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第一章 出会いからもう一度
閃きは突然に
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「おいしかったわ」
「また今度一緒にこようね、マリー、それにアンリ先輩も」
「友達とこんなところに来たのは初めてでボクも楽しかったよ」
和気あいあいと女子たちが話題に花を咲かせる中、
「ケーキを食べるアンリはまた一段と可愛いな」
「甘いのばかりよく食えるな……、次は俺がおすすめの店につれててやろう」
「今度ここのシェフを王宮に呼び寄せるか」
男どももそれなりに楽しんでいただいたようで、
(これはこれで良いのかもしれないが……)
小さくカットされたケーキを一口でパクリと口の中に放り込みながら、ユアンは心の中で涙した。
(僕の初デートが……)
「さあ、もうそろそろ時間かな」
最後にジュースをズズズと飲み干す。ふとコップの下にひかれていたコースターが目に入る。
コップの底に合わせて丸く切り取られた厚紙に、店のマークと宣伝文句が円に沿って描かれている。
(なんか最近どこかで見たような……)
「魔法陣みたいだな」
ユアンが記憶を思い出しぼそりと呟いた。
刹那、端に座っているはずのローズマリーがギュンと音がしそうな勢いでユアンを見た。
いやユアンというより、ユアンが何気なく手に持ち眺めているコースターを。
「それですわ!」
立ち上がるやいなや、コースターを指さすと興奮したように叫ぶ。
まわりの全員があっけにとられローズマリーを見ている中、アスタだけがハッとしたようにやはりバンと机を叩いて勢いよく立ち上がると、ローズマリーと目と目で会話する。そして、
「アレク頼む!」
アレクは心得たとばかりに、立ち上がる。
「レイ、そしてローズマリー嬢失礼します」
言うが早いか、ローズマリーをお姫様抱っこで抱き上げる。そしてそのまま、店をアスタと3人で出ていった。
「──!」
あっけにとられてただ阿呆のように三人が出ていった扉を見ている三人に、アンリが、
「すみません。どうやら、新しい魔法石の実験方法が思いついたみたいで、三人は部室に行きました」
「アレクとアスタは風魔法”疾走”が使えるので、ご無礼だとは思いましたが、ローズマリー様をあのように運ばせていただきました。すみません」
深々とローズマリーの婚約者に頭を下げる。
「嫁入り前の娘をあのように抱きかかえて、婚約者の前から去れっていくとは、不敬に値するが」
一瞬、その場が水を打ったように静まりかえったが、
「まぁ、あの様子だと彼女も望んでの行動のようだ。それに今ここにいるのは単なる”レイ”だから、なにも言うまい」
そう言って笑顔を見せる。三人がほっと胸を撫でおろす。
「じゃあ、ボクたちも帰ろうか」
店を出ると、アンリは「もう今日はこのまま、家に帰るよ」と、ユアンたちと別れた。
レイモンドは、(王宮までの)帰り道だから馬車で学園まで送ると申し出てくれたが、メアリーは「街で少し買い物をしてから帰りたいので、大丈夫です」と、丁寧に断わった。
もちろんユアンも王太子と二人なんてありえないので、自分が彼女を無事に送り届けるのでと言ってレイモンドには先にお帰りいただいた。
まぁ、本当はメアリーと二人になるまたとないチャンスを逃すわけにはいかないという思惑もあったが。
「また今度一緒にこようね、マリー、それにアンリ先輩も」
「友達とこんなところに来たのは初めてでボクも楽しかったよ」
和気あいあいと女子たちが話題に花を咲かせる中、
「ケーキを食べるアンリはまた一段と可愛いな」
「甘いのばかりよく食えるな……、次は俺がおすすめの店につれててやろう」
「今度ここのシェフを王宮に呼び寄せるか」
男どももそれなりに楽しんでいただいたようで、
(これはこれで良いのかもしれないが……)
小さくカットされたケーキを一口でパクリと口の中に放り込みながら、ユアンは心の中で涙した。
(僕の初デートが……)
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最後にジュースをズズズと飲み干す。ふとコップの下にひかれていたコースターが目に入る。
コップの底に合わせて丸く切り取られた厚紙に、店のマークと宣伝文句が円に沿って描かれている。
(なんか最近どこかで見たような……)
「魔法陣みたいだな」
ユアンが記憶を思い出しぼそりと呟いた。
刹那、端に座っているはずのローズマリーがギュンと音がしそうな勢いでユアンを見た。
いやユアンというより、ユアンが何気なく手に持ち眺めているコースターを。
「それですわ!」
立ち上がるやいなや、コースターを指さすと興奮したように叫ぶ。
まわりの全員があっけにとられローズマリーを見ている中、アスタだけがハッとしたようにやはりバンと机を叩いて勢いよく立ち上がると、ローズマリーと目と目で会話する。そして、
「アレク頼む!」
アレクは心得たとばかりに、立ち上がる。
「レイ、そしてローズマリー嬢失礼します」
言うが早いか、ローズマリーをお姫様抱っこで抱き上げる。そしてそのまま、店をアスタと3人で出ていった。
「──!」
あっけにとられてただ阿呆のように三人が出ていった扉を見ている三人に、アンリが、
「すみません。どうやら、新しい魔法石の実験方法が思いついたみたいで、三人は部室に行きました」
「アレクとアスタは風魔法”疾走”が使えるので、ご無礼だとは思いましたが、ローズマリー様をあのように運ばせていただきました。すみません」
深々とローズマリーの婚約者に頭を下げる。
「嫁入り前の娘をあのように抱きかかえて、婚約者の前から去れっていくとは、不敬に値するが」
一瞬、その場が水を打ったように静まりかえったが、
「まぁ、あの様子だと彼女も望んでの行動のようだ。それに今ここにいるのは単なる”レイ”だから、なにも言うまい」
そう言って笑顔を見せる。三人がほっと胸を撫でおろす。
「じゃあ、ボクたちも帰ろうか」
店を出ると、アンリは「もう今日はこのまま、家に帰るよ」と、ユアンたちと別れた。
レイモンドは、(王宮までの)帰り道だから馬車で学園まで送ると申し出てくれたが、メアリーは「街で少し買い物をしてから帰りたいので、大丈夫です」と、丁寧に断わった。
もちろんユアンも王太子と二人なんてありえないので、自分が彼女を無事に送り届けるのでと言ってレイモンドには先にお帰りいただいた。
まぁ、本当はメアリーと二人になるまたとないチャンスを逃すわけにはいかないという思惑もあったが。
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