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第一章 出会いからもう一度
それは一つのターニングポイント
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──夢を見た。
寮の窓から眼前に広がる田園風景、その先には活気に満ちた街や港が見える。
夕焼けが海を真っ赤に染めていく。しかしその赤色は海だけでなく港や街にも広がって、そして気づけばのどかだった風景は、燃え盛る炎に飲み込まれていた。
「──!!」
ユアンの声にならない叫び声に、隣でぐっすりと寝むっていたキールが飛び起きた。
「ど、どうした!?」
シーツがぐっしょりと湿るほどの汗。
「……大丈夫……ただの夢だ…………」
「びっくりさせるなよ」
それを聞いて、キールが重い瞼をこすりながら再び布団に潜り込む。
一人暗闇の残されたユアンは、まだ小さく震えている体を抱きしめた。
「夢だ、これは夢だ……」
自分にいい聞かすように何度も呟く。
そうして学術祭2日目の朝は開けた。
※ ※ ※
「あれ、また来たんだ」
歓迎してるのかそうでないのかわからない笑顔を貼り付けながら、三つ子の次男であるアスタが入ってきたユアンにそう言った。
「今日は一人?」
「ちょっと確認したいことがありまして」
本来ならクラスの出し物の手伝いで裏方に徹してる時間だったが、宣伝係に頼んで変わってもらったのだ。
「だからそんな、看板胸から下げてるんだ」
「サボるわけにはいかないですからね」
「こんな人が滅多にこないとこで、宣伝って」
鼻で笑われる。
(いちいち突っかかてくるな、この人は。でも今日はキールがいないせいか、睨みつけてはこないな、やはり、シスコンか)
心の中で悪態をつく。
「魔法石の研究はどこまで進んでるんですか?」
「なに、興味持っちゃったの」
ニヤニヤと聞き返すアスタに、素気なくユアンは続けた。
「本当に特別な契約もなしに、魔力がない人でも魔法が使えたりするんですか?」
チラリとアスタの表情を窺う。
「知りたい? でも関係者でもない人に教えるのはなぁ」
アスタはアスタで、チラリとユアンを見ながら勿体ぶったようにそうかえした。
「でも僕たちは魔力のないアンリさんが魔法を使うのをみたんですよ。今更……」
「まぁそうだよね。でもそれは、僕たちが三つ子だから……かもしれないだろ」
まだ何か秘密があるのか、少し含んだような言い方をする。
「えっ、……」
ユアンの残念そうな表情を見て、アスタが首を横に振った。
「まあ、そうがっかりするな。本当のところまだ僕たちもよくわからないんだよ」
アスタが肩をすくめる。
「実験は成功したのか。それともアンリだから使えたのか。ただ僕はアンリさえ魔法が使えるようになったのなら、それはそれで成功といってもいいんだけどね。そもそもこの研究を始めたのは、三人の中でアンリだけ魔法が使えないのがかわいそうだっただけだし」
さらりと言う。
「でも、アンリはそうじゃない、本当にみんなが魔法が使えるようになったらいいと思ってる。本当に優しい子だよ」
アレクはどういうつもりかわからないけど。と付け加える。
「そうだ。ねっ、キミは魔力ないよね」
眼鏡の奥でその紫色の瞳が怪しく輝いた。
「ユアン・ハーリング君、キミ僕らのモル、協力者になるきない」
視線が空中で絡み合う、背筋にぞくりとした寒気が走った。
(──っ! 今、モルモットって言おうとしただろ)
「そしたら、この実験が本当に成功しているのか、それとも僕らだけの絆の力のなせる業なのかがわかるじゃないか」
ニコニコとアレクが続ける。
「世のため人のためとかはどうでもいいけど、僕の考えた研究が本当に成功しているかどうかは僕も気になるところだし、キミもこの研究に興味があるんでしょ、これはフィフティフィフティの取引じゃないかな」
(いや、どう考えても僕が苦労する未来しか見えないが)
しかしとも思う。
(僕が協力すれば、あの発明が早まるかもしれない)
「わかった」と返事をしようとアレクの顔をみた瞬間、言いかけた言葉を飲み込んだ。本能が警鐘を鳴らす。
(──絶対、ヤバいやつだ。それに本当にこんな偶然あるのか、もしかした他のところでも同じような研究は行われていて、そっちが僕の知る発明品を作るかもしれないじゃないか)
「一度考えさせてください」
ユアンはそう言い残すと早足に小屋を後にした。
寮の窓から眼前に広がる田園風景、その先には活気に満ちた街や港が見える。
夕焼けが海を真っ赤に染めていく。しかしその赤色は海だけでなく港や街にも広がって、そして気づけばのどかだった風景は、燃え盛る炎に飲み込まれていた。
「──!!」
ユアンの声にならない叫び声に、隣でぐっすりと寝むっていたキールが飛び起きた。
「ど、どうした!?」
シーツがぐっしょりと湿るほどの汗。
「……大丈夫……ただの夢だ…………」
「びっくりさせるなよ」
それを聞いて、キールが重い瞼をこすりながら再び布団に潜り込む。
一人暗闇の残されたユアンは、まだ小さく震えている体を抱きしめた。
「夢だ、これは夢だ……」
自分にいい聞かすように何度も呟く。
そうして学術祭2日目の朝は開けた。
※ ※ ※
「あれ、また来たんだ」
歓迎してるのかそうでないのかわからない笑顔を貼り付けながら、三つ子の次男であるアスタが入ってきたユアンにそう言った。
「今日は一人?」
「ちょっと確認したいことがありまして」
本来ならクラスの出し物の手伝いで裏方に徹してる時間だったが、宣伝係に頼んで変わってもらったのだ。
「だからそんな、看板胸から下げてるんだ」
「サボるわけにはいかないですからね」
「こんな人が滅多にこないとこで、宣伝って」
鼻で笑われる。
(いちいち突っかかてくるな、この人は。でも今日はキールがいないせいか、睨みつけてはこないな、やはり、シスコンか)
心の中で悪態をつく。
「魔法石の研究はどこまで進んでるんですか?」
「なに、興味持っちゃったの」
ニヤニヤと聞き返すアスタに、素気なくユアンは続けた。
「本当に特別な契約もなしに、魔力がない人でも魔法が使えたりするんですか?」
チラリとアスタの表情を窺う。
「知りたい? でも関係者でもない人に教えるのはなぁ」
アスタはアスタで、チラリとユアンを見ながら勿体ぶったようにそうかえした。
「でも僕たちは魔力のないアンリさんが魔法を使うのをみたんですよ。今更……」
「まぁそうだよね。でもそれは、僕たちが三つ子だから……かもしれないだろ」
まだ何か秘密があるのか、少し含んだような言い方をする。
「えっ、……」
ユアンの残念そうな表情を見て、アスタが首を横に振った。
「まあ、そうがっかりするな。本当のところまだ僕たちもよくわからないんだよ」
アスタが肩をすくめる。
「実験は成功したのか。それともアンリだから使えたのか。ただ僕はアンリさえ魔法が使えるようになったのなら、それはそれで成功といってもいいんだけどね。そもそもこの研究を始めたのは、三人の中でアンリだけ魔法が使えないのがかわいそうだっただけだし」
さらりと言う。
「でも、アンリはそうじゃない、本当にみんなが魔法が使えるようになったらいいと思ってる。本当に優しい子だよ」
アレクはどういうつもりかわからないけど。と付け加える。
「そうだ。ねっ、キミは魔力ないよね」
眼鏡の奥でその紫色の瞳が怪しく輝いた。
「ユアン・ハーリング君、キミ僕らのモル、協力者になるきない」
視線が空中で絡み合う、背筋にぞくりとした寒気が走った。
(──っ! 今、モルモットって言おうとしただろ)
「そしたら、この実験が本当に成功しているのか、それとも僕らだけの絆の力のなせる業なのかがわかるじゃないか」
ニコニコとアレクが続ける。
「世のため人のためとかはどうでもいいけど、僕の考えた研究が本当に成功しているかどうかは僕も気になるところだし、キミもこの研究に興味があるんでしょ、これはフィフティフィフティの取引じゃないかな」
(いや、どう考えても僕が苦労する未来しか見えないが)
しかしとも思う。
(僕が協力すれば、あの発明が早まるかもしれない)
「わかった」と返事をしようとアレクの顔をみた瞬間、言いかけた言葉を飲み込んだ。本能が警鐘を鳴らす。
(──絶対、ヤバいやつだ。それに本当にこんな偶然あるのか、もしかした他のところでも同じような研究は行われていて、そっちが僕の知る発明品を作るかもしれないじゃないか)
「一度考えさせてください」
ユアンはそう言い残すと早足に小屋を後にした。
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