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第一章 出会いからもう一度
恋は突然に
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「はぁ」
寮の部屋につくなり、ユアンはひときわ大きなため息をつくとベッドにそのままダイブする。
あまりに色々な事柄がおきたので、まだ頭がうまく整理できていない。
「で、どうしてキールは僕に彼女を探していることを言ってくれなかったの?」
とりあえず、文句を言う。色々わからないことも整理がついてないことも多すぎるのだが、とりあえず帰り道に思ったことは、キールはどうやら彼女に一目ぼれしたんじゃないかという思い。
決闘を申し込む以外でキールが誰かを探し回るなど有り得ないことだ。そうでなくてもキールは男を探していたのではなく女の子だとわかったうえで探していたのだがから、もう他に理由はないだろう。
ただキール本人は、なぜそんな衝動に駆られたのかいまだに見当がついていないようなのだが。
「いや、俺だっていおうとしたさ、でもユアンが後で聞くって……」
「…………あぁ、それは確かに……ごめん」
(そうだった、キールが怪我をしなかったと安心してから、すっかりキールのことはそっちのけで、メアリーをいかに学術祭に誘うかばかり考えていたっけ)
ユアンがペコリと素直に謝る。それから、キールがまだ気が付いていない自分自身の恋心を指摘するべきかどうかしばらく思案する。
前の人生から思い返してもキールから色恋の話は聞いたことがない。自称恋人たちはちょこちょこと現れたが、キールが誰に対しても分け隔てなく接していたので全員勘違いか妄想であった。では、今回のこれはなんなのか、実はユアンの勘違いなのか?
そう思って、今一度アンリとの出会いの場面を思い出す。
今回は二人で買い出しにいったがすべての荷物はユアンが持たされていた。その荷物は前回の人生ではキールが持っていたことになる。
初めにユアンが男たちに突き飛ばされそうになったのをキールが助けてくれたが、もしキール一人であの大量の荷物をもっている状態だったら、いくら鍛えているキールとはいえぶつかって倒れたかもしれない。それで怪我をした。
またはそれをうまく避けたとして、今回のようにキールが彼女を追いかけていたとしても、大量の荷物を持ったままだ、いくら足に自信があるキールでも彼女が魔法を使った瞬間にあの場所にたどりついてしまい、風に吹っ飛ばされて怪我をしたのかもしれない。
そのどちらの場合でもキールはアンリの姿をちゃんと見れていないだろう、みたとしても彼女の逃げていく後姿、そのため前の人生では恋に落ちることはなかったのかもしれない。
ユアンの想像はほぼ確信に近いものに変わっていた。たとえ違くても遠からずだろう。そして今回キールは出会ってしまったのだ、たった一人の運命の人に。
(あのキールが恋をした)
これは幼馴染として、唯一の親友として、ぜひとも応援してあげたい。
──でも……。
ふと頭をよぎる、あの癖がすごすぎる兄ふたりの顔。
(なんだかんだいっていたが、あれは完全なるシスコンだ)
たどり着いた結論にため息が漏れる。
ユアンにも妹はいるが妹に男友達を紹介されたってあんな態度は決してとらないだろうと思う。
別に妹が嫌いなわけではない、たぶんそれが普通の兄弟だ。
ただ、うちの妹も少し変わっているところがあるので、アスタやアレクの過保護っぷりが多少異常だとは感じても気持ち悪いとは思わない。むしろ愛情が深いのだなと親近感がわく。
だが、それが障害となって幼馴染に及ぶのは少し頭が痛い問題であるが。
「なぁ、キール」
「ん?」
「いや、なんでもない」
ごろりと仰向けになり天井を見上げる。
キールの初恋は前途多難そうだ。そしてもう一つ。気がかりなことがあった。
「もし僕の考えてる通りなら……」
ユアンは静かに目を閉じた。
瞼の奥で、赤い炎がゆらりと揺れたきがした。
寮の部屋につくなり、ユアンはひときわ大きなため息をつくとベッドにそのままダイブする。
あまりに色々な事柄がおきたので、まだ頭がうまく整理できていない。
「で、どうしてキールは僕に彼女を探していることを言ってくれなかったの?」
とりあえず、文句を言う。色々わからないことも整理がついてないことも多すぎるのだが、とりあえず帰り道に思ったことは、キールはどうやら彼女に一目ぼれしたんじゃないかという思い。
決闘を申し込む以外でキールが誰かを探し回るなど有り得ないことだ。そうでなくてもキールは男を探していたのではなく女の子だとわかったうえで探していたのだがから、もう他に理由はないだろう。
ただキール本人は、なぜそんな衝動に駆られたのかいまだに見当がついていないようなのだが。
「いや、俺だっていおうとしたさ、でもユアンが後で聞くって……」
「…………あぁ、それは確かに……ごめん」
(そうだった、キールが怪我をしなかったと安心してから、すっかりキールのことはそっちのけで、メアリーをいかに学術祭に誘うかばかり考えていたっけ)
ユアンがペコリと素直に謝る。それから、キールがまだ気が付いていない自分自身の恋心を指摘するべきかどうかしばらく思案する。
前の人生から思い返してもキールから色恋の話は聞いたことがない。自称恋人たちはちょこちょこと現れたが、キールが誰に対しても分け隔てなく接していたので全員勘違いか妄想であった。では、今回のこれはなんなのか、実はユアンの勘違いなのか?
そう思って、今一度アンリとの出会いの場面を思い出す。
今回は二人で買い出しにいったがすべての荷物はユアンが持たされていた。その荷物は前回の人生ではキールが持っていたことになる。
初めにユアンが男たちに突き飛ばされそうになったのをキールが助けてくれたが、もしキール一人であの大量の荷物をもっている状態だったら、いくら鍛えているキールとはいえぶつかって倒れたかもしれない。それで怪我をした。
またはそれをうまく避けたとして、今回のようにキールが彼女を追いかけていたとしても、大量の荷物を持ったままだ、いくら足に自信があるキールでも彼女が魔法を使った瞬間にあの場所にたどりついてしまい、風に吹っ飛ばされて怪我をしたのかもしれない。
そのどちらの場合でもキールはアンリの姿をちゃんと見れていないだろう、みたとしても彼女の逃げていく後姿、そのため前の人生では恋に落ちることはなかったのかもしれない。
ユアンの想像はほぼ確信に近いものに変わっていた。たとえ違くても遠からずだろう。そして今回キールは出会ってしまったのだ、たった一人の運命の人に。
(あのキールが恋をした)
これは幼馴染として、唯一の親友として、ぜひとも応援してあげたい。
──でも……。
ふと頭をよぎる、あの癖がすごすぎる兄ふたりの顔。
(なんだかんだいっていたが、あれは完全なるシスコンだ)
たどり着いた結論にため息が漏れる。
ユアンにも妹はいるが妹に男友達を紹介されたってあんな態度は決してとらないだろうと思う。
別に妹が嫌いなわけではない、たぶんそれが普通の兄弟だ。
ただ、うちの妹も少し変わっているところがあるので、アスタやアレクの過保護っぷりが多少異常だとは感じても気持ち悪いとは思わない。むしろ愛情が深いのだなと親近感がわく。
だが、それが障害となって幼馴染に及ぶのは少し頭が痛い問題であるが。
「なぁ、キール」
「ん?」
「いや、なんでもない」
ごろりと仰向けになり天井を見上げる。
キールの初恋は前途多難そうだ。そしてもう一つ。気がかりなことがあった。
「もし僕の考えてる通りなら……」
ユアンは静かに目を閉じた。
瞼の奥で、赤い炎がゆらりと揺れたきがした。
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