【完結】二度目の人生、君ともう一度!〜彼女を守りたいだけなのに〜

トト

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第一章 出会いからもう一度

里親探し

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「そういうわけで、誰か猫飼ってくれそうな人知らないか」

 寮長が同室者がいいと言うならと、あっさり許可をおろしてくれたので、ユアンはそのまま子猫を部屋に連れこんだ。
 できればキールの家に引き取ってもらいたかったが、既に大型犬が六匹もいるところに、こんな小さな子猫は危険だと断られた。

「明日みんなに聞いてみるよ」
「ありがとうキール」

  キールのその一言で全てが解決した気分だった。

 ── 数日後

「あら話には聞いていましたが、本当に小さいのね」

  少し冷たささえ感じる凛とした声音で、メアリーの腕の中に抱かれた子猫を見るなり、彼女はそう言い放った。

(なぜよりにもよって彼女なんだ)

 ローズマリー・フローレス公爵令嬢。真っ赤な瞳に睨み付けられ、ユアンは子猫のように気が縮こまる気持ちだった。
 いままで関わり合いを避けてきたと言うのに。思わずキールを睨み付ける、しかしキールはなぜにらまれたかわからずキョトンとした顔をする。
 確かに今回はキールにローズマリーの愚痴はこぼしていない。クラスも違うのだから、キールが分かるわけがない。逆になんでクラスが違うのにキールの呼びかけに彼女がここにいるのかが不思議である。

「学食で里親になってくれそうな人に片っ端から声をかけてたら、彼女が名乗りをあげてくれたんだよ」
「そうなんだ」

 キールに耳打ちされる。

「あのローズマリーさん、この子の事よろしくお願いします」

 メアリーが深々と頭を下げるのを見て、ローズマリーがフンと鼻を鳴らす。

「安心してくださって結構ですわ。これでも私、今まで何匹もの猫ちゃんを里子に出したことがあるんですわよ」

 そして自信ありげに胸に手を置いて、声高らかにそう言った。

「フローレス邸で飼ってくださるわけでは無いのですか?」
「フローレス邸ではございませんわ。市街地の一角に私どもが経営する猫カフェなるものがありますの、そこでしっかり面倒を見ながら里親を探してみせますわ、ちなみに猫カフェというのは──」

 猫カフェの説明をしようとするローズマリーの手を、メアリーががっしりとつかむ。

「えっ、あの猫カフェ、フローレス家の店だったのですか?」
「えぇ、そうよ」

 キラキラした目でメアリーに手を握られたローズマリーは、めずらしくぎこちなく返事を返した。

「こんな可愛い、子猫ならすぐに里親は見つかりますわよ」

 少し頬を高揚させながら、言い放つと「大船に乗った気でいて下さい」と言わんばかりキラリと目を光らす。

 ユアンはローズマリーのことを傲慢で冷たい女だと思っていたが、メアリーの純粋な目にドギマギする様子や、子猫に向ける、その笑みに、今まで勝手に抱いてきたローズマリーの氷のようなイメージが溶けていくような気がした。

 そういえば大体ユアン言うことなら何でも肯定してくれるキールが、ローズマリーのことに関しては、否定的だったことを思い出す。

(キールは、ローズマリーにこんな一面があることを知っていたのかもしれない)

「今度よかったら、お店に来るとよろしくってよ」
「本当ですか。うれしいです」

 メアリーがローズマリーに子猫を引き渡しながら、名残惜しそうに、頭を撫ぜる。
 ローズマリーもどこまでも上から目線な言いっぷりだったが、子猫に向けられるその赤い瞳には、優しい暖かな光が見て取れた。
 それを子猫も感じたのだろう、ローズマリーに抱かれてもされるがまま体を預ける。

「なかなか、お利口さんのようね」

 それに応えるようにニャーと鳴いた。
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