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第一章 出会いからもう一度
洗礼パーティーからリスタート
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ドンと背中に強い衝撃を受けユアンは口に入っていた何かを地面にぶちまけた。
「ほおばりすぎだ」
ゴホゴホとせき込みながら顔を上げると真っ青な空にまぶしいほど照り付ける太陽が目に飛び込んできた。反射的にギュッと目をつぶる。
「大丈夫かよ、ユアン」
瞼に影が差すのを感じて恐る恐る目を開ける。そこには水の入ったコップを差し出すように一人の少年が立っていた。
「キール?」
それを飲み干しながら、マジマジと少年の顔を覗き込む。
太陽の光をうけ赤銅色にキラキラと輝く髪。いかにも悪戯っ子のようなクルクルよく動く活発な緑の瞳。最後に見た顔よりずいぶんと幼いが、まぎれもなく彼は幼なじみのキール・チェスター だった。
混乱する記憶の中で状況を把握しようとぐるりと周りを見渡す。
手入れの行き届いた庭園に豪華な料理やお菓子が並べられた数々のテーブル。その周りには歳の頃は10代前半ぐらいか、皆お揃いの白い服を着た子供たちが数百人ほどそれぞれお菓子を食べたり話したり遊んだりしていた。
(洗礼パーティー?)
洗礼パーティーとは、12歳を迎えた子供たちの、魔力測定後に行われる、年に一度のパーティーのことである。
普通は王族や金持ちの貴族しか通うことのできないフーブル学園に、魔力があれば平民でも無条件で来月から通うことができる。そのため測定にあたり身分がわらないようにこの日はみなお揃いの白い服で1日過ごすのだ。
「建前だけどな……」
呟きながら、ハッと何かに思い当たる。
(これがよくいう走馬灯か!)
死ぬ間際に思い出をフラッシュバックで見るっていう。
(想像してたよりリアルなんだな)
変なことに感心しながら再びハッとする。
(もし本当に洗礼パーティーの日なら)
心臓が早鐘のように脈打つ。
(彼女もここにいるはずだ!)
考えるより先にユアンは走り出していた。
「どこだ! どこにいるんだよ」
みな同じ服で、背丈も似たり寄ったりの子供。
その時新しいお菓子が運ばれてきたことを告げるベルの音を耳にした 。
(そうだあの時)
記憶をたどり、いままさに、カップケーキが運ばれようとしているテーブルを目指した。
カップケーキは、テーブルに置かれると同時に、次々に伸びてくる子供たちの手によってみるまになくなっていく。そして最後の1つに伸ばされた手が何かに驚いたように引っ込められた。
「……メ……っ」
ゼーゼーと肩で息をしながらユアンは、カップケーキの先に彼女を見た。
戸惑ったように揺れる若草色の瞳と柔らかそうな栗色の髪。記憶に残る彼女よりあどけないが、まぎれもなく、ユアンの探していた、妻の幼き日の姿。
(メアリー)
息が切れて言葉にならなかったが、万感の思いを込めて彼女に向かって手を伸ばす。
「あっ、よかったらどうぞ」
それを見たメアリーはハッとしたように最後のカップケーキを手にとると、そう言ってユアンにそれを差し出した。
「ちが……、メ……、メア……」
そうじゃないと思いつつ、渡されたカップケーキを受け取り、言葉を続けようとするが急に熱いものがこみ上げてきて胸がいっぱいになり言葉が詰まる。
「私は大丈夫です」
言うが早いかメアリーはくるりと向きを変え、一目散に女友達のところまで走っていってしまった。
遠のいていく彼女の後ろ姿に手を伸ばすが呼び止める言葉は出てこない。
(あぁ、なんだか姿もぼやけて見える)
もっとよく彼女を見ていたいのに。
「約束守れなくて……、ごめん……愛してる」
伝える事が出来なかった最後の言葉を、去っていく背中に投げかけると、その姿が消えないようにぎゅっと目をつぶる。
「ユアン!」
これで刹那の夢も終わりかと思ったが、肩を掴む力強い手に無理やり沈みかけていた意識が引っ張り起こされた。
「いきなり走っていったと思ったら……、泣くほどそれが食べたかったのか」
握りしめ過ぎて中身が飛び出しそうになっているカップケーキを見ながら、あきれたように、でもお前らしいなと言ってキールが笑う。
どうやらこの走馬灯はもう少し最後の時間をくれるらしい。
「ほおばりすぎだ」
ゴホゴホとせき込みながら顔を上げると真っ青な空にまぶしいほど照り付ける太陽が目に飛び込んできた。反射的にギュッと目をつぶる。
「大丈夫かよ、ユアン」
瞼に影が差すのを感じて恐る恐る目を開ける。そこには水の入ったコップを差し出すように一人の少年が立っていた。
「キール?」
それを飲み干しながら、マジマジと少年の顔を覗き込む。
太陽の光をうけ赤銅色にキラキラと輝く髪。いかにも悪戯っ子のようなクルクルよく動く活発な緑の瞳。最後に見た顔よりずいぶんと幼いが、まぎれもなく彼は幼なじみのキール・チェスター だった。
混乱する記憶の中で状況を把握しようとぐるりと周りを見渡す。
手入れの行き届いた庭園に豪華な料理やお菓子が並べられた数々のテーブル。その周りには歳の頃は10代前半ぐらいか、皆お揃いの白い服を着た子供たちが数百人ほどそれぞれお菓子を食べたり話したり遊んだりしていた。
(洗礼パーティー?)
