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第一章 出会いからもう一度
デートとは……
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デートとはなんぞや。
フルーツ、ケーキ、サラダにパンも加え、季節ごとに展開されるフードメニューを取り揃え、街の女生たちから今一番行きたいお店として有名な店”ストロベリーハウス”。
いつも街の若い娘や、果てはお忍びで来ている貴族令嬢やご婦人たちで賑わう店内が、今日はいつにもまして異常な熱気に満ちていた。
しかしその乙女たちの熱い視線は、美味しそうなケーキに向けられたものではなく、ある一つのテーブルに集中していた。
「あの、メアリーさん、これはいったい……」
「すみません、マリーに声を掛けたら、いつの間にか」
ずいぶんあっさり承諾したかと思っていたら、メアリーの中では、初めからケーキバイキングにはローズマリーを含め3人で行くと思っていたらしい、まあそれは百歩譲って、二人でと念を押さなかったユアンの落ち度であり、そもそもデートだといっていないのだから勘違いされてもしかたがない。
(でも普通、わざわざ二人の時に誘ったら察してくれないものだろうか……)
そういえばうちの奥さん少し天然だったかも。そんなことを今更ながら思い出しそんな勘違いすら可愛いと思わず微笑む。
まあ、それはそれで仕方ないとして。それでももう一度自分の置かれている現状を確認する。
「でどうなったら、こんな大所帯に……」
二十人ほどでいっぱいになるお店の約三分の一を陣取った席で、周りの視線が痛い。
まあ前の人生の「あのデブじゃまだな」という視線でないのはありがたいが。
(このテーブルは異常だ)
今も昔も可愛い天使のメアリー。しかし彼女と二人ならこんなに目立ちはしない。
おかしいのは残りの五人。言わずものがな、黙っていればまさに名画から飛び出したといわんばかりに美しい、男とも女とも見分けがつかない中性的な美の三つ子に、まだ幼さがあるとはいえ、人目を引き付ける公爵令嬢。そしてどうして紛れ込んできたのか、本来なら煌めく金髪を今は茶髪のかつらで隠してはいるものの、その整った顔と宝石のような碧眼。隠しても隠し切れない品性と風格とカリスマオーラダダ洩れの、この国の第一王子レイモンド・フーブル。
「メアリーさん、彼は……」
「マリーの婚約者の方です、私も今日初めてお会いしました」
ニコリとほほ笑む。多分メアリーはその婚約者がこの国の王太子だとは夢にも思っていないのだろう。
なぜこんなことになっているかというと。
メアリーがローズマリーを誘った時に、それを近くでアンリが聞いていたらしく、アンリも前々から帰り道にいつも行列ができているこの店に行きたかったということで参加を希望、アンリが行くならもちろんアスタもついてくるわけで、二人が行くならアレクも──。
ここですでにデートではなく、単なるクラブ活動の打ち上げ会の模様を擁してきたが、そこで学術祭でユアンが気にしていたことをふと思い出したメアリーはローズマリーがクラブメンバーとはいえ、学園外で男性たちと食事に行ったなんて噂がたってはまずいのではと思い、ローズマリーにそのことを聞いてみたところ。
「なら、私の婚約者の許可を得ればいいのですね」
そして許可を得るだけでなく、ご本人が付いて来た。そんな経緯だった。
「初めまして、君のことは、マリーから常々聞いているよ」
「お初にお目にかかります──」
「敬語はよしてくれ、正体を隠しているのだから、そうだな、私のことは”レイ先輩”とでも呼んでくれ」
ニコリとほほ笑む。
「ケーキ適当にとってきますわね」
「俺は、甘くないもので頼むわ」
「アレクは自分でとりなさい」
気が付くと女性陣三人とアスタはすでにケーキを取りに席を立っている、アンリに頼もうとしたアレクはそう返され、やれやれとケーキのテーブルとは別に、パンやパスタなど甘くないものが並べられているテーブルに向かう。
