79 / 147
第二章 青春をもう一度
噂
しおりを挟む
「そう。今の一年生たちはメアリー姉さまとマリー姉さまのやり取りを見てきているので、噂を聞いてもほとんど半信半疑で本当に信じている子はまだいないと思います。でもどういうわけかルナが噂を否定して、皆も一度は納得するのにまた時間がたつとどこからか新しい噂が伝わってくるのです」
皆がルナの顔を神妙な表情で見る。
「つまり、わざとマリー姉さまの悪い噂を流している人物がいるということです。それも一人二人ではありません」
ごくりと唾を飲み込む。
「誰かがわざと流している?いったいなんのために」
眉間に皺を寄せながらアスタが呟く。
「そんな噂、信じてないならほっとけばいいんじゃないか?または今からみんなで噂は事実無根だといいにいけばいいだろ」
いつだって真っ向勝負のキールはあっけらかんとそんなことを言う。
ただユアンだけがまさかという顔で俯いた。
これはもしかしなくても前の人生でのローズマリーの噂も、何者かによってわざと流されたのではないか。そんな考えが浮かんだからだ。
確かにローズマリーにも問題はあるが、親しくなればなるほど誤解だということがわかる、なのになぜ前の人生では誰もそれを否定しなかったのか。婚約者である王太子でさえ噂を信じてあんな行動を起こしてしまったのか。
たぶん前の人生でもローズマリーはこの魔法道具研究倶楽部に入部しているはず、街灯が発明されたのだから、学園追放後も先輩たちとは繋がっていたはずだ、それでもあの事件が起きるまで何の対応もできなかったのか。もしかしたら対応してもそれ以上のなにか大きな力に負けてしまったのかもしれない。
私の態度がと反省しているローズマリーや、言葉を伝えられなかったと悔やむメアリーを見ながら、ユアンだけかこの事態の本当の闇を知ってしまった気がして、背筋が凍り付くような寒気を覚えた。
「キール待て、これはそんな単純な話ではないかもしれない」
ルナがさすがお兄様というような、羨望の眼差しを向けてくる。
「どういうことだよ」
「それは──」
まだユアンもわからない。
誰がなぜローズマリーを陥れるようなことをするのか?
人間誰しも嫌いな人や気に食わない人はいる、でもそれをこんな風に攻撃して何の意味があるのか。考え込むユアン。
「その話、俺たちにも詳しく説明してくれ」
その時、魔道研の扉が開けられた。
「アレク先輩とレイモンド様」
アレクの後から入ってきた王太子を見て、ローズマリーが立ち上がり淑女の礼をする。それに続いてユアンたちも立ち上がり礼をとる。
「誰?」
みんなの行動を見て同じように礼をとったルナだったが、ユアンの耳元で訪ねる。
「ローズマリーさんの婚約者でこの国の第一王子、レイモンド殿下だ」
ルナが思わずでかけた驚きの声を抑えるように口元を手でおおった。
皆がルナの顔を神妙な表情で見る。
「つまり、わざとマリー姉さまの悪い噂を流している人物がいるということです。それも一人二人ではありません」
ごくりと唾を飲み込む。
「誰かがわざと流している?いったいなんのために」
眉間に皺を寄せながらアスタが呟く。
「そんな噂、信じてないならほっとけばいいんじゃないか?または今からみんなで噂は事実無根だといいにいけばいいだろ」
いつだって真っ向勝負のキールはあっけらかんとそんなことを言う。
ただユアンだけがまさかという顔で俯いた。
これはもしかしなくても前の人生でのローズマリーの噂も、何者かによってわざと流されたのではないか。そんな考えが浮かんだからだ。
確かにローズマリーにも問題はあるが、親しくなればなるほど誤解だということがわかる、なのになぜ前の人生では誰もそれを否定しなかったのか。婚約者である王太子でさえ噂を信じてあんな行動を起こしてしまったのか。
たぶん前の人生でもローズマリーはこの魔法道具研究倶楽部に入部しているはず、街灯が発明されたのだから、学園追放後も先輩たちとは繋がっていたはずだ、それでもあの事件が起きるまで何の対応もできなかったのか。もしかしたら対応してもそれ以上のなにか大きな力に負けてしまったのかもしれない。
私の態度がと反省しているローズマリーや、言葉を伝えられなかったと悔やむメアリーを見ながら、ユアンだけかこの事態の本当の闇を知ってしまった気がして、背筋が凍り付くような寒気を覚えた。
「キール待て、これはそんな単純な話ではないかもしれない」
ルナがさすがお兄様というような、羨望の眼差しを向けてくる。
「どういうことだよ」
「それは──」
まだユアンもわからない。
誰がなぜローズマリーを陥れるようなことをするのか?
人間誰しも嫌いな人や気に食わない人はいる、でもそれをこんな風に攻撃して何の意味があるのか。考え込むユアン。
「その話、俺たちにも詳しく説明してくれ」
その時、魔道研の扉が開けられた。
「アレク先輩とレイモンド様」
アレクの後から入ってきた王太子を見て、ローズマリーが立ち上がり淑女の礼をする。それに続いてユアンたちも立ち上がり礼をとる。
「誰?」
みんなの行動を見て同じように礼をとったルナだったが、ユアンの耳元で訪ねる。
「ローズマリーさんの婚約者でこの国の第一王子、レイモンド殿下だ」
ルナが思わずでかけた驚きの声を抑えるように口元を手でおおった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
悪役令嬢だそうですが、攻略対象その5以外は興味ありません
千 遊雲
恋愛
悪役令嬢に転生したそうですが、攻略対象その5以外には興味がありません。
ストーリー?イベント?ヒロインさん?そんなことはどうでも良いので、攻略対象その5に会いたいのです!
「小説を読もう」にて更新・完結をした作品です。「小説を読もう」のアカウント削除に伴い、書き直して投稿します。
【本編完結済】現在番外編更新中です。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。
光のもとで2
葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、
新たな気持ちで新学期を迎える。
好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。
少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。
それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。
この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。
何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい――
(10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる