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聖女は呪われていた1

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(いったい何が起こったの?)

 一歩教会を出た瞬間。アリナは息苦しさに胸を掻きむしりたい衝動に襲われ、そのまま意識を失った。

(魔法が失敗したの?)

 イヴァキン家は、黒魔法師の家系である。そしてアリナはその家系でも稀にみる魔力量の多い子供であった。
 だから人的問題のほかにも、普通の魔力では発動さえできないといわれる、禁忌魔法である、『入れ替わりの魔法』が可能だったのだ。

(確かに成功したはず)

 自分の姿をしたローラ・エルモレンコを見た。いつもなら、近づくだけで、むずがゆく感じる彼女の魔力が、自分の魂ごとやさしく包み込んでいるのを感じた。

 ズキズキと痛む頭を押さえながら、うっすらと目を開ける。
 高い天井。ステンドグラスて飾られた窓から差し込んだ光が目に飛び込む。

「教会……」
「目が覚めた?」

 ふいにその光を遮るように、黒い瞳の覗き込まれ、ビクリと体を震わせる。

「エルモレンコ様」

 見慣れた自分の姿で、心配そうにアリナを見つめるローラがそこにはいた。

(やはり入れ替わりは成功していたのね。ならなぜ?)

「私に何をしたのです。エルモレンコ様」

 エルモレンコ家は治癒や加護を得意とする、いわゆる白魔法師の家系である。
 そしてローラはもともとの魔力量こそ人並み程度だったが、魔力の扱いは他の子供たちより抜きんでて上手だった。
 そんなローラのことだ、攻撃や呪術を得意とする黒魔法師の体を使えば、攻撃魔法もすぐに使えるかもしれない。

「入れ替わってすぐで、それも使ったことのない、黒魔法を使えるわけないじゃない」

 まるでアリナの心の声に答えるようにローラが呆れ顔をする。

「でも、確かに、エルモレンコ様は私が教会を出ようとしたとき、何か唱えてましたよね」
「とっさにね、でも私が唱えたのは白魔法だったから、この体では発動もしなかったわよ」
「じゃあ、なぜ私は気を失ったのですか」

(入れ替わりの魔術に不備があったのだろうか?)

 一瞬考えこむように黙ったアリナに、

「私の体が呪われているから、結界の外に出たイヴァキン嬢は、気を失ったのよ」

 そんなアリナの耳に、さらりととんでもない言葉が飛び込んできた。
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