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第二章 青春をもう一度
別荘
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「遠路はるばるようこそ!」
途中の町で一泊してからアンリ達の別荘についたのはお昼を少し過ぎたあたりだった。馬車を出迎えてくれたのは私服姿のアスタだ。
数週間合っていなかっただけなのに、なんだかまた少し大人っぽくなったきがするのはそのラフな服装のせいなのか。
「お招きいただき、ありがとうございますわ」
ローズマリーがうやうやしく淑女の礼を取る。
「いらっしゃい」
奥からアンリが走ってくる。
「アンリ先輩!!」
おもわず、ローズマリーとユアンが口元を両手で覆いうっとりとした視線でアンリを迎えた。
「綺麗です」
学園では相変わらずズボンスタイルのアンリがシンプルだが綺麗な花柄の白いワンピースを着ていたのだ。
新学期が始まってから伸ばしだした美しい銀髪ももうすぐ肩に届きな長さだ。そして、平均的な女性より幾分背も高くスタイリッシュなスタイルは制服ではわかりずらいが、女性的な柔らかな曲線を描いていた。
「あまりじろじろ見ないで欲しい」
男のような強い口調でそう突っぱねる言葉とは裏腹に、その顔は耳まで真っ赤である。それがまたなんか逆に可愛いと思えるてしまう。この場にキールがいたら、いくら鈍感でもさすがに自分の恋心に気が付くに違いない。
「アンリが綺麗なのは当たり前だろ」
フフンとアスタが鼻を鳴らす。
「ところで、あのチビ助は連れてきてないのか?」
チビ助とはルナのことである。アスタとルナは気が合うらしくよく二人で話している姿を何度か見た。そこに浮かぶ笑みは楽し気にというより、なにかよからぬ悪だくみをしているようにしか見えなのだが。
シスコンとブラコンで何か共通するものがあるのだろう。
「お前たち、来たなら早く入れ」
迎えに行ったままいつまでも屋敷に戻ってこない兄弟をアレクが面倒くさそうに呼びに来る。
「アレク先輩、お久しぶりですわ」
そう言ったままローズマリーが首をかしげる。
「何かお変わりになりましたか?」
魔法使いの癖に、無駄によく鍛えられた胸板がわかるほどピッタリとした私服。アレク曰く『強力な魔法を使うには強靭な肉体が必要』らしい。
「あっ、眼鏡!」
「あぁ、あれはもともと伊達だったから、もうやめた」
「「えー」」
ユアンとローズマリーが驚きの声を上げる。
「でもアスタとアンリは本当の眼鏡っ子だぞ」
そう言ってニカリと笑う。
「三つ子だったからそろえていたが、もうそろえる必要はなくなったからな」
そういうアレクはどこか少し寂しそうに見えた。
「おっと、ここでまた話してたら俺が迎えに来た意味がない、ほら早く入れ暑くて焼けちまうぞ」
照り付ける太陽を睨みつけるとアレクはそのままくるりと向きを変え屋敷に向かって歩き出す。
煌びやかな調度品はないけれど、必要なものはすべて揃えられ、塵一つないきれいな清潔な部屋を各自一部屋づつ与えられた。
そしてその日の夕飯時最後にメアリーが到着した。
「遅れてしまい申し訳ありません、馬車お貸しいただきありがとうございました」
メアリーは今回学園から実家へ帰り、ここに来るまでの間、ずっとオルレアン家の馬車を貸してもらっていたようだ。もちろん無償で。
なんだかんだいってオルレアン家は辺境伯としては裕福な方なのだ。
田舎貴族のメアリーの実家も娘が豪華な馬車で帰ってきてさらに休みの後半をその貴族の家で過ごすとはさぞかし驚いたことだろう。すでに年の離れた兄が領地を受け継いでいるとはいえ、嫁入り前の一人娘をよく出したものだ。それともだからだろうか。
瞳の色に合わせた爽やかなグリーンのワンピースに、つばの大きな帽子を風で飛ばされないように抑えているメアリーはアンリの成人前の娘とは思えない少し妖艶な美しさとは違い、爽やかな春の花のような愛くるしさがある。
「メアリーいらっしゃい」
「アンリ先輩!ワンピースすごく似合ってます。すごく綺麗です!」
ローズマリーたちと同じ感想をアンリを見るなり叫ぶ。アンリはまたもカッと顔をあからめると、もごもごと口を尖らしながらそっぽを向く。
男装で褒められ慣れていても、本当の姿を手放しに褒められるのにはどうも慣れてないらしい。
「メアリー嬢は食事はまだかな?」
