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アリナ、お茶会でライザ・ムルマンと会う
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それから間もなくして、生徒会主催のお茶会が盛大に催された。
「ローラ様お久しぶりです。その後お体の具合はどうですか?」
華やかに着飾った令嬢中、生徒会役員のメンバーたちは、男女とも同じ礼服を身にまとっていた。
そしてそんな礼服を着ていても、隠し切れないオーラを放っている存在がいた。
生徒会会長であるミハイル皇太子と、副会長であるライザ令嬢である。
動きやすいように、アップにした栗色の髪、他の令嬢たちのように煌びやかな装飾を身に付けていないのに、その翡翠色の瞳だけでどの令嬢より、彼女は眩い輝きを放っているように見えた。
「心配ありがとうございます。生徒会の皆様にはその節はおせわになりました」
魔力暴走を起こした際に発生した突風により、転倒した生徒や、騒ぎを聞きつけてやってきたやじ馬たちの整備をしたのは生徒会であった。
まあ、治癒の魔法だったので、転倒した生徒も怪我は全くなかったのだが。
「それは、よかったです」
ニコリと微笑む笑顔は、慈愛に満ちている。
前のアリナだったら、『私を心配してくれて優しい』とでも思っていたことだろう、でもローラ曰く呪いをかけた容疑者の第一有力候補である。その優しい笑顔さえ、今日は素直に受け取ることはできない。
「あの後も何度か倒れかけたと、リズ様からお聞きして心配してたのですけど、もう大丈夫みたいですね」
あの魔力暴走後、もう決闘を挑んでくることはリズはなかったが、なぜか懐かれたようで、ローラと待ち合わせている教会にちょこちょこ顔を出すようになっていた。
まったく作戦会議の邪魔でしかならないのだが、追い払う理由を思い浮かばず、困っているのだ。
そしてまたあれからアリナはちょこちょこ体調を崩して学園を休んでもいた。ローラもそのことは心配しているのだが、実はアリナは、あれから毎日家に帰ってから、魔力探知を使ってローラの身体から、呪いの原因となっているものを探っているから、寝不足で起きれていないだけなのだが、それはまだローラにも話していない事だった。
「成人を迎えてから聖女の力を授かるなんて異例ですもの、うまくコントロールできないのは仕方ないことですわ」
心配げに見上げる瞳からは、彼女が本当にアリナを心配しているという気持ちが伝わってくる。
これが全てお芝居だというのなら、すごい女優になれるだろう。
(やはりローラ様の見当違いなのでは……)
そう思わすにはいられなかった。
「そういえば、来年度はローラ様も生徒会に入るから、そのために今度生徒会の手伝いに入るってミハイル様からお聞きしましたわ。でも私、ローラ様が心配です。まだ聖女の力になれていないご様子なのに、生徒会の仕事を手伝うなんて」
その瞬間アリナはハッとした。いつも人の顔色を伺っているアリナだから気がついた、何かを探ろうとする気配と、気遣うようでいて、牽制ともとれる言葉。
「大丈夫です。あの時は少し疲れてしまっていて。もともと入学と同時に生徒会のお手伝いにはいる予定でしたので、半年もお休みをいただいて、その分皆様のお手を煩わせてしまいました。これからはその分も取り戻せるよう、全力を尽くしますわ」
いつも優しい微笑みを称えているその笑顔の奥が、一瞬垣間見えた気がして肌が粟立つ。
(いったい私は彼女の何を見て、いままで優しい人だと思っていたのだろう)
それでも、初めに見せた心配そうな表情は、今も本当の気持ちだったと思う。
アリナは混乱した心を隠しながら、ニコリと微笑み返す。
「ローラ様」
そこにアリナの姿をしたローラがやって来た。
「こんにちは、ライザ様」
「あら、アリナ様ではないですか。こういう行事に参加されるは初めてじゃないですか」
驚きつつ、うれしそうに目を輝かす。
「はい。いままでの私はもう卒業して、これからは皇太子妃候補に選ばれた者として恥ずかしくない私になろうとおもいまして」
皇太子妃候補という単語に、ピクリとライザが反応した。
「そうですね。お互い、恥ずかしくないよう、がんばりましょうね」
