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第二章 青春をもう一度
二年生になりました。
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二年生になりました。
正式な祭典などの時に身に着ける、黒いマントととんがり帽子。
マントをはためかせるようにくるりを回ると、ふわふわの三つ編みも一緒にくるりと回る。
出会った時はユアンと同じぐらいだった身長も今ではユアンが少し高い、だから「似合いますか」と少し照れながら尋ねてくるその若草色の瞳は自然と上目遣いになる。
(似合ってます)
「可愛い……」
つい心の声を漏らしてしまったユアンに、メアリーの隣にいたローズマリーが当たり前でしょというように鼻を鳴らす。
(あっ、ローズマリーもいたんだ)とは口に出さない。
ちなみにローズマリーももちろん魔法学部の制服だ。
ユアンの前の人生の記憶では二年生になってだいぶたったころ、この制服を身にまとったローズマリーを見かけたことがあるが、美しいが儚げで近寄りがたく、黒い制服から人を睨みつける赤い目は、冷たく誰も寄せ付けないような色をしていた。
しかし、今目の前でメアリーと笑いあっているローズマリーは、この休み中確かに少しは成長はしているようだが、どこかまだ子供のような無邪気な目をキラキラさせていた。
(たぶん、一年生の時の学術祭で孤立せず、こうして気の許せる友人や先輩たちができたおかげだろう。きっとこれなら、前の時のような事件は起こらないに違いない。王太子も結構いい人そうだったし)
そんなことを一人考え、安堵感に浸る。
学園は二年生にあがると各学部へと進路が分かれる。その中でも特別な学部が、魔法学部と騎士学部。
基本の白いワイシャツと黒いズボンもしくはスカートはどの学部も同じで、ジャケットの色で各学部が分かれているのだが、魔法学部の生徒は黒いジャケットの他に正装時には黒いマントととんがり帽子が付く。
騎士は白と金で縁取りされたいジャケットと正装時にはやはりマントと腰に剣を携さえる。
前回の人生ではメアリーはユアンと同じ行政学部だったため、グレーのジャケットだった。だから今回の黒いジャケットを着たメアリーはとても新鮮で可愛らしかった。
(同じクラスになれなかったのは残念だったけど、魔女っ子メアリーが見れたことは素直にうれしい)
それに、この学園に通っているのは近隣の王族や力のある貴族が多い、それでも魔力持ちは平民でもこの学園に通える。つまり力のない地方貴族や平民はほぼ魔法学部に行くのにメアリーは行政学部に入った。そのため、二年生になってもメアリーはどこかクラスメートから浮いていた。
(だからこんな僕と仲良くしてくれていたのかもしれないが……)
ローズマリーとおそろいの制服に身を包み、明るい笑顔で笑っているメアリーを見るのは本当にうれしかったが、少し寂しくて不安でもあった。
「ところで、アンリ先輩は何かあったのですか?」
今日は新学期で皆新しい制服で正装をする数少ない日だったので、特にクラブ活動があるわけではなかったのだが、こうして部室に集まっていた。
そして、部屋の中に入るなり、なぜかアンリがどよんとした重い空気を出し、机に突っ伏していたのだ。
「ボクなにかやらかしてしまったみたい」
「なんでそう思ったんですか?」
「アスタにもう魔法学部には近寄るなって言われた」
「アスタ先輩が!」
(たぶん原因はアンリ先輩が思っていることとは違うと思うが)
「きっとなにか理由があるんですよ」
そこにちょうどアスタとアレクが入ってきた。
「ちょっと、アスタ先輩。どういうことですか?」
アスタが言いずらそうにそっぽを向く。
「こいつ告白されたんだよ」
変わってアレクが答えた。
「告白!」
正式な祭典などの時に身に着ける、黒いマントととんがり帽子。
マントをはためかせるようにくるりを回ると、ふわふわの三つ編みも一緒にくるりと回る。
出会った時はユアンと同じぐらいだった身長も今ではユアンが少し高い、だから「似合いますか」と少し照れながら尋ねてくるその若草色の瞳は自然と上目遣いになる。
(似合ってます)
「可愛い……」
つい心の声を漏らしてしまったユアンに、メアリーの隣にいたローズマリーが当たり前でしょというように鼻を鳴らす。
(あっ、ローズマリーもいたんだ)とは口に出さない。
ちなみにローズマリーももちろん魔法学部の制服だ。
ユアンの前の人生の記憶では二年生になってだいぶたったころ、この制服を身にまとったローズマリーを見かけたことがあるが、美しいが儚げで近寄りがたく、黒い制服から人を睨みつける赤い目は、冷たく誰も寄せ付けないような色をしていた。
しかし、今目の前でメアリーと笑いあっているローズマリーは、この休み中確かに少しは成長はしているようだが、どこかまだ子供のような無邪気な目をキラキラさせていた。
(たぶん、一年生の時の学術祭で孤立せず、こうして気の許せる友人や先輩たちができたおかげだろう。きっとこれなら、前の時のような事件は起こらないに違いない。王太子も結構いい人そうだったし)
そんなことを一人考え、安堵感に浸る。
学園は二年生にあがると各学部へと進路が分かれる。その中でも特別な学部が、魔法学部と騎士学部。
基本の白いワイシャツと黒いズボンもしくはスカートはどの学部も同じで、ジャケットの色で各学部が分かれているのだが、魔法学部の生徒は黒いジャケットの他に正装時には黒いマントととんがり帽子が付く。
騎士は白と金で縁取りされたいジャケットと正装時にはやはりマントと腰に剣を携さえる。
前回の人生ではメアリーはユアンと同じ行政学部だったため、グレーのジャケットだった。だから今回の黒いジャケットを着たメアリーはとても新鮮で可愛らしかった。
(同じクラスになれなかったのは残念だったけど、魔女っ子メアリーが見れたことは素直にうれしい)
それに、この学園に通っているのは近隣の王族や力のある貴族が多い、それでも魔力持ちは平民でもこの学園に通える。つまり力のない地方貴族や平民はほぼ魔法学部に行くのにメアリーは行政学部に入った。そのため、二年生になってもメアリーはどこかクラスメートから浮いていた。
(だからこんな僕と仲良くしてくれていたのかもしれないが……)
ローズマリーとおそろいの制服に身を包み、明るい笑顔で笑っているメアリーを見るのは本当にうれしかったが、少し寂しくて不安でもあった。
「ところで、アンリ先輩は何かあったのですか?」
今日は新学期で皆新しい制服で正装をする数少ない日だったので、特にクラブ活動があるわけではなかったのだが、こうして部室に集まっていた。
そして、部屋の中に入るなり、なぜかアンリがどよんとした重い空気を出し、机に突っ伏していたのだ。
「ボクなにかやらかしてしまったみたい」
「なんでそう思ったんですか?」
「アスタにもう魔法学部には近寄るなって言われた」
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(たぶん原因はアンリ先輩が思っていることとは違うと思うが)
「きっとなにか理由があるんですよ」
そこにちょうどアスタとアレクが入ってきた。
「ちょっと、アスタ先輩。どういうことですか?」
アスタが言いずらそうにそっぽを向く。
「こいつ告白されたんだよ」
変わってアレクが答えた。
「告白!」
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