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第二章 青春をもう一度
噂
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「そう。今の一年生たちはメアリー姉さまとマリー姉さまのやり取りを見てきているので、噂を聞いてもほとんど半信半疑で本当に信じている子はまだいないと思います。でもどういうわけかルナが噂を否定して、皆も一度は納得するのにまた時間がたつとどこからか新しい噂が伝わってくるのです」
皆がルナの顔を神妙な表情で見る。
「つまり、わざとマリー姉さまの悪い噂を流している人物がいるということです。それも一人二人ではありません」
ごくりと唾を飲み込む。
「誰かがわざと流している?いったいなんのために」
眉間に皺を寄せながらアスタが呟く。
「そんな噂、信じてないならほっとけばいいんじゃないか?または今からみんなで噂は事実無根だといいにいけばいいだろ」
いつだって真っ向勝負のキールはあっけらかんとそんなことを言う。
ただユアンだけがまさかという顔で俯いた。
これはもしかしなくても前の人生でのローズマリーの噂も、何者かによってわざと流されたのではないか。そんな考えが浮かんだからだ。
確かにローズマリーにも問題はあるが、親しくなればなるほど誤解だということがわかる、なのになぜ前の人生では誰もそれを否定しなかったのか。婚約者である王太子でさえ噂を信じてあんな行動を起こしてしまったのか。
たぶん前の人生でもローズマリーはこの魔法道具研究倶楽部に入部しているはず、街灯が発明されたのだから、学園追放後も先輩たちとは繋がっていたはずだ、それでもあの事件が起きるまで何の対応もできなかったのか。もしかしたら対応してもそれ以上のなにか大きな力に負けてしまったのかもしれない。
私の態度がと反省しているローズマリーや、言葉を伝えられなかったと悔やむメアリーを見ながら、ユアンだけかこの事態の本当の闇を知ってしまった気がして、背筋が凍り付くような寒気を覚えた。
「キール待て、これはそんな単純な話ではないかもしれない」
ルナがさすがお兄様というような、羨望の眼差しを向けてくる。
「どういうことだよ」
「それは──」
まだユアンもわからない。
誰がなぜローズマリーを陥れるようなことをするのか?
人間誰しも嫌いな人や気に食わない人はいる、でもそれをこんな風に攻撃して何の意味があるのか。考え込むユアン。
「その話、俺たちにも詳しく説明してくれ」
その時、魔道研の扉が開けられた。
「アレク先輩とレイモンド様」
アレクの後から入ってきた王太子を見て、ローズマリーが立ち上がり淑女の礼をする。それに続いてユアンたちも立ち上がり礼をとる。
「誰?」
みんなの行動を見て同じように礼をとったルナだったが、ユアンの耳元で訪ねる。
「ローズマリーさんの婚約者でこの国の第一王子、レイモンド殿下だ」
ルナが思わずでかけた驚きの声を抑えるように口元を手でおおった。
皆がルナの顔を神妙な表情で見る。
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「どういうことだよ」
「それは──」
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