でもそれも一瞬で、すぐに誰もを魅了するような聖母のような優しい笑顔を浮かべる。
「ローラ様お久しぶりです。その後お体の具合はどうですか?」
華やかに着飾った令嬢中、生徒会役員のメンバーたちは、男女とも同じ礼服を身にまとっていた。
そしてそんな礼服を着ていても、隠し切れないオーラを放っている存在がいた。
生徒会会長であるミハイル皇太子と、副会長であるライザ令嬢である。
動きやすいように、アップにした栗色の髪、他の令嬢たちのように煌びやかな装飾を身に付けていないのに、その翡翠色の瞳だけでどの令嬢より、彼女は眩い輝きを放っているように見えた。
「心配ありがとうございます。生徒会の皆様にはその節はおせわになりました」
魔力暴走を起こした際に発生した突風により、転倒した生徒や、騒ぎを聞きつけてやってきたやじ馬たちの整備をしたのは生徒会であった。
まあ、治癒の魔法だったので、転倒した生徒も怪我は全くなかったのだが。
「それは、よかったです」
ニコリと微笑む笑顔は、慈愛に満ちている。
前のアリナだったら、『私を心配してくれて優しい』とでも思っていたことだろう、でもローラ曰く呪いをかけた容疑者の第一有力候補である。その優しい笑顔さえ、今日は素直に受け取ることはできない。
「あの後も何度か倒れかけたと、リズ様からお聞きして心配してたのですけど、もう大丈夫みたいですね」
あの魔力暴走後、もう決闘を挑んでくることはリズはなかったが、なぜか懐かれたようで、ローラと待ち合わせている教会にちょこちょこ顔を出すようになっていた。
まったく作戦会議の邪魔でしかならないのだが、追い払う理由を思い浮かばず、困っているのだ。
そしてまたあれからアリナはちょこちょこ体調を崩して学園を休んでもいた。ローラもそのことは心配しているのだが、実はアリナは、あれから毎日家に帰ってから、魔力探知を使ってローラの身体から、呪いの原因となっているものを探っているから、寝不足で起きれていないだけなのだが、それはまだローラにも話していない事だった。
「成人を迎えてから聖女の力を授かるなんて異例ですもの、うまくコントロールできないのは仕方ないことですわ」
心配げに見上げる瞳からは、彼女が本当にアリナを心配しているという気持ちが伝わってくる。
これが全てお芝居だというのなら、すごい女優になれるだろう。
(やはりローラ様の見当違いなのでは……)
そう思わすにはいられなかった。
「そういえば、来年度はローラ様も生徒会に入るから、そのために今度生徒会の手伝いに入るってミハイル様からお聞きしましたわ。でも私、ローラ様が心配です。まだ聖女の力になれていないご様子なのに、生徒会の仕事を手伝うなんて」
その瞬間アリナはハッとした。いつも人の顔色を伺っているアリナだから気がついた、何かを探ろうとする気配と、気遣うようでいて、牽制ともとれる言葉。
「大丈夫です。あの時は少し疲れてしまっていて。もともと入学と同時に生徒会のお手伝いにはいる予定でしたので、半年もお休みをいただいて、その分皆様のお手を煩わせてしまいました。これからはその分も取り戻せるよう、全力を尽くしますわ」
いつも優しい微笑みを称えているその笑顔の奥が、一瞬垣間見えた気がして肌が粟立つ。
(いったい私は彼女の何を見て、いままで優しい人だと思っていたのだろう)
それでも、初めに見せた心配そうな表情は、今も本当の気持ちだったと思う。
アリナは混乱した心を隠しながら、ニコリと微笑み返す。
「ローラ様」
そこにアリナの姿をしたローラがやって来た。
「こんにちは、ライザ様」
「あら、アリナ様ではないですか。こういう行事に参加されるは初めてじゃないですか」
驚きつつ、うれしそうに目を輝かす。
「はい。いままでの私はもう卒業して、これからは皇太子妃候補に選ばれた者として恥ずかしくない私になろうとおもいまして」
皇太子妃候補という単語に、ピクリとライザが反応した。
「そうですね。お互い、恥ずかしくないよう、がんばりましょうね」
でもそれも一瞬で、すぐに誰もを魅了するような聖母のような優しい笑顔を浮かべる。
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