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アリナ、ダニー・キリリチェフと会う4

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「本来なら聖女の力を借りなくても、自分で治癒できるような魔障だったのに、夫人は聖女様を呼ばなくてはならないほど悪化し、そして聖女様でさえ完全に完治させることに時間がかかった」
「不思議ですね。同じ魔障のようで、違っていたとか」
「いえ、同じ魔物に噛まれたことでかかった魔障だと記してあります」

 アリナが考え込むように顎に手を当てる。その様子に、ダニーが自論なのですがと続けて話し出した。

「白魔術師は魔障に強い免疫をもっています。それは裏を返せば誰よりも敏感なんです。弱い魔障なら、治癒魔法を使わなくても、自然に治るのが当たり前。でも、強すぎる魔力で自ら魔障を治癒しようとした結果、過剰反応を起こしてしまったのではないかと思うのです」
「過剰反応……、それはつまり」

 バッと顔をあげるとすぐ近くにダニーの顔があり、思わず顔をそらす。

「はい、もしかしてですが……」

 ダニーはそんなローラの態度に気がつかないのか、熱弁を振るう。

「──と僕は考えます」と、話し終え頬を高揚させたダニーと目が合った。

「──、確かにありえそうですね」

 熱弁を振るっていたダニーに、おもわずうっとりとした表情で聞き入っていたことに気がつき、慌てて、咳ばらいをすると、アリナも同意した。
 チラリとダニーを見ると、先ほどまで熱弁を展開していたダニーが、じっとアリナに視線を注いでいる。

(なにかおかしかったかしら)

 おもわずアリナも見つめ返すと、プイッと視線をそらされた。

(いまわざと視線をそらさなかった?)

 ザワリと胸がざわめいた。そらされたダニーの横顔、その耳は気持ち赤く見えた。それが熱弁のせいなのか、どうなのかアリナには分からない。

(ローラ(中身はアリナ)に見詰められて、ダニーが照れた?)

※ ※ ※

「今日はありがとうございました」
「いえ、また新しいことがわかったらご報告します」

 上の空でダニーを見送ったアリナは、部屋に戻るなりベッドに突っ伏した。

「ダニーのあの反応、なんだったの!?」

 アリナと討論を交わしている時とは全然違う熱い眼差しを感じた。 

「やっぱり、ダニーはローラに惚れているんだわ」

 鏡の中に映る姿を目にするたびに、ため息をつかずにはいられない美しさだった。
 
「ローラはその気はないっていってたけど、ダニーにあったらどうしようもないじゃない」

 どうしようもなくはないのだが、アリナの中でダニーが振られるなど考えられないことだった。

 それとは別に、もう一つ悩ましい問題があった。

「もう認めるしかないじゃない」

 アリナはどうやらダニーのことを兄と慕う以上に好いているということを。
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