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第一章 出会いからもう一度
授業は余裕でも彼女はいない
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「なぜだ!」
入学から早一ヶ月。
偶然の出会いを期待して、学園を挟んで両サイドにある男子寮と女子寮の周りを朝と夕のランニングコースにしているというのに、メアリーどころか女生徒にすら出会わない。
(まぁ確かに、こんな朝っぱらから走っているのは、騎士学部の男子生徒ぐらいか)
「ユアン、だいぶさまになって来たな」
すでに周回多いキールが追い抜きざまに声をかけていく。
※ ※ ※
「ユアン・ハーリング、答えなさい」
「──よって2πrです」
「……よろしい」
朝からランニングをして学園に行くので、午前中はほとんどユアンは夢の中である。
それでも一度受けた授業なので、教授にさされてもそつなく答えることができてしまう。
不機嫌そうに授業を再開する教授をしりめに、目が覚めてしまったユアンは授業とは違うことを考える。
(本当に入学してるのだろうか?)
全てのクラスを覗いてみたが彼女が見当たらない。
「メアリー、君は一体どこにいるんだ……」
ハァと大きくため息をついたので、また教授に睨まれてしまった。
午前中の授業も終わり、学食をチビチビ食べながらため息をつくていると、いつの間にかキールが近くに立っていた。
「なにしけた面で食べてるんだよ」
ランニングだけでなく剣のトレーニングもこなしてているキールだが、そんなのトレーニングのうちにもはいらないのか、いつもと変わらず爽やかな笑顔のままユアンの前の席に座る。
「ユアンの食欲ない姿、初めて見た」
珍しい虫でも発見したように興味深々に見つめる。
「朝からあれだけ走れば、食欲も失せるよ」
「そうか? 俺は逆に腹が減るけどな」
かと思えば、励ましのつもりか「これ好きだろ」と自分の皿から唐揚げを1つユアンのお皿に投げ入れる。
「ユアンもだいぶ引き締まって来たし、今度違う訓練も初めて見ないか」
「えぇ」
確かに鍛えたいと頼んだのは自分だが、朝夕のランニングでもまだいっぱいいっぱいなのに、これ以上はまだ……。
そう言いかけたのだが、
「俺のクラス午後は鍛錬だから、もう行くわ」
キールは残り全部口にかっこむと、足早にその場を去っていった。
(相変わらず嵐のような男だな)
思わず口元が綻ぶ。
「あの」
声に反応して顔をあげた先には、同じクラスの女生徒が二人立っていた。
入学から早一ヶ月。
偶然の出会いを期待して、学園を挟んで両サイドにある男子寮と女子寮の周りを朝と夕のランニングコースにしているというのに、メアリーどころか女生徒にすら出会わない。
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※ ※ ※
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「──よって2πrです」
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朝からランニングをして学園に行くので、午前中はほとんどユアンは夢の中である。
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不機嫌そうに授業を再開する教授をしりめに、目が覚めてしまったユアンは授業とは違うことを考える。
(本当に入学してるのだろうか?)
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「メアリー、君は一体どこにいるんだ……」
ハァと大きくため息をついたので、また教授に睨まれてしまった。
午前中の授業も終わり、学食をチビチビ食べながらため息をつくていると、いつの間にかキールが近くに立っていた。
「なにしけた面で食べてるんだよ」
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かと思えば、励ましのつもりか「これ好きだろ」と自分の皿から唐揚げを1つユアンのお皿に投げ入れる。
「ユアンもだいぶ引き締まって来たし、今度違う訓練も初めて見ないか」
「えぇ」
確かに鍛えたいと頼んだのは自分だが、朝夕のランニングでもまだいっぱいいっぱいなのに、これ以上はまだ……。
そう言いかけたのだが、
「俺のクラス午後は鍛錬だから、もう行くわ」
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