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第一章 出会いからもう一度
二度目の学園生活スタートです
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ユアンは鏡の前に立ち仕立てられたばかりの制服に袖を通す。
あれから1ヵ月。欠かすことなく朝夕キールとランニングをしたおかげか、自称ぽっちゃりではなく、一般人的感覚のぽっちゃり位までには体重を減らすことができた。
制服もダイエット前に採寸していたので、先週慌ててウエスト周りを一回り小さく仕立て直してもらった。
「よし、待っててね、メアリー」
鏡に向かって気合を入れる。
フーブル王国。高い山々の絶壁を背に扇状になだらかに広がる台地に海と山の両方を持つ豊かな王国。
王宮は山の絶壁を削りながら長い年月をかけて作られ、その前に広がる丘には貴族の屋敷が立ち並ぶ、そして緩やかに下っていく草原の先にユアンたちが通う学校はあり、またさらに下っていくと、放牧地や田園風景が広がり、平民たちの住む市街地、港へと続く。
ユアンは学園に着くまで馬車に揺られながら、ぼんやりそんな風景を見つめていた。
「──!!」
刹那。
一瞬目の前が真っ赤に染まる幻影を見て、ユアンは口元を押さえる。
「坊ちゃん着きましたよ。あれ、酔われましたか?」
馬車な中で真っ青になっているユアンに、御者が慌てた様子で声をかける。
「いや、大丈夫」
心配かけまいと無理に笑顔を作る。
「じゃあ行ってくる」
御者の心配気な視線を感じながら、ユアンはフーブル学園の門を潜った。
懐かしいというのはおかしいかもしれないが、二度目の学園生活のスタートである。
フーブル学園。国で唯一魔法学部があるので、王族や近くに住む貴族だけでなく、魔力や特別なギフトを持つものなら辺境貴族や平民も通う事が許されていた。
1クラス60人ほどで 1年生は8クラス。1年生は魔力の有無に関係なくクラス分けされる。
まずは一通り基礎科目を習得したのち、選択科目を選び、それらをふまえ2年生から各専門学部へ別れていく。
メアリーとは2年生で同じ学部のクラスになるのでこの教室にはいない。
「早くメアリーに会いたいな」
それでも同じ学園内にいるとわかっているので、期待を胸に朝早くから門の前をうろちょろしていたのだが、先生に早く入るよう促され結局会えず仕舞いに終わった。
落胆しながらしぶしぶ教室に入る。教壇を1番下に階段状に上へと広がる扇状の教室。ユアンはとりあえずその一番廊下側の真ん中より数段下の段あたりの席に座った。そしてそのまま机に突っ伏す。
「今日から寮生活か」
放課後メアリーを探しに行きたいところだが
「荷物も整理しないと出しな」
今頃寮の部屋に届いているだろう荷物を思いあきらめる。
その時何やら生徒たちがざわめきだす気配を感じユアンは顔をあげた。
あれから1ヵ月。欠かすことなく朝夕キールとランニングをしたおかげか、自称ぽっちゃりではなく、一般人的感覚のぽっちゃり位までには体重を減らすことができた。
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「よし、待っててね、メアリー」
鏡に向かって気合を入れる。
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王宮は山の絶壁を削りながら長い年月をかけて作られ、その前に広がる丘には貴族の屋敷が立ち並ぶ、そして緩やかに下っていく草原の先にユアンたちが通う学校はあり、またさらに下っていくと、放牧地や田園風景が広がり、平民たちの住む市街地、港へと続く。
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「──!!」
刹那。
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「坊ちゃん着きましたよ。あれ、酔われましたか?」
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「いや、大丈夫」
心配かけまいと無理に笑顔を作る。
「じゃあ行ってくる」
御者の心配気な視線を感じながら、ユアンはフーブル学園の門を潜った。
懐かしいというのはおかしいかもしれないが、二度目の学園生活のスタートである。
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まずは一通り基礎科目を習得したのち、選択科目を選び、それらをふまえ2年生から各専門学部へ別れていく。
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「早くメアリーに会いたいな」
それでも同じ学園内にいるとわかっているので、期待を胸に朝早くから門の前をうろちょろしていたのだが、先生に早く入るよう促され結局会えず仕舞いに終わった。
落胆しながらしぶしぶ教室に入る。教壇を1番下に階段状に上へと広がる扇状の教室。ユアンはとりあえずその一番廊下側の真ん中より数段下の段あたりの席に座った。そしてそのまま机に突っ伏す。
「今日から寮生活か」
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「荷物も整理しないと出しな」
今頃寮の部屋に届いているだろう荷物を思いあきらめる。
その時何やら生徒たちがざわめきだす気配を感じユアンは顔をあげた。
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