
そして──
「あのユアン様、さすがに私も心が折れそうですわ」
強気な瞳をうっすらと潤ませながらユアンを見上げる。ローズマリーは別に悪いことをしているわけではなく、校則違反をしている生徒を生徒会として注意してもらっているだけなのだが、それに対しての生徒の反発のきつさが流石のローズマリーにもこたえるらしい。
「すみません、そうですよね。もう大丈夫です。だいたいわかりました」
ユアンもつい夢中になって次から次へと声をかけすぎたことを反省する。
「ユアン様、これでいったい何がわかったんですか」
ローズマリーの頭をヨシヨシと撫ぜながら尋ねる。
「いま学園内に広がっている噂を払しょくするには一筋なわではいかないということがわかりました」
きょとんとした顔でユアンを見詰める。
「とりあえず、これはレイモンドさんたちも交えて話さなくては、しっかり対策しないとならない問題です」
珍しく怖い顔でユアンは二人にそう話した。
しかし当の本人は犯人の意図がわかってからはあまり気にしてないようで「私がちゃんと正しい行いをしていけば、どちらが正しいか生徒たちはわかってくれますわ」とあっけらかんとしていた。
自分個人の問題というより王位継承争いに巻き込まれたとわかって寧ろ気持ち的には納得がいったという感じなのだろう。
「学術祭も終わって、先輩たちも忙しそうで、なんだか少し寂しいですわ」
先輩たちも将来に向けての課題が増え忙しくあまり魔具研に顔を出さなくなった。
そして昼はメアリーとローズマリーは魔法学部の食堂ではなく、天気の良い日などはユアンと三人校庭で食べることが増えた。
「そうね。でもマリーも生徒会の仕事が忙しそうだけど大丈夫?」
そう学術祭が終われば後期の行事で残されているのは、ダンスパーティーのみである。
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そんなことを話していると、三人の少し先で食事をしていた生徒が紙くずをポイと花壇に投げ捨ててそのまま立ち去ろうとしているのが見えた。
すかさずローズマリーがその生徒を呼び止め、ゴミを拾うように注意する。
「たく、うるせぇな偉そうに」
生徒は「あっ」と振り返ったが、そこにローズマリーの姿を見るや否や、明らかに不機嫌そうな表情でそう言った。
「ゴミを花壇に捨てることは間違っていることです。それを注意されて反省するどころか、文句をいうなんておかしいのはあなたです」
何か言い返そうと口を開いたローズマリーより先に、メアリーがその生徒に向かってそう訴えた。
「──ッ。……」
生徒の様子から、そんなことをいったらメアリーに襲い掛かってくるのではないかと、ユアンがメアリーたちと生徒の間に割って入る。
しかし言われた生徒は何か言おうとしたが、急に勢いをなくしたように口を閉ざすと、花壇から自分が投げ捨てたゴミを拾い、いそいそとその場から立ち去った。
「ユアン様ありがとうございます」
「ユアン様に恐れをなして逃げていくなんて、女だからと甘く見ているのですわ」
メアリーとローズマリーが憤慨しながらそんなことを話していたが、ユアンだけが何か考えるように眉間を寄せた。
「どうしました?」
「マリーさんそれとメアリーさん、ちょっとお願いしてもいいですか」
「いいですよ」
「いいですわよ」
お願いの内容など聞かなくてもすぐ承諾する二人を前に、ユアンは思わず笑みをこぼした。
ユアンの指示で些細な事、例えば服装の乱れなど校則違反をしている生徒を探す。
そしてその生徒に向かってローズマリーが注意をする。
反発があればメアリーがさらに指摘したりユアンが間に入ったり、そんなことを何十人と繰り返す。
そして──
「あのユアン様、さすがに私も心が折れそうですわ」
強気な瞳をうっすらと潤ませながらユアンを見上げる。ローズマリーは別に悪いことをしているわけではなく、校則違反をしている生徒を生徒会として注意してもらっているだけなのだが、それに対しての生徒の反発のきつさが流石のローズマリーにもこたえるらしい。
「すみません、そうですよね。もう大丈夫です。だいたいわかりました」
ユアンもつい夢中になって次から次へと声をかけすぎたことを反省する。
「ユアン様、これでいったい何がわかったんですか」
ローズマリーの頭をヨシヨシと撫ぜながら尋ねる。
「いま学園内に広がっている噂を払しょくするには一筋なわではいかないということがわかりました」
きょとんとした顔でユアンを見詰める。
「とりあえず、これはレイモンドさんたちも交えて話さなくては、しっかり対策しないとならない問題です」
珍しく怖い顔でユアンは二人にそう話した。
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