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第一章 出会いからもう一度
一夜明け
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「朝だ……」
もう一度目を瞑り眠りにつこうとするが、ぐっすり眠った後なので全く眠くならない。
「成仏ってどうやるんだよ!」
体を起こしながら、叫ぶ。しばらくそんなことを繰り返しながら、だいぶ冷静さを取り戻したことを自覚すると、大きく深呼吸しベッドから起き上がった。
ユアン瞳の色と同じ藍色の壁紙に、白を基調にした机や本棚、生まれた時から結婚するまでの18年間を過ごした部屋。
改めて確認するように、鏡に映る自分の姿を見る。
藍色の瞳。同じく青みがかった黒髪。12歳の平均にしては少し小さな背丈。なのに、他の子どもたちより一回りは大きな横幅。
(あの頃は自分のことをちょっとぽっちゃりしてるぐらいにしか本気で思ってなかったが、改めて見てみるとけっこう、いやだいぶ太っているな)
そんな感想を持ちながら、ユアンはベッドに腰掛けた。
それにしてもメアリーと再会してもう悔いは無いはずなのに……
(って、これ本当に走馬灯なのか)
本当は薄々感づいている。
人や物に触ったときの感触。お菓子の味や匂い。走ったときの息苦しさ。あまりにもリアルすぎる。
そして普通に寝て目が覚めてもまだ続いているこの状況。
(もしかして時間が巻き戻った?)
確信は持てないが、そんなことがあり得るなら、
「ギフトなのか…」
この世界には魔力を持つものと持たないものがいる。魔力を持つものは魔法が使える。そしてギフトとは、魔力の有無とは関係なく、その人物だけが持っている特殊能力、未来を予知したり、妖精や精霊という普通は目に見えないものたちと交流できたり、魔法とはまた違うその力を、教会は神様からの贈り物"ギフト"と名付けた。
いま自分に起きている事がギフトによるものなら……
「教会に報告しないと。……でも」
ギフトを持つものはそれを授かったと同時にその名や使い方が分かるという。
キールは10才の時に<剣鬼>というギフトを発現させている。
あれは忘れもしないある晴れた日。
二人で森を探索していると突然キールが『俺<剣鬼>になった』と叫ぶや否や、いつも持ち歩いている果物ナイフをポッケから取り出すと近くの草を切りつけたのだ。
そのときは草が風圧でそよいだだけだったが、成人する頃には風圧だけで、遠くの枝ぐらいは切り落とせる威力になっていた。
だが自分はどうだ、ギフト名も使い方もわからない。これでは教会に言ったところで、証明のしようがない。
「同じ状況の再現とか」
瞬間、”死”という言葉が浮かんで激しく頭を横に振る。
一回限りのギフトという可能性もなくはない。もしそうなら証明どころかそこで終わりである。
「…………」
しばらく考えたのち、考えるのをやめる。
教会に話したりしたら、謎のギフトの研究のため一生監視が付くかもしれない。それよりこの与えられたチャンスを全力で自分の為に生かしたほうがいいだろう。ユアンはグッとこぶしを握り締め自分の考えに頷いた。
『絶対君を幸せにする。ずっと一緒にいる』
プロポーズで誓った約束。神様はこの約束を守らせるために、もう一度チャンスをくれたのかもしれない。
ならばその期待に応えるために、この人生を生きていこう。
「メアリー! 今度こそ君を守る。そして君ともう一度幸せになる!」
もう一度目を瞑り眠りにつこうとするが、ぐっすり眠った後なので全く眠くならない。
「成仏ってどうやるんだよ!」
体を起こしながら、叫ぶ。しばらくそんなことを繰り返しながら、だいぶ冷静さを取り戻したことを自覚すると、大きく深呼吸しベッドから起き上がった。
ユアン瞳の色と同じ藍色の壁紙に、白を基調にした机や本棚、生まれた時から結婚するまでの18年間を過ごした部屋。
改めて確認するように、鏡に映る自分の姿を見る。
藍色の瞳。同じく青みがかった黒髪。12歳の平均にしては少し小さな背丈。なのに、他の子どもたちより一回りは大きな横幅。
(あの頃は自分のことをちょっとぽっちゃりしてるぐらいにしか本気で思ってなかったが、改めて見てみるとけっこう、いやだいぶ太っているな)
そんな感想を持ちながら、ユアンはベッドに腰掛けた。
それにしてもメアリーと再会してもう悔いは無いはずなのに……
(って、これ本当に走馬灯なのか)
本当は薄々感づいている。
人や物に触ったときの感触。お菓子の味や匂い。走ったときの息苦しさ。あまりにもリアルすぎる。
そして普通に寝て目が覚めてもまだ続いているこの状況。
(もしかして時間が巻き戻った?)
確信は持てないが、そんなことがあり得るなら、
「ギフトなのか…」
この世界には魔力を持つものと持たないものがいる。魔力を持つものは魔法が使える。そしてギフトとは、魔力の有無とは関係なく、その人物だけが持っている特殊能力、未来を予知したり、妖精や精霊という普通は目に見えないものたちと交流できたり、魔法とはまた違うその力を、教会は神様からの贈り物"ギフト"と名付けた。
いま自分に起きている事がギフトによるものなら……
「教会に報告しないと。……でも」
ギフトを持つものはそれを授かったと同時にその名や使い方が分かるという。
キールは10才の時に<剣鬼>というギフトを発現させている。
あれは忘れもしないある晴れた日。
二人で森を探索していると突然キールが『俺<剣鬼>になった』と叫ぶや否や、いつも持ち歩いている果物ナイフをポッケから取り出すと近くの草を切りつけたのだ。
そのときは草が風圧でそよいだだけだったが、成人する頃には風圧だけで、遠くの枝ぐらいは切り落とせる威力になっていた。
だが自分はどうだ、ギフト名も使い方もわからない。これでは教会に言ったところで、証明のしようがない。
「同じ状況の再現とか」
瞬間、”死”という言葉が浮かんで激しく頭を横に振る。
一回限りのギフトという可能性もなくはない。もしそうなら証明どころかそこで終わりである。
「…………」
しばらく考えたのち、考えるのをやめる。
教会に話したりしたら、謎のギフトの研究のため一生監視が付くかもしれない。それよりこの与えられたチャンスを全力で自分の為に生かしたほうがいいだろう。ユアンはグッとこぶしを握り締め自分の考えに頷いた。
『絶対君を幸せにする。ずっと一緒にいる』
プロポーズで誓った約束。神様はこの約束を守らせるために、もう一度チャンスをくれたのかもしれない。
ならばその期待に応えるために、この人生を生きていこう。
「メアリー! 今度こそ君を守る。そして君ともう一度幸せになる!」
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