【完結】二度目の人生、君ともう一度!〜彼女を守りたいだけなのに〜

トト

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第一章 出会いからもう一度

新入部員歓迎会

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「おいおい、今日は新入部員歓迎会だと言うのに、いきなり遅刻か」

 あの後ダラダラと教授に怒られたせいでユアンは見事、クラブ活動初日を大幅に遅刻するはめになった。

 まぁ怒りたくなる気持ちもわかる。いつもほとんど寝てるくせに試験の成績は悪くないのでどの教授たちも、叱るに叱ることもできなかったのだ。しかし今回は授業中おかしな行動をとっていたので、他の生徒に対する授業妨害としてここぞとばかり今までの積もりに積もった鬱憤をぶつけてきたのだろう。

「とりあえず、全員そろったところで、まずは自己紹介と行こうか」

 そういうと、アレク、アスタ、アンリがさらりとこの間と同じような紹介をする。ただ付け足すなら。

「俺たちは三人は<心の絆>というギフトを持っている」
「どのようなギフトですの?」
「簡単に言えばお互い声に出さなくても会話することができる、テレパシー能力だ」
「私たちのこともわかるのですか?」
「いや、この能力が使えるのは俺たち三人の間だけだ」

「それでもなんだかすごいですわね」とメアリーとローズマリーが話している。

 ユアンだけはそれを聞いて一人合点が行ったという顔をしていた。出会った時から、やたら独り言が多かったり、この間アンリが突然怒って飛び出したりしたのは、きっとそのギフトを使って三人だけで会話をしていたせいだったのだろう。

「じゃあ、次は一年生」

 ではまず私からと、金髪のポニーテールを揺らしてローズマリーが立ち上がる。

「ローズマリー・フローレスですわ。魔力属性は火ですわ」

 指をマッチ棒に見立てるように中指の上に小さな炎を作り出す。それをみたユアンが一瞬体を強張らす。

「5メートル位先にある丸太を消し炭にする程度の能力ですわ」

(それって、結構強力なのでは)

 魔法についてはあまり知らないが、ユアンはローズマリーは怒らせてはいけないと理解した。

 次にふわふわの栗色の髪を三つ編みに背中に垂らしたメアリーが立ち上がる。
 その時ユアンと目と目が合った。
 ニコリと微笑むメアリー。

(可愛い)

 思わず心の声が漏れそうになるのを必死にこらえた。

「メアリー・ベーカーです。魔力属性は光(聖)です。聖系魔法は小動物の擦り傷を塞ぐ程度の回復魔法です。あと光系魔法は、暗闇の中で手をかざしたところでどうにか本が読める程度の光をだすことができます」

 そういうと彼女の手ががかすかに光を帯びる。
 普通の光属性の魔法使いなら、そこに光の玉を作り出し、数時間はあたりを明るく照らせるらしいが、メアリーにそこまでの魔力はない。

 それでも魔力が少ないことに引け目を感じて、人に見せるのを恥ずかしがっていたメアリーが、今回の生ではこうして人前で披露できるようになったのは、すごい成長だとユアンは思った。

(色々変わったけど、メアリーが前向きで今が幸せならそれでいい)

 最後にユアンが立ち上がる。

「ユアン・ハーリングです。魔力はありません。最近筋肉がついてきたので、荷物運びなどあったらいってください」

 自己紹介をしながら改めて思う。自分は本当に魔力も、キールのような剣術もなにもない一般貴族だなと。アスタが言うように、自分にできることは、被験者として役立つぐらいなのかもしれない。

「さて、自己紹介も終わったことだし、今から俺たちがこのクラブを立ち上げてからの半年間の成果を一応みせておこう」

 そういうと近くに置いてあった無色の魔法石を一つ手に取る。そうしてこの間見せてくれたように魔力を込めるとそれをアンリに手渡した。

「風魔法”そよ風”」

 アンリがそうつぶやくと。アンリの手から部屋の中に、サーと風が吹き抜けた。

「これは!」

 ローズマリーが目を見開く。

「ちょっと、落ち着いて、まだ説明しなくてはならないことがあるから」

 アレクはそういうと、同じように今度は魔力が込められた魔法石をユアンの前に置いた。

「ユアン君、同じようにやってみてくれ」

(早速被験者としての初任務か)

「風魔法”そよ風”」

 アンリと同じように、魔法石を手に持ち呟く。
 しかしユアンからはまったく風が吹いてくる気配はなかった。

「?」
「あれ?風魔法”そよ風”!」

 何度やっても何も起きない。

「やっぱりな」

 アスタが口を開く。

「わかったと思うが、魔法石が本人以外に反応することはまだできない」
「でもアンリ先輩が……」
「アンリと僕たちはさっきも話した通り、テレパシーで繋がっている。今僕たちがわかっている結論から言うと、アンリがただ呪文を唱えたところで、この魔法石は何の反応も示さない、しかし魔力込めたアレクがアンリに合わせて言葉を頭の中に送れば魔法は発動する」
「それって──」

「そう、要するに、僕たち三人の中だけで有効なことで、さらに言えば結局は魔力を込めた本人が発動しているのと変わりないということだ」
「なら」
「そう、まだ研究はなに一つ進んでいない。ただテレパシーが使えれば、魔力を持っていてもいなくてもその人物の魔法石は使えるということが、今日までの僕らの成果だ」

(偉そうに言ったが、それってなにもできていないのでは。だって世の中にいったい何人そんな特別なギフトを持っているというのだ……)

 これは予想以上に先は長いのかもしれない。ユアンは昨日までのなんとかなりそうだと思っていたものが崩れる気がして軽くめまいを覚えたのだった。
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