【完結】呪われ聖女と入れ替わり令嬢～拗らせ片思い～

アリナ、報告する

「なに、浮かない顔してるのよ」

　ダニー訪問からさらに二日休み、ローラとしてアリナが初めて学園に登校した日である。

「別に、久しぶりの学園で疲れたのよ。本当にずっと魔法を使ってないとならないなんて」

　いま二人は午前中の授業を終え、結界の張られている教会でお昼と取っていた。

「辛いなら、今日は帰ったら」
「いやそれは……、それにあれからローラ全然家に来てくれないじゃない、今どうなってるのか少しは教えてよ」

　家にいたらいたらで、母親があの調子で部屋に入って来ては、世話を焼いたり、「アリナ嬢から何か知らせわないのかしら」と期待を込めて詰め寄って来るので、それはそれで落ち着かないのだ。

「私は私で、情報収集していたのだからしかたないでしょ」
「…………」
「そういえば、キリリチェフ様が行ったと聞いたのだけど、何もなかったでしょ」

　ダニーと親密な関係だというのはアリナの誤解だったでしょ。という意味なのだろうが。アリナはそれに対して複雑な表情で返した。

「えっ、なに、どんな感情？」
「いいえ、ただ、ローラ様は本当にお綺麗だなって」
「なにそれ」

　ダニーの熱い視線。それが自分でなく、ローラに注がれていたという事実を思い出し胸が痛んだ。
　でもローラがダニーにせまったとはもう思っていない、でもそれは逆にもっとアリナを落胆させる要素でしかなかった。

「聖女の魔法で癒せなかった事柄を見つけることはできなかったけど、すぐ治るような魔障の治療に、時間がかかったということがあったみたい」
「そうなの？」

　しかしこの気持ちをローラにぶつけてもそれは嫉妬や八つ当たりにしかならない。アリナは淡々とした口調で、ダニーから教えてもらった事柄だけを述べた。