「馬車の中で軽くいただきましたから大丈夫です」
「そうかでは今日はもう遅いし、部屋に案内するよ」
途中の町で一泊してからアンリ達の別荘についたのはお昼を少し過ぎたあたりだった。馬車を出迎えてくれたのは私服姿のアスタだ。
数週間合っていなかっただけなのに、なんだかまた少し大人っぽくなったきがするのはそのラフな服装のせいなのか。
「お招きいただき、ありがとうございますわ」
ローズマリーがうやうやしく淑女の礼を取る。
「いらっしゃい」
奥からアンリが走ってくる。
「アンリ先輩!!」
おもわず、ローズマリーとユアンが口元を両手で覆いうっとりとした視線でアンリを迎えた。
「綺麗です」
学園では相変わらずズボンスタイルのアンリがシンプルだが綺麗な花柄の白いワンピースを着ていたのだ。
新学期が始まってから伸ばしだした美しい銀髪ももうすぐ肩に届きな長さだ。そして、平均的な女性より幾分背も高くスタイリッシュなスタイルは制服ではわかりずらいが、女性的な柔らかな曲線を描いていた。
「あまりじろじろ見ないで欲しい」
男のような強い口調でそう突っぱねる言葉とは裏腹に、その顔は耳まで真っ赤である。それがまたなんか逆に可愛いと思えるてしまう。この場にキールがいたら、いくら鈍感でもさすがに自分の恋心に気が付くに違いない。
「アンリが綺麗なのは当たり前だろ」
フフンとアスタが鼻を鳴らす。
「ところで、あのチビ助は連れてきてないのか?」
チビ助とはルナのことである。アスタとルナは気が合うらしくよく二人で話している姿を何度か見た。そこに浮かぶ笑みは楽し気にというより、なにかよからぬ悪だくみをしているようにしか見えなのだが。
シスコンとブラコンで何か共通するものがあるのだろう。
「お前たち、来たなら早く入れ」
迎えに行ったままいつまでも屋敷に戻ってこない兄弟をアレクが面倒くさそうに呼びに来る。
「アレク先輩、お久しぶりですわ」
そう言ったままローズマリーが首をかしげる。
「何かお変わりになりましたか?」
魔法使いの癖に、無駄によく鍛えられた胸板がわかるほどピッタリとした私服。アレク曰く『強力な魔法を使うには強靭な肉体が必要』らしい。
「あっ、眼鏡!」
「あぁ、あれはもともと伊達だったから、もうやめた」
「「えー」」
ユアンとローズマリーが驚きの声を上げる。
「でもアスタとアンリは本当の眼鏡っ子だぞ」
そう言ってニカリと笑う。
「三つ子だったからそろえていたが、もうそろえる必要はなくなったからな」
そういうアレクはどこか少し寂しそうに見えた。
「おっと、ここでまた話してたら俺が迎えに来た意味がない、ほら早く入れ暑くて焼けちまうぞ」
照り付ける太陽を睨みつけるとアレクはそのままくるりと向きを変え屋敷に向かって歩き出す。
煌びやかな調度品はないけれど、必要なものはすべて揃えられ、塵一つないきれいな清潔な部屋を各自一部屋づつ与えられた。
そしてその日の夕飯時最後にメアリーが到着した。
「遅れてしまい申し訳ありません、馬車お貸しいただきありがとうございました」
メアリーは今回学園から実家へ帰り、ここに来るまでの間、ずっとオルレアン家の馬車を貸してもらっていたようだ。もちろん無償で。
なんだかんだいってオルレアン家は辺境伯としては裕福な方なのだ。
田舎貴族のメアリーの実家も娘が豪華な馬車で帰ってきてさらに休みの後半をその貴族の家で過ごすとはさぞかし驚いたことだろう。すでに年の離れた兄が領地を受け継いでいるとはいえ、嫁入り前の一人娘をよく出したものだ。それともだからだろうか。
瞳の色に合わせた爽やかなグリーンのワンピースに、つばの大きな帽子を風で飛ばされないように抑えているメアリーはアンリの成人前の娘とは思えない少し妖艶な美しさとは違い、爽やかな春の花のような愛くるしさがある。
「メアリーいらっしゃい」
「アンリ先輩!ワンピースすごく似合ってます。すごく綺麗です!」
ローズマリーたちと同じ感想をアンリを見るなり叫ぶ。アンリはまたもカッと顔をあからめると、もごもごと口を尖らしながらそっぽを向く。
男装で褒められ慣れていても、本当の姿を手放しに褒められるのにはどうも慣れてないらしい。
「メアリー嬢は食事はまだかな?」
「馬車の中で軽くいただきましたから大丈夫です」
「そうかでは今日はもう遅いし、部屋に案内するよ」
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