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第二章 青春をもう一度

キャンプ

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 岸に戻ってくる頃には、オルレアン家の使用人たちによってお昼の用意がされていた。
 それを食べ終わると目をキラキラさせたアスタが、

「ようやく楽しい実験の時間だ」

 と持ってきたたくさんの魔法石を広げて見せる。

 まずはいつもの光魔法。魔力のある者。ない者。魔力を込めた魔法使い。込めていない魔法使い。男と女。いろいろなタイプに分類してデータを取る。

 次はアレクの風魔法を込めた魔法石だ。
 これは扱いが難しく、怖がっていると発動しないし心が乱れれば怪我をする恐れがある。
 だから被験者はアスタとユアンのみ、風を使ってボートが動かせるかなどの実験をした。

 次に火魔法。これはユアンに代わってアンリが行なってくれた。
 兄弟以外の魔法石を使うのは初めてだったが、魔力のイメージによるコントロールはユアンより慣れているようで、力が暴走することもなく思い通りの実験が無事に終わった。

「やっぱり、魔力を持っていない人が使うより、魔力がある人が使った方が力がましてるような気がしますわ」
「それは無意識に自分の魔力を上乗せしているのか、それとも単に魔力操作に慣れているだけか」

 後の難しい議論はアスタとローズマリーに任せると、残った四人は夕食のための薪を拾いにいったりテントを張ったり野宿するための準備を始める。
 野宿といってもテントで寝るのは男たちだけだ、さすがにお嬢様方をテントで寝かすことはできないと、ローズマリー たちが着くまでにオルレアン家の使用人たちが女性たち用に寝泊まりできるログハウスを作っておいたのだ。

 夕食はオルレアン家から持ってきた食材に加え、アレクとユアンが湖で魚を釣った。

「ユアン君なかなかうまいな」
「釣りは結構得意なんです」

 答えながらキールと昔はよく近くの川で魚釣りをしていたことを思い出す。

「いつからいかなくなったんだっけ?」

 出不精なユアンだったが、釣った魚を自分たちでその場で食べるのが好きで、魚釣りだけは誘われたら欠かさず一緒に行っていた。
 でもある時からピタリと誘いがなくなった。

(そういえば、そのあたりから異様にルナが引っ付くようになった気がするなぁ)

 そんなことを思い出していると、メアリーたちが釣った魚を取りに来た。


「先輩たちは学園を卒業したらどうするのですか?」

 夕食も終わり残り火を焚火代わりに囲みながらメアリーが尋ねた。
 
「俺は王宮魔法師なるぞ」
「僕はこのまま学園に残って魔術師の資格を取る」

 魔法学部は大きく分けると、魔力が多く攻撃魔法や治癒魔法など魔法そのものを得意とする魔法使いと、魔法に関しての知識を研究したり魔法石などを使って魔法道具を開発したりする魔術師に分かれる。

 そしてアレクは学園を卒業後は王宮魔法師などの弟子になり修行を経て王宮魔法師を目指すと言い。
 アスタは基本三年制である学園の魔術学科のみに許されている追加の二年間を使い学園に残り、魔法の研究などで魔術師の資格を得るつもりらしい。
 魔術師の資格があれば、学園の教授として生徒に教えながら一生学園で研究を続けることも、自分で魔法道具を開発販売したりもできるようになるのだ。

「じゃあ、オルレアン家は」
「ボクが継ぐつもりだよ、そのために行政学部の一般教養科をとったのだから」

 オルレアン伯はアンリが継ぐことにもう決まっているらしい。

(ならばキールは婿に入らなくてはならないということだな)

 お腹もいっぱいになり、半分眠りかけの頭でそんなことを考える。

(まあキールは騎士なら王宮騎士だろうが地方騎士だろうが気にしなさそうだし、四男なので自分の家を継ぐことはないので願ったり叶ったりかな)
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