【完結】二度目の人生、君ともう一度!〜彼女を守りたいだけなのに〜

トト

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第一章 出会いからもう一度

魔具研へようこそ

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「そうだお前たちは後輩だ、学園では身分は関係ないが、上下関係は大切だ。だから僕たちのことはちゃんとアスタ先輩、アンリ先輩と呼ぶように」

 いままで出かけていたのか、帰ってくるなりアスタは素早くキールとアンリの間に割って入りそう宣言した。

「ところでハーリング卿はもう心は決まったのかな」
「いや、そういうわけでは」

 ユアンが笑ってごまかす。

「ちなみに彼女たちは君たちの連れかい?」

 そこではじめてメアリーとローズマリーの存在に気が付いたようだ。

(本当にこの兄は、妹のことしか目に入っていないようだ)

「いや、たまたまここで会ったんです」
「おお、それじゃあ、見学ですか? それとも入部希望?」
 
 さっきまで虫でも見るような目つきで男たちを睨みつけていた顔が、うそのようにぱっと天使の微笑みにかわる。

「その前に1つご質問させていただきます」

 そういうと、ローズマリーは一枚の紙をアスタとアンリの前に突きだした。

「ここに魔力のない方も歓迎と書いてありますが、これはどういうことですか?」

 あれは昨日ユアンが押し付けられた勧誘用紙だ。

「そのままです」

 ニコリとアスタがほほ笑む。

「僕たちが目指しているのは魔法使いのためだけの道具ではなく、魔力のない一般の方でも使える魔法道具の発明なのです」

 確かにそれも嘘ではない。でもユアンは知ってしまっている。
 魔力のないメンバーをアスタは人体実験に使いたいということを……。

「そう例えば風魔法を詰め込んだ魔法石が誰にでも使えるようになれば。風のない日魔法使いがいなくても風車を回せるようになるし。砂漠地帯に水の魔法石を置いておくだけで、みんなが水を飲めるようになる。そんな魔法道具を作るための研究してるのです」

 アンリがアスタの言葉を引き継ぐ。
 きっと彼女は本当にそう望んでいるのだろ、その目はキラキラと輝いていて、キールがすっかり見とれているのは仕方ないことだった。

「すばらしいですわ、まさに私が求めていたことですわ」

 ローズマリーも瞳を輝かせる。

「私も魔法石を生活の中で活用できないか、常々考えていたのですわ」

 アンリに一歩近づくと、自分の考えを力説し始める。

「そう例えば光の魔法使いたちが使うあの明かりの魔法、あれを魔法石に閉じ込めて、いつでも誰でも自由に使えるようになれば、暗闇の中、危ない蝋燭の火で作業する事がなくなると思いませんか?」
「確かに、蝋燭の火での作業は危険と隣り合わせですからね。でも蝋燭の変わりとなると、魔法石もそれなりの大きさということですか、そうすると魔力の量もあまり溜めれないですね、あと個人で使うには魔法石自体が高いことが問題です」
「そんな事は100も承知ですわ、私としては個人使用が理想ですが、そうですわね、まずは街の街灯などでしたらどうでしょう」

 ローズマリーの提案に、アンリがなるほどと頷く。

「──!?」

 二人のやり取りを聞いてたユアンは、驚きと興奮でただ立ち尽くしていた。

(あーなんてことだろう、僕がアドバイスすればなんて。まるで未来の命運をかけた舵を握っているなんて少しでも思っていたことが恥ずかしい)

 ユアンが何もしなくても、こうやって世界は進んでいくのだ。

 ──”魔法石による街灯”の発明。

 これがこの先の未来で発表されることになる発明品である。
 そして、ユアンが見出した一途の希望の光ともいえる発明品。この発明品がもっと早くにできていれば、あの悪夢のような出来事が起こる可能性がなくなるかもしれない。

「私決めました、ここに入部させていただきますわ」

 声高らかにローズマリーが宣言する。

(僕は今歴史が大きくその一方踏み出す瞬間に立ち会っているに違いない)

「あの私も、魔力はほとんどありませんが、フローレス様の──あっ、」

 ローズマリーに睨まれ慌てて言い直す。

「マリーの話を聞いて、すごく感動しました。私なんかお二人みたいな素晴らしいアイデアも思いつかないし、なんの役にも立たないかもしれませんが、でもなにかお手伝いさせてください」

 話ながらその頬が、興奮のためかバラ色に染まっていく。

「だから私も、マリーと一緒に入部します」
「メアリー!」
  
  ローズマリーががっちりとメアリーの手を自分の両手で包む。

「ありがとう。でもあなたはなにか勘違いしているわ。私はあなたの光魔法を見て、街灯を思いついたのよ。だからあなたがいなければダメなの。たとえあなたがそう言わなくても私はあなたを無理やりにでも誘っていたわ」

 ローズマリーとメアリーがお互いに見詰めあいながらほほ笑む。

(な、なに!!)

 なんだかとても良い雰囲気になっているところだが、ユアンは内心それどころではなかった。
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