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第二章 青春をもう一度
妹と幼馴染の怪しい関係
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ユアン達はアレクに指示された通り、魔法陣を使わず魔法石のカットで魔力の質量を変えれる研究を同時進行で始めた。
魔法石のカットについてはすでに色々研究されていたのでそれに手を加えより高度な仕上がりになるよう論文を作り上げた。
そんな研究と実験の毎日の中、メアリーとの関係はいまだに友達以上恋人未満で停滞したままだった。
昨年の今ぐらいは「女なんか興味ない!」と言い切っていたキールが一目ぼれを経てからの告白と婚約までのなんてスピーディーなことか。
さすがにまねはできないが、ユアンにもあの勢いの百分の一でもあれば……
グッとこぶしを強く握りしめる。
「お兄様!いらっしゃいますか」
その時勢いよく扉が開けられ妹のルナがツインテールをなびかせながら入ってきた。
「ルナちゃんいらっしゃい」
最近いつも眉間にしわを寄せているアスタが久しぶりに天使スマイルで出迎える。
「お、ルナじゃないか久しぶりだな」
ルナが礼儀正しくアスタに挨拶をしていると、後ろからアンリと共にキールが小屋に入ってきた。
「キール様がどうしてここに!?」
そういえばルナとキールがここで鉢合わせたことはいままでなかった。
「まさか、お兄様を追って」
騎士学部の生徒がクラブ活動をしているとも思えない。ルナはピンと来たとばかりにキッと睨みつける。
「いや俺はユアンに会い来たわけではないよ。寮で同じ部屋だし」
寮という単語を聞いて怒りがおさまるどころかさらにプクッと頬を膨らませると、ルナはユアンに抱き着いた。
「そうだったわ、キール様がお兄様を誘惑して寮に連れて行ってしまったから、ルナはお兄様と離れ離れに──」
「いや、違うよ僕がキールにお願いして相部屋にしてもらったんだよ(ダイエットのために)」
ルナは何を誤解しているのか、先ほどから明らかにキールを敵対ししている。ユアンが家を出る前はあんなに仲が良かったのに。
「そうだぞルナ。ユアンに頼まれたら俺が断れないのは知っているだろ」
いや確かにいままでキールがユアンのお願いを断ったことなどないが、なんか言い方おかしくないか?とユアンはその時思った。
「そうですよね、ダイエットだって断れませんでしたもんね」
グッとキールが唇を噛みしめる。
「あんなに可愛かったお兄様を、こんなに格好良くしてしまって」
さっきからルナもキールもなんだか会話がおかしい。
一緒に入ってきたアンリも明らかに冷めた眼差しで二人を見ている。
「主の命令は絶対だから仕方なかったんだ!」
キールが苦渋の選択でもするかのように絞り出す。
「まっ待て、主って誰?」
キールとルナが同時にユアンの方を見て、
「お兄様です!」
「ユアンだ!」
二人同時に答える。
「えっ、僕知らないよ。いつキールと主従関係結んだんだよ!」
(だからキールは僕のことをいつも肯定してくれていたの?)
優しい幼馴染だと思っていたのに軽くショックを受ける。
「七年前にこの命をお前に救われた時から、俺の剣はお前に捧げると誓った」
「七年前!?」
「そうです、ルナもあの時からお兄様のためならすべて捧げると決めてます」
(キールとルナの命を救った?そんな覚えは全く……ないぞ?)
