【完結】呪われ聖女と入れ替わり令嬢～拗らせ片思い～

アリナ、父を思う

「アリナ、昨日は大丈夫だった？」
「体は平気よ。それよりエルモレンコ公爵夫人をなだめる方が大変だったわ」

　それを聞いて恥ずかしそうに苦笑いを浮かべるローラに思わず吹き出す。

「本当にお母様は心配性なんだから」
「愛されてるのよ」

　さっきまで顔を赤らめていたローラが急に真顔になると言った。

「アリナ、今朝早くイヴァキン伯爵から電報が届いたわ」
「お父様が」

　父の名を聞いてアリナは視線を地面に落とした。

「心配だから、一度家に顔をだしなさいって」
「魔力暴走をした聖女の近くに私がいたから、私が何かしたとでも思ったのかしら」
「アリナ……、イヴァキン伯爵はそんなふうに考える人ではないわ。本当にあなたがただ心配なだけよ」
「ローラは色々私について調べたんでしょ。ならお父様が、お母様が亡くなって、一年もしないうちに再婚したことは知ってるわよね。それもお母様の従妹と」
「アリナ……」
「……ローラ、うちの家のことは今はいいから、それより、早く犯人を見つけましょう。それに学園では私の真似をしなくても大丈夫でも、家族にはそのままっていうわけにはいかないでしょ」

　アリナはしょんぼりしているローラに向かって小さく笑いかける。

「だから早くこの体をもとに戻してもらわないと」
「アリナ」

　ぱっとローラの顔に笑顔が戻る。

「エルモレンコ公爵夫人と接して、私も色々考えたの。もう一度お父様と向き合ってみる」

　そういってほほ笑んだ。

「ねぇ、私も昨日会って、リズ様は呪いと関わってるとは考えられないから、いっそ仲間に引き入れてみない」

　皇太子妃としてはおすすめできないが、彼女とはお友達ぐらいにはなれる気がした。

「だめよ、あのリズよ。呪いのことを知った途端。全校生徒の前で『呪いなど卑怯者のやることだ！　呪いをかけた奴はでてこい！　このリズ様が相手になってやる』とか言い出しかねないわ」
「あはは、確かに」
「そうなってくると、やっぱり怪しいのは、ディア様かライザ様ってことになるのね」
「今度生徒会主催のパーティーがあるの、その時ライザに探りを入れるつもり」
「私も何かできることはある」
「そうね、アリナにも出席はしてもらうつもりだけど、今は私の魔力コントロールに慣れるのが先ね。お茶会の席では何を言われても、ニコニコしててくれればいいわ」
「ははは、そうね」

　言い返す言葉もない。