【完結】呪われ聖女と入れ替わり令嬢~拗らせ片思い~

トト

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アリナ、容疑者を聞く1

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「ところで、呪いをかけた人物の目星がついているといっていたけど、その人たちの名前を聞いてもいい」

 一通りローラの癖をマスターしたアリナは、すっかり冷めきった紅茶を一気に飲み干すと、少しぐったりした様子でローラに訊ねた。

「そうね」

 引き出しから分厚い書類を引っ張り出す。
 書類の一番上には

 赤の騎士団団長の娘【リズ・バーベリ】
 青の騎士団団長の娘【ディア・ウラジオス】
 宰相の娘【ライザ・ムルマン】
 黒の魔法師研究社長の娘【アリナ・イヴァキン】
 
 と書いてあった。

「あと、ここの公爵令嬢で聖女【ローラ・エルモレンコ】が加われば」
「皇太子妃候補者ね」
「そう、私に呪いをかけた人物はこの中、またはこの人たちと関係ある人物だと考えてるわ」

 言いながら、アリナの名前の上に二重線を引く。

「そしてアリナは容疑者からはずされた。残るはこの3名よ」

 3名。思ったより、候補が絞られていることに、少しホッとする。これならばすぐに入れ替わりも終わるかもしれない、そんなふうに考えた。
 
「ローラは誰が怪しいと思っているの?」

 ローラが首を振る。

「動機が皇太子妃にかかわることなら、全員あるし、ここ数か月監視してたけど、決定的な証拠はなにもでてきてないのよ」

 やはり一筋縄ではいかないようだ。

「自分でいうのはなんだけど、私が昨日襲った時に、私のことを犯人だとはおもわなかったの?」

 ふと思った疑問を口にする。
 容疑者候補に挙がっていた割には、目覚めたアリナにそれっぽい質問をしたり、入れ替わりを解くどころか脅してまで協力させようとしたり、少しでも疑いがあればしそうにないことをしてきた。

「一瞬思ったわよ。でもそれなら、わざわざ呪われてるかもしれない体と入れ替わる必要はないでしょ。それに、アリナも皇太子妃候補だけど、全然皇太子妃に興味なさそうだったし」

 うんうんと頷く。

「今回のことも、皇太子妃候補の私の罪を告発するというより、ダニーにちょっかいかけてる女を牽制するって感じだったし」

 つられて頷きそうになったのを寸前で止める。

「ダニーのためにじゃなくて、誰かれ構わず魅了で人気を集めてると勘違いしたからで」
「じゃあ、『私のダニーに近づかないで』と叫んだのは?」
「えっ?」

 叫んだ記憶などないが、あの時は確かに色々てんぱっていたから、記憶にないが口を滑らせたのか。
 アリナのコロコロ変わる表情を見て、ローラがクククと笑いをこぼす。そこでようやくローラにからかわれたことを知る。

「ローラ!」

 頬を真っ赤にして怒った声を出す。

「本当に知れば知るほど、あなたって面白いわ」
「そんなこと」
「ダニーとの仲、私は応援するわ」
「私は……」

 急にトーンが落ち、アリナの声がかすかに震える。
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