しかし次の命令でも待つように二人はじっとユアンを見詰めている。その後ろではアンリがどういうことですか?と言わんばかりにユアンをカッと開いた紫色の瞳で見ている。
助けを求めるように周りをみたが、なぜかメアリーとローズマリーはさっと視線をそらした。
「なんかよくわからない話になってるが、ルナちゃんは今日は何か話があってきたんじゃないのか?」
この中で唯一この状況を楽しんでいたアスタがルナにそう声をかける。
「そうでした!今日はそんなことを話しにきたわけでわないのでしたわ」
ルナがハッとしたように口元を抑えると、今日来た理由を話し出した。
話がそれたのはよいが、なんだかよく知っていたはずの幼馴染と妹がとてつもなく遠い存在に思えて、話の半分もユアンの耳には入ってこなかった。
魔法石のカットについてはすでに色々研究されていたのでそれに手を加えより高度な仕上がりになるよう論文を作り上げた。
そんな研究と実験の毎日の中、メアリーとの関係はいまだに友達以上恋人未満で停滞したままだった。
昨年の今ぐらいは「女なんか興味ない!」と言い切っていたキールが一目ぼれを経てからの告白と婚約までのなんてスピーディーなことか。
さすがにまねはできないが、ユアンにもあの勢いの百分の一でもあれば……
グッとこぶしを強く握りしめる。
「お兄様!いらっしゃいますか」
その時勢いよく扉が開けられ妹のルナがツインテールをなびかせながら入ってきた。
「ルナちゃんいらっしゃい」
最近いつも眉間にしわを寄せているアスタが久しぶりに天使スマイルで出迎える。
「お、ルナじゃないか久しぶりだな」
ルナが礼儀正しくアスタに挨拶をしていると、後ろからアンリと共にキールが小屋に入ってきた。
「キール様がどうしてここに!?」
そういえばルナとキールがここで鉢合わせたことはいままでなかった。
「まさか、お兄様を追って」
騎士学部の生徒がクラブ活動をしているとも思えない。ルナはピンと来たとばかりにキッと睨みつける。
「いや俺はユアンに会い来たわけではないよ。寮で同じ部屋だし」
寮という単語を聞いて怒りがおさまるどころかさらにプクッと頬を膨らませると、ルナはユアンに抱き着いた。
「そうだったわ、キール様がお兄様を誘惑して寮に連れて行ってしまったから、ルナはお兄様と離れ離れに──」
「いや、違うよ僕がキールにお願いして相部屋にしてもらったんだよ(ダイエットのために)」
ルナは何を誤解しているのか、先ほどから明らかにキールを敵対ししている。ユアンが家を出る前はあんなに仲が良かったのに。
「そうだぞルナ。ユアンに頼まれたら俺が断れないのは知っているだろ」
いや確かにいままでキールがユアンのお願いを断ったことなどないが、なんか言い方おかしくないか?とユアンはその時思った。
「そうですよね、ダイエットだって断れませんでしたもんね」
グッとキールが唇を噛みしめる。
「あんなに可愛かったお兄様を、こんなに格好良くしてしまって」
さっきからルナもキールもなんだか会話がおかしい。
一緒に入ってきたアンリも明らかに冷めた眼差しで二人を見ている。
「主の命令は絶対だから仕方なかったんだ!」
キールが苦渋の選択でもするかのように絞り出す。
「まっ待て、主って誰?」
キールとルナが同時にユアンの方を見て、
「お兄様です!」
「ユアンだ!」
二人同時に答える。
「えっ、僕知らないよ。いつキールと主従関係結んだんだよ!」
(だからキールは僕のことをいつも肯定してくれていたの?)
優しい幼馴染だと思っていたのに軽くショックを受ける。
「七年前にこの命をお前に救われた時から、俺の剣はお前に捧げると誓った」
「七年前!?」
「そうです、ルナもあの時からお兄様のためならすべて捧げると決めてます」
(キールとルナの命を救った?そんな覚えは全く……ないぞ?)
しかし次の命令でも待つように二人はじっとユアンを見詰めている。その後ろではアンリがどういうことですか?と言わんばかりにユアンをカッと開いた紫色の瞳で見ている。
助けを求めるように周りをみたが、なぜかメアリーとローズマリーはさっと視線をそらした。
「なんかよくわからない話になってるが、ルナちゃんは今日は何か話があってきたんじゃないのか?」
この中で唯一この状況を楽しんでいたアスタがルナにそう声をかける。
「そうでした!今日はそんなことを話しにきたわけでわないのでしたわ」
ルナがハッとしたように口元を抑えると、今日来た理由を話し出した。
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