【完結】二度目の人生、君ともう一度!〜彼女を守りたいだけなのに〜

トト

文字の大きさ
上 下
38 / 147
第一章 出会いからもう一度

魔具研へようこそ

しおりを挟む
「そうだお前たちは後輩だ、学園では身分は関係ないが、上下関係は大切だ。だから僕たちのことはちゃんとアスタ先輩、アンリ先輩と呼ぶように」

 いままで出かけていたのか、帰ってくるなりアスタは素早くキールとアンリの間に割って入りそう宣言した。

「ところでハーリング卿はもう心は決まったのかな」
「いや、そういうわけでは」

 ユアンが笑ってごまかす。

「ちなみに彼女たちは君たちの連れかい?」

 そこではじめてメアリーとローズマリーの存在に気が付いたようだ。

(本当にこの兄は、妹のことしか目に入っていないようだ)

「いや、たまたまここで会ったんです」
「おお、それじゃあ、見学ですか? それとも入部希望?」
 
 さっきまで虫でも見るような目つきで男たちを睨みつけていた顔が、うそのようにぱっと天使の微笑みにかわる。

「その前に1つご質問させていただきます」

 そういうと、ローズマリーは一枚の紙をアスタとアンリの前に突きだした。

「ここに魔力のない方も歓迎と書いてありますが、これはどういうことですか?」

 あれは昨日ユアンが押し付けられた勧誘用紙だ。

「そのままです」

 ニコリとアスタがほほ笑む。

「僕たちが目指しているのは魔法使いのためだけの道具ではなく、魔力のない一般の方でも使える魔法道具の発明なのです」

 確かにそれも嘘ではない。でもユアンは知ってしまっている。
 魔力のないメンバーをアスタは人体実験に使いたいということを……。

「そう例えば風魔法を詰め込んだ魔法石が誰にでも使えるようになれば。風のない日魔法使いがいなくても風車を回せるようになるし。砂漠地帯に水の魔法石を置いておくだけで、みんなが水を飲めるようになる。そんな魔法道具を作るための研究してるのです」

 アンリがアスタの言葉を引き継ぐ。
 きっと彼女は本当にそう望んでいるのだろ、その目はキラキラと輝いていて、キールがすっかり見とれているのは仕方ないことだった。

「すばらしいですわ、まさに私が求めていたことですわ」

 ローズマリーも瞳を輝かせる。

「私も魔法石を生活の中で活用できないか、常々考えていたのですわ」

 アンリに一歩近づくと、自分の考えを力説し始める。

「そう例えば光の魔法使いたちが使うあの明かりの魔法、あれを魔法石に閉じ込めて、いつでも誰でも自由に使えるようになれば、暗闇の中、危ない蝋燭の火で作業する事がなくなると思いませんか?」
「確かに、蝋燭の火での作業は危険と隣り合わせですからね。でも蝋燭の変わりとなると、魔法石もそれなりの大きさということですか、そうすると魔力の量もあまり溜めれないですね、あと個人で使うには魔法石自体が高いことが問題です」
「そんな事は100も承知ですわ、私としては個人使用が理想ですが、そうですわね、まずは街の街灯などでしたらどうでしょう」

 ローズマリーの提案に、アンリがなるほどと頷く。

「──!?」

 二人のやり取りを聞いてたユアンは、驚きと興奮でただ立ち尽くしていた。

(あーなんてことだろう、僕がアドバイスすればなんて。まるで未来の命運をかけた舵を握っているなんて少しでも思っていたことが恥ずかしい)

 ユアンが何もしなくても、こうやって世界は進んでいくのだ。

 ──”魔法石による街灯”の発明。

 これがこの先の未来で発表されることになる発明品である。
 そして、ユアンが見出した一途の希望の光ともいえる発明品。この発明品がもっと早くにできていれば、あの悪夢のような出来事が起こる可能性がなくなるかもしれない。

「私決めました、ここに入部させていただきますわ」

 声高らかにローズマリーが宣言する。

(僕は今歴史が大きくその一方踏み出す瞬間に立ち会っているに違いない)

「あの私も、魔力はほとんどありませんが、フローレス様の──あっ、」

 ローズマリーに睨まれ慌てて言い直す。

「マリーの話を聞いて、すごく感動しました。私なんかお二人みたいな素晴らしいアイデアも思いつかないし、なんの役にも立たないかもしれませんが、でもなにかお手伝いさせてください」

 話ながらその頬が、興奮のためかバラ色に染まっていく。

「だから私も、マリーと一緒に入部します」
「メアリー!」
  
  ローズマリーががっちりとメアリーの手を自分の両手で包む。

「ありがとう。でもあなたはなにか勘違いしているわ。私はあなたの光魔法を見て、街灯を思いついたのよ。だからあなたがいなければダメなの。たとえあなたがそう言わなくても私はあなたを無理やりにでも誘っていたわ」

 ローズマリーとメアリーがお互いに見詰めあいながらほほ笑む。

(な、なに!!)

 なんだかとても良い雰囲気になっているところだが、ユアンは内心それどころではなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。 そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。 婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。 どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。 実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。 それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。 これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。 ☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

処理中です...