【完結】二度目の人生、君ともう一度!〜彼女を守りたいだけなのに〜

トト

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第一章 出会いからもう一度

貿易船がやってくる

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 入学から2ヶ月。生徒たちも学園に慣れてきて、授業中も私語で怒られる生徒たちも出てくる時期。
 遠く海を渡った東の小さな国から、この国に初めての貿易船がやってくる。
 学園は朝からその話題で持ちきりだった。

「ハーリング様も行かれますの?」
「はい、掃除が終わり次第行く予定です」
「まあ、がんばってください」

 手を振りつつ声をかけてきた女生徒を見送る。
 前の人生ではユアンに気軽に声をかける生徒もいなければ、ユアンから仲良くしようとすることもなかった。
 だが、今回は違う、ユアンはこの日のために、クラスメートとそれなりに仲良くなる努力をしてきた。

 ダイエットの成果で、見た目が標準になったおかげで、容姿をバカにしてくる生徒もいないし、入学式当日に、ローズマリーに恥をかかせなかったせいか、変なちょっかいをだしてくる生徒もいない。
 掃除を一人押し付けられることを回避するための、”クラスメートと仲良くなろう作戦”は成功したようだった。

「じゃあ、ユアンまたな」
「あーまた明日」

 そして掃除当番全員で、さっさと掃除を終わらすと、教室をでた。

「よし、行ける。今回はまだ余裕だ」

 門をくぐりユアンは一人ガッツポーズとった。

「待ってね、メアリー。今度こそ君に会いに行くよ」

 鼻歌交じりにユアンは港へと向かった。

※ ※ ※

 今朝早くに着いた貿易船に、既に港から市街地に伸びる大通りは、お祭りのような賑わいを見せている。
 初めてみる東の国の品物は、陳列される前に箱の中から売れていく。じっくり品定めする時間もない。
 この光景が2度目のユアンでさえ、そのむせ返るような陽気と街の人たちの活気にあてられへんな高揚感を帯びてくる。

 そんな中でやたら男たちばかりが群がった店があった。
 東洋の騎士たちが戦いの時に着用すると言われる、甲冑なるものを扱っている店だ。
 そこに見知った顔を見つける。

「中に刃がおさまっています。"刀"というものでございます」
「剣みたいなものか」

 刀を手に取り、店主となにやら話して込んでいるのはキールだった。
 声をかけようか迷ったが、

「メアリーとすれ違いになるわけにはいかない」

 学園には数日前から通っているのを既に確認済みだったが、今日の出会いのために声をかけるのを我慢しているのだ。
 今日は何としても、良い印象を彼女に与えなくてはならない。
 そのために努力してきたし、作戦も練って来たのだ。
 こんなところでキールにかまって場合ではないのだ。
 
「しかし、こんなに露店がでていたとは」

 前は団子屋に一目散に向かい、帰りはメアリーからもらった団子を夢心地で食べながら帰ったから、他の店のことなど見えてなかったようだ。

「よし、まずは」

 ユアンは早足に目的の店に向かった。
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