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第二章 青春をもう一度

告白の真相

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「そう、正確にはアスタじゃなくてアスタの振りをしたアンリがなんだけどな」

 どういうことだ?

「魔法学部の図書館に現れる美しい銀色の妖精」

(あぁ、図書館にはいつもアンリがアスタの振りをして本を借りに行っていたからな)

「で、それが気に食わないと?」

 どうせアンリがちょっかいをかけられるかもしれないというのが嫌なのだろう。

「でもアスタ先輩だと思っているのなら相手は女生徒ですよね?」

「それが、両方なんだ」

「両方?」

(まぁ、あの容姿だありえない話ではない)

 アスタも口さえ開かなければただの美少年だ。

 卒業するからと、ここぞとばかりに数人の先輩たちから告白を受けたようだ。

「今回はみなアスタが相手をしてもちろん追い払ったが、これからさき図書館でアンリに迫ってくるやつらがいると思うと」

 だよね。と他のメンバーもユアンと同じ目をしてアスタを見ていることだろう。

「アレク先輩は間違われたりしてないんですか?」
「俺?俺は最近間違われたことないな、一年の初めぐらいだけだな」

 確かに相変わらずよく似ているが、出会ってもうすぐ半年、別々の場所で会っても区別はつくぐらいには見慣れてきた。それに、三人は今年で15歳。いくら三つ子とはいっても、やはり成長に違いが謙虚に出てきている、特に男と女──

 もともと中性的な美しさで自ら兄たちに似せようとしてきたせいもあって、アンリは普段は男らしい振舞いを取っているが、少し気を抜くと、元の柔らかい優しい素顔が覗く。そのギャップが逆に妖艶な色気となってみるものを惑わしかねない魔性の女にもなっている。

 そして、アレクはすでに出会った時から少しだけ背が高かったが、この休暇中にまた一段を伸びたようで、アンリとはもう十センチほど差がある、それに胸板も厚くなり少年から青年になったという感じだ。

 アスタもアレクほどではないがアンリより少しだけ背が高くなり。髪を伸ばし紅でもつけれがそれは美しい美女ができあがるほどのいまだにどっちともとれる中性的な見た目をしているが、アレク同様声が完全に男の低さになっている。

 いくらアンリがハスキーな声で真似ても、やはりもうそこには男女の違いがはっきりと出てしまっていた。

「図書館にいるアスタがなんかどこか違うと、周りでも訝しく思っているものもでてきている」

 アレクが言った。

「だから、もうアンリもアスタの真似をして魔法学部にいかないほうがいい」
「アレクがそういうなら」

 仕方ないというように口を尖らしながらもアンリが頷く。
 どうやら話は着いたらしい。話題を変えるようにアレクがみんなに声をかける。

「あと来てないのはキール君だけだな」
「アイツも来るのかよ」
「遅れました」

 噂をすればである。
 金の縁取りが施された白いジャケットに同じく金の学園の刺繍が入った白いマント。
 キールは無事に騎士学部に入ることができようだ。
 今回の長期休暇は、騎士学部希望の生徒以外は、前期と後期の間の休みと同じく、みな実家に帰ったりするのだが、騎士学部に入る生徒に関しては、適正検査という試験があり、そこで合格をもらえないと学部を変えなくてはならないのだ。
 なので今回の休暇は、ユアンもキールと会ってはいなかった。
 久しぶりにみた幼馴染は、また一段と背が伸び、いくらか精幹な顔つきになっていた。

「アンリ先輩!お久しぶりです」
「キール君は相変わらず元気そうね」

 入ってくるなり一番にアンリに挨拶をする。アンリもそれがどうしてなのか、もううすうすわかっているのだろう、はにかみながら笑顔で返す。それをアスタが睨みつけているのももうなんだか慣れ親しんだ光景だ。

「お前は部外者だろう」
「あっ、アスタ先輩と皆さんもお久しぶりです、無事騎士学部に入学できました」

 爽やかな笑顔を振りまきながら、アスタのいつもの憎まれ口もさらりと無視できるキールの心臓は本当に強いと思う。

「皆様お揃いになりましたわね」

 場を取り仕切るようにローズマリーが立ち上がる、そしてまだ不機嫌そうなアスタの横に立つと。

「今日ここに皆様方に集まっていただきましたのわ。新しい制服を見せ合うというのも一つの目的ではありますが」

 ローズマリーが一同を見渡す。

「もう一つ。私とアスタ先輩の研究の結果、魔法石と魔法陣のことで知りえたことを、皆さんにも聞いていただき、そのことでこの先の研究をどうすることが良いのかの意見を聞いておきたいと思い集まっていただきましたわ」

 トーンを一つ落としてローズマリーがそう言った。
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