21 / 147
第一章 出会いからもう一度
里親探し
しおりを挟む
「そういうわけで、誰か猫飼ってくれそうな人知らないか」
寮長が同室者がいいと言うならと、あっさり許可をおろしてくれたので、ユアンはそのまま子猫を部屋に連れこんだ。
できればキールの家に引き取ってもらいたかったが、既に大型犬が六匹もいるところに、こんな小さな子猫は危険だと断られた。
「明日みんなに聞いてみるよ」
「ありがとうキール」
キールのその一言で全てが解決した気分だった。
── 数日後
「あら話には聞いていましたが、本当に小さいのね」
少し冷たささえ感じる凛とした声音で、メアリーの腕の中に抱かれた子猫を見るなり、彼女はそう言い放った。
(なぜよりにもよって彼女なんだ)
ローズマリー・フローレス公爵令嬢。真っ赤な瞳に睨み付けられ、ユアンは子猫のように気が縮こまる気持ちだった。
いままで関わり合いを避けてきたと言うのに。思わずキールを睨み付ける、しかしキールはなぜにらまれたかわからずキョトンとした顔をする。
確かに今回はキールにローズマリーの愚痴はこぼしていない。クラスも違うのだから、キールが分かるわけがない。逆になんでクラスが違うのにキールの呼びかけに彼女がここにいるのかが不思議である。
「学食で里親になってくれそうな人に片っ端から声をかけてたら、彼女が名乗りをあげてくれたんだよ」
「そうなんだ」
キールに耳打ちされる。
「あのローズマリーさん、この子の事よろしくお願いします」
メアリーが深々と頭を下げるのを見て、ローズマリーがフンと鼻を鳴らす。
「安心してくださって結構ですわ。これでも私、今まで何匹もの猫ちゃんを里子に出したことがあるんですわよ」
そして自信ありげに胸に手を置いて、声高らかにそう言った。
「フローレス邸で飼ってくださるわけでは無いのですか?」
「フローレス邸ではございませんわ。市街地の一角に私どもが経営する猫カフェなるものがありますの、そこでしっかり面倒を見ながら里親を探してみせますわ、ちなみに猫カフェというのは──」
猫カフェの説明をしようとするローズマリーの手を、メアリーががっしりとつかむ。
「えっ、あの猫カフェ、フローレス家の店だったのですか?」
「えぇ、そうよ」
キラキラした目でメアリーに手を握られたローズマリーは、めずらしくぎこちなく返事を返した。
「こんな可愛い、子猫ならすぐに里親は見つかりますわよ」
少し頬を高揚させながら、言い放つと「大船に乗った気でいて下さい」と言わんばかりキラリと目を光らす。
ユアンはローズマリーのことを傲慢で冷たい女だと思っていたが、メアリーの純粋な目にドギマギする様子や、子猫に向ける、その笑みに、今まで勝手に抱いてきたローズマリーの氷のようなイメージが溶けていくような気がした。
そういえば大体ユアン言うことなら何でも肯定してくれるキールが、ローズマリーのことに関しては、否定的だったことを思い出す。
(キールは、ローズマリーにこんな一面があることを知っていたのかもしれない)
「今度よかったら、お店に来るとよろしくってよ」
「本当ですか。うれしいです」
メアリーがローズマリーに子猫を引き渡しながら、名残惜しそうに、頭を撫ぜる。
ローズマリーもどこまでも上から目線な言いっぷりだったが、子猫に向けられるその赤い瞳には、優しい暖かな光が見て取れた。
それを子猫も感じたのだろう、ローズマリーに抱かれてもされるがまま体を預ける。
「なかなか、お利口さんのようね」
それに応えるようにニャーと鳴いた。
寮長が同室者がいいと言うならと、あっさり許可をおろしてくれたので、ユアンはそのまま子猫を部屋に連れこんだ。
できればキールの家に引き取ってもらいたかったが、既に大型犬が六匹もいるところに、こんな小さな子猫は危険だと断られた。
「明日みんなに聞いてみるよ」
「ありがとうキール」
キールのその一言で全てが解決した気分だった。
── 数日後
「あら話には聞いていましたが、本当に小さいのね」
少し冷たささえ感じる凛とした声音で、メアリーの腕の中に抱かれた子猫を見るなり、彼女はそう言い放った。
(なぜよりにもよって彼女なんだ)
ローズマリー・フローレス公爵令嬢。真っ赤な瞳に睨み付けられ、ユアンは子猫のように気が縮こまる気持ちだった。
いままで関わり合いを避けてきたと言うのに。思わずキールを睨み付ける、しかしキールはなぜにらまれたかわからずキョトンとした顔をする。
確かに今回はキールにローズマリーの愚痴はこぼしていない。クラスも違うのだから、キールが分かるわけがない。逆になんでクラスが違うのにキールの呼びかけに彼女がここにいるのかが不思議である。
「学食で里親になってくれそうな人に片っ端から声をかけてたら、彼女が名乗りをあげてくれたんだよ」
「そうなんだ」
キールに耳打ちされる。
「あのローズマリーさん、この子の事よろしくお願いします」
メアリーが深々と頭を下げるのを見て、ローズマリーがフンと鼻を鳴らす。
「安心してくださって結構ですわ。これでも私、今まで何匹もの猫ちゃんを里子に出したことがあるんですわよ」
そして自信ありげに胸に手を置いて、声高らかにそう言った。
「フローレス邸で飼ってくださるわけでは無いのですか?」
「フローレス邸ではございませんわ。市街地の一角に私どもが経営する猫カフェなるものがありますの、そこでしっかり面倒を見ながら里親を探してみせますわ、ちなみに猫カフェというのは──」
猫カフェの説明をしようとするローズマリーの手を、メアリーががっしりとつかむ。
「えっ、あの猫カフェ、フローレス家の店だったのですか?」
「えぇ、そうよ」
キラキラした目でメアリーに手を握られたローズマリーは、めずらしくぎこちなく返事を返した。
「こんな可愛い、子猫ならすぐに里親は見つかりますわよ」
少し頬を高揚させながら、言い放つと「大船に乗った気でいて下さい」と言わんばかりキラリと目を光らす。
ユアンはローズマリーのことを傲慢で冷たい女だと思っていたが、メアリーの純粋な目にドギマギする様子や、子猫に向ける、その笑みに、今まで勝手に抱いてきたローズマリーの氷のようなイメージが溶けていくような気がした。
そういえば大体ユアン言うことなら何でも肯定してくれるキールが、ローズマリーのことに関しては、否定的だったことを思い出す。
(キールは、ローズマリーにこんな一面があることを知っていたのかもしれない)
「今度よかったら、お店に来るとよろしくってよ」
「本当ですか。うれしいです」
メアリーがローズマリーに子猫を引き渡しながら、名残惜しそうに、頭を撫ぜる。
ローズマリーもどこまでも上から目線な言いっぷりだったが、子猫に向けられるその赤い瞳には、優しい暖かな光が見て取れた。
それを子猫も感じたのだろう、ローズマリーに抱かれてもされるがまま体を預ける。
「なかなか、お利口さんのようね」
それに応えるようにニャーと鳴いた。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
転生キッズの魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。
辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)
水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――
乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】!
★★
乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ!
★★
この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる
アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。
自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。
魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。
しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。
前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。
「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」

森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ どこーーーー
ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど
安全が確保されてたらの話だよそれは
犬のお散歩してたはずなのに
何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。
何だか10歳になったっぽいし
あらら
初めて書くので拙いですがよろしくお願いします
あと、こうだったら良いなー
だらけなので、ご都合主義でしかありません。。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる