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第一章 出会いからもう一度

未来の発明

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  魔法石による街灯の設置。それは画期的かつ歴史に残る発明品の1つだ。

 フーブル王国初の魔法石を使った初の街灯は、街と港の中心にある噴水横に設置されることになる。
 その開会式を、ユアンとメアリーも一緒に観に行った。

 普段はいたずら防止のために、ちゃんとした役員にしか反応しないよう設定されているそれも、その日だけは誰にでも反応するようにできていた。そしてその第一号は平民から選ばれた魔力のない女の子。
 その子が「火魔法”灯《ともしび》”」そう言うと、街灯の中の魔法石が夕闇の中明るく輝いた。
 それを見た群衆たちは大きな歓声を上げた、それから長い列ができ、みんな明かりをつけたり消したりしたものだ。

(しかしもうこのころから既に、ローズマリーが魔法石を使った明かりの発案をしていたなんて)

 街灯の設置は今からおよそ8年後だ。

(そういえば、僕の知っている街灯は光魔法ではなく、火の魔法を閉じ込めたものだったな。だから火が暴走して火事にならないよう魔力を閉じ込めるのが大変だったと、新聞のインタビュー記事で読んだ気がする)

 ローズマリーは火属性の魔力持ちだ、それに今ある明かりと言えば蝋燭に火をつけたものか、灯油ランプぐらいなものなので、火を使うという発想は至極当然だったのだろう、だが今回はメアリーと出会ったことで、光魔法で作ることを思いついたに違いない。

 光魔法の明かりなら、熱もないし、火事になる心配もないから、もしや前の歴史より早く発明品も完成するかもしれない。それに火を使わないのはユアンにとっては願ったり叶ったりである。

 ユアンはそこまで考えて、一人興奮を抑えられないというように、足をばたつかせた。

 魔力がない人間にも魔法石を使えるようにするなど、とても大変な研究だったに違いない。
 仕組みについてユアンも分かっていればよかったのだが、それは企業秘密で新聞にも載っていなかった。

(でも、光魔法の存在を知ってすぐに火より光の方が向いているのではと発想を変えれる柔軟性、自分とメアリーも入ったから、同好会もクラブに昇格したから研究の経費だって学園側から降りるはず)

 前の歴史がどうだったのかはわからないが、きっと今回の方が色々よい方向に進んでいるはずだ。

「人体実験でも何でも、僕が手伝うことで、少しでも早く研究が進むなら」

 少し前までは、ただメアリーと自分のためだけに生きていくつもりだった。だがいま目の前に、未来をより良いほうに変えれるかもしれない道を見つけてしまったのだ。手伝わないわけにはいかない。
 それにこの発明の発展によっては、将来ユアンも自宅を火事で失うこともなくなるかもしれない。これは巡り巡って自分の為ともいえる。

(はぁ。なんだか色々変わりすぎて、遠回りはしているけど、大丈夫だよな)

 まあ、来年まで待たずして、メアリーと同じ時間を過ごす大義名分もできたし。良いことだと思っておこう。

 しかしまさかローズマリーが街灯の発案者だったとは。なぜ気が付かなかったのだろう。
 新聞にはローズマリーの名前なんか載っていなかったはずだ。
 さすがに同級生それも嫌いな人物だったとはいえ、ローズマリーみたいな有名人が発案者なら載っていれば気が付くだろうし、公爵令嬢が発案者など、新聞が騒ぎ立ててもおかしくないはず。

 そこまで考えて、ユアンの動きが止まった。

「いやその逆だ! ローズマリーが発案者だったから名前を載せられなかったのだ──!」

 たどり着いた答えに顔から血の気が引く。
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