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第二章 青春をもう一度

研究と実験と青春と

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 とりあえず、ルナの入部は学園の校則通り後期に入って、他の色々なクラブを見てからもう一度決めるという話で落ち着いた。
 確かに公にまだ言えない研究だが、今いるメンバーだってそれを承知で研究を進めているのだ、ルナにも自分で決める権利はある。

「なんだよ、ユアンも結局は妹が可愛いんじゃないか」

 あれから、たまに同族を見る目でアスタに見られるが、違うとも否定しきれないので、ユアンは黙ってやりすごす。

 そのあと数回ルナは、クラブに顔を出したが、その時は魔法陣とは関係ない魔法石の魔法道具などを見たり魔力の増幅の練習などをローズマリーたちに教わったりして帰っていった。

「最近ルナちゃんこないな」
 
 ユアンの指先で石が微かに光を放つ。その様子をノートに書きいれながらアスタがユアンに話しかけた。

「一年生の課題が多くて大変みたいですよ。それに馬車のお迎えも厳しくなったみたいで」

「やはりどこの家も娘は可愛いからな、門限は厳しくてもしかたない」

 まるで父親のような言い草だが、アスタらしい。

「ルナちゃんはお前と違って本当に可愛いしな、アンリもルナちゃんと同じぐらい愛情を表現がしてくれて構わないのに」

 たぶんアスタとルナが同類なだけで、普通の妹でアンリの立場なら、表現するならばうざ過ぎて吹っ飛ばされますよとは言えない。

「……そうですね」

 ユアンからもれる光がおかしな点滅を始める。

「そういえば最近アレク先輩こないですね」
「あぁ、レイモンドと一緒に、魔法陣を復活、または法に引っかからずに使えるようにするにはどうしたらいいかあちこち走り回らせてるからな」

 アレクはわかるが、仮にもこの国の第一王子まで巻き込んでいるのか。ユアンが驚きの事実に口をあんぐり開ける。

(すでにそれが法に触れてないのだろうか)

「しかし、レイモンドがローズマリー嬢の婚約者でよかったぜ、話が早い」

 ニヤリとほくそ笑む。

「そういえば、最近アレクとメアリー嬢がいい感じなのは知ってるか?」
「えっ!?」
「お昼休み一緒に食事をしてるぞ」
「──お昼休み、食事」

 プルプルとユアンの手が震える。その隙間から光が漏れる。
 前回の人生ではユアンが座っていた席にアレクがいる。そんな想像をして激しく動揺する。

「はい、次これはさっきより、魔力こもってるから気を付けろよ、爆発するかもだから」

 そういうと、強く握りしめているユアンから魔法石を取り上げると、その手に違う魔法石を握らせて、一歩後ろに下がる。

「光魔法”輝き”」

 目をつぶりながらユアンは同じように呪文を唱える。しかし今度は石は全く反応を示さなかった。

「あれ?光魔法”輝き”」

 やはり反応がない。

「メアリー嬢、ちゃんと魔力込めた?まだコントロールできてないんじゃないか!」

 厳しい口調で少し離れた場所で、他の魔法石に魔力を込めていたメアリーを叱咤する。怒られたメアリーは、ぴょんと飛び跳ねるように立ち上がるとスミマセンと頭を下げた。

「ちょっ!」

 何かいいかえたユアンにメアリーが大丈夫だからというように、首を横に振る。アスタは全く表情を変えずに次の魔法石を渡してくる。

「じゃあ、これ」

 むかつきを飲み込みながら。

「光魔法”輝き”」と叫ぶ。

 魔法石が今までで一番明るく光を発する。

「!?ちょっと、さっきの魔法石、これと間違えたんじゃないですか」

 それを見て思わずアスタに噛みつく。

「間違えてない、それより、次」

 アスタが心外だという顔で次の魔法石を渡してくる。ユアンはアスタを睨み見つけたままそれを受け取る。
 そしてふと気配を感じて視線を上げると。いつの間に来たのか、アレクがメアリーと一緒に何かを話している姿が見えた。
 後ろを向いているメアリーの顔は見えないが、ふとさっきのアスタの言葉を思い出す。

「ほら、早く、やれ、これが今日の最後だ」
「……光魔法”輝き”」

 手の中で石がまぶしいぐらい輝いた、しかしユアンの目にはその光は入らない。

「よし、終わりだ。いいデータが取れた」

 途端にアスタがニヤリと笑う。
 そして、くるりと振り返ると「終わったよ!ごめんねーメアリー嬢!」と、わざとらしく明るく声をかける。

「えっ?」という顔をしているユアンの前に、メアリーが小走りに走ってくる。

「ユアン様ごめんなさい。アスタ先輩が怒ったのはお芝居なんです」
「えつ?」

 若草色の瞳をうるうるとさせながら、顔の前で祈るように指の組みながら謝ってくる。
 困惑顔のユアンにニヤニヤとアスタが続ける。

「なんてったって、今日は感情で魔法の出力が変わるかの実験だからな」
「!?」
「もちろんみな同じ魔力量しか入っていない」

 持っていたペンをクルクル回しながらアスタが続ける。

「一応、さっきまでの気持ちも情報と残しておきたいんだけど、ここで訊く」

 ニヤニヤとそう聞いてくる。

(嵌められた──)

 チラリとまだすまなそうな表情でユアンを見上げているメアリーを見る。
 たぶんアスタに言われるがまま行動をしていたにすぎないのだろう。

 はぁ、とため息を吐き、

「じゃあ、あれも嘘なんですね、お昼食べてるって」
「いや、あれは本当だ」
「えっ!」
「最近、マリー嬢が生徒会で忙しくて部活にもなかなか顔を出せないから、打ち合わせを食事の時一緒にしているんだ。そこにメアリーとアレクもついてきている」

 嘘はついてないだろ。そういうと、笑いを我慢するように口元を抑える。

「アスタ先輩、あなたって人は──」

 殴り飛ばしたい。そんな衝動を必死に抑える。

「なんだか、楽しそうだな」

 そこに本当にたまたま、久しぶりに顔をだしたアレクがのほほんと声をかけてくる。

「楽しくなんかありません!」

 キッとユアンに睨まれがアレクが、どうしたんだと、笑い転げているアスタと睨むユアンを交互に見比べたのだった。
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