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第二章 青春をもう一度
ユアンの妹登場
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この様子なら大丈夫だろうと帰りかけたところに、これまたよく聞きなれた声が飛び込んできた。
「お兄様!」
藍色の瞳をキラキラと煌めかせ、左右の耳より高い位置でツインテールに縛ったつややかな金髪ストレートをなびかせ、歓喜の表情でこっちに手を振りながら、小走りにユアンのもとに駆け寄ってくる一人の少女。
「ルナ──」
慌てて、隠れようとしたがもう遅い。
「ユアン様?」
ルナの声に気が付いてメアリーとローズマリーが振り返る、そこで柱に隠れる瞬間のユアンと目が合う。
ユアンは小さくため息をつくと、隠れるのを諦め仕方なく柱の陰から出てきた。
「お兄様、ルナに会いに来てくださったのですか?」
メアリーとローズマリーがルナとユアンを見比べながら、じっと次のユアンの言葉を待つ。
ここで違うと言えば、ここにいる言い訳を考えなくてはならなくなる。それよりは「ソウナンダ」とユアンは嘘を吐く。
しかしそれを聞いたルナは、はちきれんばかりに破顔すると、ガバリとユアンに抱き着いた。
「ルナもお兄様に会いたかったです」
ルナが心からそう思っているのがわかるので、ユアンは少しだけ心が痛んだ。
そうルナは自他ともに認めるブラコンである。アスタたちにあきれながらもどこかで微笑ましく親近感を覚えるしまうのはこの妹のせいだろう。
ただユアンは思う、
(僕は決してシスコンではない。ルナの幸せは願っているが、アスタ先輩みたいに誰かれ構わず排除しようとはしない)
「ユアン様の妹さんですか?確かに瞳の色がご一緒ですね」
ユアンにしがみついているルナに視線を合わせるように気持ち視線を落としてメアリーがほほ笑みかける。
ルナは洗礼式の数日前に十二歳になったばかりだった、そのうえハーリング家はみな成長期が来るのが少し遅い傾向だったので、ルナはまわりの同級生に比べるとかなり小さく幼い部類に入った。
「あなた誰?」
しかし、ルナはあからさまに警戒した目でジトリとメアリーをねめつけた。
「僕が入っている魔法道具研究倶楽部のメアリー・ベーカー嬢だよ、ルナ」
「同じクラブの人……」
「そう、そしてこちらは……」
ローズマリーのことも紹介しようとしたが、さすがに公爵令嬢のことは知っていたようで、ユアンから離れると制服の裾を持ち、優雅に淑女の礼のポーズをとる。
「初めましてローズマリー・フローレス様。ユアン・ハーリングの妹ルナと申します」
「可愛らしい妹さんね」
ローズマリーに言われ、ルナが照れたように頬を染める。それから少しモジモジと体を揺らすと、何かを決心したように顔を上げた。
「フローレス様、お願いがあるのですが」
「なにかしら?」
「ワタクシもその魔法道具研究倶楽部に遊びに行ってもよろしいでしょうか?」
「ルナ!?」
ユアンがルナの後ろで首を横に振る。それをチラリと確認したのちローズマリーは
「よろしくてよ。いつでも遊びに来て構わないわ」
と言い放った。
「ありがとうございます」
ルナは素直に喜ぶと、再び「ではまた後でお兄様」と言って抱きつくと、その場を去っていった。
「マリーさん、どうして」
「別にいいでわないですか、それともアスタ先輩のように、ユアン様も妹に男の人が近づくのがお嫌いなのかしら」
ちょっと意地悪っぽく笑う。
「そうじゃないですけど……」
妹を紹介するのが恥ずかしい。先輩たちに見せたくない。いや違う、もっと恐ろしいことがある。でももう約束してしまったものを今更取り消せない。ユアンはガクリと肩を落とすとため息をついて頭を抱えた。
「お兄様!」
藍色の瞳をキラキラと煌めかせ、左右の耳より高い位置でツインテールに縛ったつややかな金髪ストレートをなびかせ、歓喜の表情でこっちに手を振りながら、小走りにユアンのもとに駆け寄ってくる一人の少女。
「ルナ──」
慌てて、隠れようとしたがもう遅い。
「ユアン様?」
ルナの声に気が付いてメアリーとローズマリーが振り返る、そこで柱に隠れる瞬間のユアンと目が合う。
ユアンは小さくため息をつくと、隠れるのを諦め仕方なく柱の陰から出てきた。
「お兄様、ルナに会いに来てくださったのですか?」
メアリーとローズマリーがルナとユアンを見比べながら、じっと次のユアンの言葉を待つ。
ここで違うと言えば、ここにいる言い訳を考えなくてはならなくなる。それよりは「ソウナンダ」とユアンは嘘を吐く。
しかしそれを聞いたルナは、はちきれんばかりに破顔すると、ガバリとユアンに抱き着いた。
「ルナもお兄様に会いたかったです」
ルナが心からそう思っているのがわかるので、ユアンは少しだけ心が痛んだ。
そうルナは自他ともに認めるブラコンである。アスタたちにあきれながらもどこかで微笑ましく親近感を覚えるしまうのはこの妹のせいだろう。
ただユアンは思う、
(僕は決してシスコンではない。ルナの幸せは願っているが、アスタ先輩みたいに誰かれ構わず排除しようとはしない)
「ユアン様の妹さんですか?確かに瞳の色がご一緒ですね」
ユアンにしがみついているルナに視線を合わせるように気持ち視線を落としてメアリーがほほ笑みかける。
ルナは洗礼式の数日前に十二歳になったばかりだった、そのうえハーリング家はみな成長期が来るのが少し遅い傾向だったので、ルナはまわりの同級生に比べるとかなり小さく幼い部類に入った。
「あなた誰?」
しかし、ルナはあからさまに警戒した目でジトリとメアリーをねめつけた。
「僕が入っている魔法道具研究倶楽部のメアリー・ベーカー嬢だよ、ルナ」
「同じクラブの人……」
「そう、そしてこちらは……」
ローズマリーのことも紹介しようとしたが、さすがに公爵令嬢のことは知っていたようで、ユアンから離れると制服の裾を持ち、優雅に淑女の礼のポーズをとる。
「初めましてローズマリー・フローレス様。ユアン・ハーリングの妹ルナと申します」
「可愛らしい妹さんね」
ローズマリーに言われ、ルナが照れたように頬を染める。それから少しモジモジと体を揺らすと、何かを決心したように顔を上げた。
「フローレス様、お願いがあるのですが」
「なにかしら?」
「ワタクシもその魔法道具研究倶楽部に遊びに行ってもよろしいでしょうか?」
「ルナ!?」
ユアンがルナの後ろで首を横に振る。それをチラリと確認したのちローズマリーは
「よろしくてよ。いつでも遊びに来て構わないわ」
と言い放った。
「ありがとうございます」
ルナは素直に喜ぶと、再び「ではまた後でお兄様」と言って抱きつくと、その場を去っていった。
「マリーさん、どうして」
「別にいいでわないですか、それともアスタ先輩のように、ユアン様も妹に男の人が近づくのがお嫌いなのかしら」
ちょっと意地悪っぽく笑う。
「そうじゃないですけど……」
妹を紹介するのが恥ずかしい。先輩たちに見せたくない。いや違う、もっと恐ろしいことがある。でももう約束してしまったものを今更取り消せない。ユアンはガクリと肩を落とすとため息をついて頭を抱えた。
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