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アリナたち、怪しい人物を問い詰める
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「リズ」
「リズ様」
「なんだ二人して、おかしな顔をして」
とても悪意がある人間だとは思えない、爽やかな笑みを向ける。二人が声をかけてくれたことが嬉しいと言わんばかりだ。
「リズ様、あの」
「リズ、これに見覚えはあるか」
どう切り出そうかと口ごもるアリナに変わってローラは単刀直入に、魔晶石の入った小瓶をリズの顔の前に突き出した。
一瞬キョトンとしたリズは、中に入ったキラキラした赤い結晶を見て、「あっ」と小さな声をあげた。
「知っているんだな」
「あぁ、どうだ体調は良くなったか?」
全く悪びれていない、寧ろ得意げに笑った彼女の顔をみて、アリナは思わず一歩後ずさった。
「どうして、リズ様」
「まさか本当にリズの仕業だったなんて」
「よかった、体調はよくなったみたいだな」
自分たちで問い詰めといたにもかかわらず、あっさりと白状したリズに、逆に信じられないとばかりに首を振る。
「さあ、これでおもいっきり戦えるな」
「何が、戦えるだ」
「リズ様とはこれからいい友達になれると思っていたのに」
アリナが思わずそう叫んだ。
「何をいっているんだ、アリナ嬢、私たちはこれからも友達だぞ」
「じゃあなぜこんな卑怯なことをしたんだ」
「卑怯?」
天真爛漫に笑っていたリズの顔が一瞬で険しくとがる。
「卑怯とはなんだ、私はいつだって正々堂々と戦いをいどんでるじゃないか」
「じゃあなぜ魔晶石を私に飲ませたのよ」
「ローラ嬢の魔力を早く回復させて、私と決闘してもらうためだろ」
「ん?」
アリナとローズが顔を見合わす。
「リズ様がこれをローラ様に飲ませたのですよね」
「そうだ、ローラはもともと魔力が少なかったのに、聖女に選ばれたせいで、魔力が枯渇して体調を崩していると聞いたから」
確かに聖女になる前のローラは白魔術師の中では魔力の多い方でなかったのは確かである。でも聖女の力を授かると同時に膨大な魔力も授かったので、魔力不足ということはなかった。
「だから、私は少しでも早く魔力を回復できるように、魔晶石を入れてやったんだ」
「勝手に人の飲み物に魔晶石を入れるのはどんな理由であれ、だめでしょ」
「私もそう思ったのだが、サプライズだと言われ」
「どんなサプライズですか」
しかしローラの言葉を遮ってアリナが聞き返した。
「誰かに良いことだと言われたのですね」
「そうだ」
「それは誰ですか」
「誰も何も」
眉間に皺をよせ、口を尖らす。褒められると思っていたら怒られて機嫌を損ねた子供のように。
「アリナ嬢。あなたじゃないか」
ローラが振り返る。アリナはブンブンと首を横に振った。
「私、そんなこと言ってません。それにあのお茶会にはそもそも参加してないじゃないですか」
「だからアリナ嬢のお詫びの品だと、たまにアリナ嬢と一緒にいる男子が」
「一緒にいる……男子」
アリナと親しい人など、一人しか思い浮かばない。
しかしそれを認めることができずに激しく首を振る。
「なんで、そんなわけないじゃないですか、彼がどんな理由でそんなことをするんです」
いつも控えめなアリナに強く肩を掴まれ、リズが驚いたように目を丸くする。
「リズ様」
「なんだ二人して、おかしな顔をして」
とても悪意がある人間だとは思えない、爽やかな笑みを向ける。二人が声をかけてくれたことが嬉しいと言わんばかりだ。
「リズ様、あの」
「リズ、これに見覚えはあるか」
どう切り出そうかと口ごもるアリナに変わってローラは単刀直入に、魔晶石の入った小瓶をリズの顔の前に突き出した。
一瞬キョトンとしたリズは、中に入ったキラキラした赤い結晶を見て、「あっ」と小さな声をあげた。
「知っているんだな」
「あぁ、どうだ体調は良くなったか?」
全く悪びれていない、寧ろ得意げに笑った彼女の顔をみて、アリナは思わず一歩後ずさった。
「どうして、リズ様」
「まさか本当にリズの仕業だったなんて」
「よかった、体調はよくなったみたいだな」
自分たちで問い詰めといたにもかかわらず、あっさりと白状したリズに、逆に信じられないとばかりに首を振る。
「さあ、これでおもいっきり戦えるな」
「何が、戦えるだ」
「リズ様とはこれからいい友達になれると思っていたのに」
アリナが思わずそう叫んだ。
「何をいっているんだ、アリナ嬢、私たちはこれからも友達だぞ」
「じゃあなぜこんな卑怯なことをしたんだ」
「卑怯?」
天真爛漫に笑っていたリズの顔が一瞬で険しくとがる。
「卑怯とはなんだ、私はいつだって正々堂々と戦いをいどんでるじゃないか」
「じゃあなぜ魔晶石を私に飲ませたのよ」
「ローラ嬢の魔力を早く回復させて、私と決闘してもらうためだろ」
「ん?」
アリナとローズが顔を見合わす。
「リズ様がこれをローラ様に飲ませたのですよね」
「そうだ、ローラはもともと魔力が少なかったのに、聖女に選ばれたせいで、魔力が枯渇して体調を崩していると聞いたから」
確かに聖女になる前のローラは白魔術師の中では魔力の多い方でなかったのは確かである。でも聖女の力を授かると同時に膨大な魔力も授かったので、魔力不足ということはなかった。
「だから、私は少しでも早く魔力を回復できるように、魔晶石を入れてやったんだ」
「勝手に人の飲み物に魔晶石を入れるのはどんな理由であれ、だめでしょ」
「私もそう思ったのだが、サプライズだと言われ」
「どんなサプライズですか」
しかしローラの言葉を遮ってアリナが聞き返した。
「誰かに良いことだと言われたのですね」
「そうだ」
「それは誰ですか」
「誰も何も」
眉間に皺をよせ、口を尖らす。褒められると思っていたら怒られて機嫌を損ねた子供のように。
「アリナ嬢。あなたじゃないか」
ローラが振り返る。アリナはブンブンと首を横に振った。
「私、そんなこと言ってません。それにあのお茶会にはそもそも参加してないじゃないですか」
「だからアリナ嬢のお詫びの品だと、たまにアリナ嬢と一緒にいる男子が」
「一緒にいる……男子」
アリナと親しい人など、一人しか思い浮かばない。
しかしそれを認めることができずに激しく首を振る。
「なんで、そんなわけないじゃないですか、彼がどんな理由でそんなことをするんです」
いつも控えめなアリナに強く肩を掴まれ、リズが驚いたように目を丸くする。
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