そうして席に残ったのはユアンとレイモンド王太子のみとなった。慌ててユアンも立ち上がろうとしたが、レイモンドが話かけてきたのでそのタイミングを逃してしまった。
フルーツ、ケーキ、サラダにパンも加え、季節ごとに展開されるフードメニューを取り揃え、街の女生たちから今一番行きたいお店として有名な店”ストロベリーハウス”。
いつも街の若い娘や、果てはお忍びで来ている貴族令嬢やご婦人たちで賑わう店内が、今日はいつにもまして異常な熱気に満ちていた。
しかしその乙女たちの熱い視線は、美味しそうなケーキに向けられたものではなく、ある一つのテーブルに集中していた。
「あの、メアリーさん、これはいったい……」
「すみません、マリーに声を掛けたら、いつの間にか」
ずいぶんあっさり承諾したかと思っていたら、メアリーの中では、初めからケーキバイキングにはローズマリーを含め3人で行くと思っていたらしい、まあそれは百歩譲って、二人でと念を押さなかったユアンの落ち度であり、そもそもデートだといっていないのだから勘違いされてもしかたがない。
(でも普通、わざわざ二人の時に誘ったら察してくれないものだろうか……)
そういえばうちの奥さん少し天然だったかも。そんなことを今更ながら思い出しそんな勘違いすら可愛いと思わず微笑む。
まあ、それはそれで仕方ないとして。それでももう一度自分の置かれている現状を確認する。
「でどうなったら、こんな大所帯に……」
二十人ほどでいっぱいになるお店の約三分の一を陣取った席で、周りの視線が痛い。
まあ前の人生の「あのデブじゃまだな」という視線でないのはありがたいが。
(このテーブルは異常だ)
今も昔も可愛い天使のメアリー。しかし彼女と二人ならこんなに目立ちはしない。
おかしいのは残りの五人。言わずものがな、黙っていればまさに名画から飛び出したといわんばかりに美しい、男とも女とも見分けがつかない中性的な美の三つ子に、まだ幼さがあるとはいえ、人目を引き付ける公爵令嬢。そしてどうして紛れ込んできたのか、本来なら煌めく金髪を今は茶髪のかつらで隠してはいるものの、その整った顔と宝石のような碧眼。隠しても隠し切れない品性と風格とカリスマオーラダダ洩れの、この国の第一王子レイモンド・フーブル。
「メアリーさん、彼は……」
「マリーの婚約者の方です、私も今日初めてお会いしました」
ニコリとほほ笑む。多分メアリーはその婚約者がこの国の王太子だとは夢にも思っていないのだろう。
なぜこんなことになっているかというと。
メアリーがローズマリーを誘った時に、それを近くでアンリが聞いていたらしく、アンリも前々から帰り道にいつも行列ができているこの店に行きたかったということで参加を希望、アンリが行くならもちろんアスタもついてくるわけで、二人が行くならアレクも──。
ここですでにデートではなく、単なるクラブ活動の打ち上げ会の模様を擁してきたが、そこで学術祭でユアンが気にしていたことをふと思い出したメアリーはローズマリーがクラブメンバーとはいえ、学園外で男性たちと食事に行ったなんて噂がたってはまずいのではと思い、ローズマリーにそのことを聞いてみたところ。
「なら、私の婚約者の許可を得ればいいのですね」
そして許可を得るだけでなく、ご本人が付いて来た。そんな経緯だった。
「初めまして、君のことは、マリーから常々聞いているよ」
「お初にお目にかかります──」
「敬語はよしてくれ、正体を隠しているのだから、そうだな、私のことは”レイ先輩”とでも呼んでくれ」
ニコリとほほ笑む。
「ケーキ適当にとってきますわね」
「俺は、甘くないもので頼むわ」
「アレクは自分でとりなさい」
気が付くと女性陣三人とアスタはすでにケーキを取りに席を立っている、アンリに頼もうとしたアレクはそう返され、やれやれとケーキのテーブルとは別に、パンやパスタなど甘くないものが並べられているテーブルに向かう。
そうして席に残ったのはユアンとレイモンド王太子のみとなった。慌ててユアンも立ち上がろうとしたが、レイモンドが話かけてきたのでそのタイミングを逃してしまった。
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