洗礼パーティーとは、12歳を迎えた子供たちの、魔力測定後に行われる、年に一度のパーティーのことである。
普通は王族や金持ちの貴族しか通うことのできないフーブル学園に、魔力があれば平民でも無条件で来月から通うことができる。そのため測定にあたり身分がわらないようにこの日はみなお揃いの白い服で1日過ごすのだ。
「建前だけどな……」
呟きながら、ハッと何かに思い当たる。
(これがよくいう走馬灯か!)
死ぬ間際に思い出をフラッシュバックで見るっていう。
(想像してたよりリアルなんだな)
変なことに感心しながら再びハッとする。
(もし本当に洗礼パーティーの日なら)
心臓が早鐘のように脈打つ。
(彼女もここにいるはずだ!)
考えるより先にユアンは走り出していた。
「どこだ! どこにいるんだよ」
みな同じ服で、背丈も似たり寄ったりの子供。
その時新しいお菓子が運ばれてきたことを告げるベルの音を耳にした 。
(そうだあの時)
記憶をたどり、いままさに、カップケーキが運ばれようとしているテーブルを目指した。
カップケーキは、テーブルに置かれると同時に、次々に伸びてくる子供たちの手によってみるまになくなっていく。そして最後の1つに伸ばされた手が何かに驚いたように引っ込められた。
「……メ……っ」
ゼーゼーと肩で息をしながらユアンは、カップケーキの先に彼女を見た。
戸惑ったように揺れる若草色の瞳と柔らかそうな栗色の髪。記憶に残る彼女よりあどけないが、まぎれもなく、ユアンの探していた、妻の幼き日の姿。
(メアリー)
息が切れて言葉にならなかったが、万感の思いを込めて彼女に向かって手を伸ばす。
「あっ、よかったらどうぞ」
それを見たメアリーはハッとしたように最後のカップケーキを手にとると、そう言ってユアンにそれを差し出した。
「ちが……、メ……、メア……」
そうじゃないと思いつつ、渡されたカップケーキを受け取り、言葉を続けようとするが急に熱いものがこみ上げてきて胸がいっぱいになり言葉が詰まる。
「私は大丈夫です」
言うが早いかメアリーはくるりと向きを変え、一目散に女友達のところまで走っていってしまった。
遠のいていく彼女の後ろ姿に手を伸ばすが呼び止める言葉は出てこない。
(あぁ、なんだか姿もぼやけて見える)
もっとよく彼女を見ていたいのに。
「約束守れなくて……、ごめん……愛してる」
伝える事が出来なかった最後の言葉を、去っていく背中に投げかけると、その姿が消えないようにぎゅっと目をつぶる。
「ユアン!」
これで刹那の夢も終わりかと思ったが、肩を掴む力強い手に無理やり沈みかけていた意識が引っ張り起こされた。
「いきなり走っていったと思ったら……、泣くほどそれが食べたかったのか」
握りしめ過ぎて中身が飛び出しそうになっているカップケーキを見ながら、あきれたように、でもお前らしいなと言ってキールが笑う。
どうやらこの走馬灯はもう少し最後の時間をくれるらしい。
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