実録 高熱で子供が異常行動を起こしたときの話

トト

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バルタン星人の襲来!?

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 そうこれは数年前、まだ長男が小学4年生だった時の話です。

 その日長男は38度代の高熱を出していた。
 そして夜中にとても苦しそうにしだしたのだが、熱が高いしこのまま解熱剤で寝かせて朝を待つべきか救急車を呼ぶべきか私は迷っていた。
 そこで救急安心センターに相談することにした。

 ※救急安心センターとは
「家族の様子がなんとなくおかしいけど、救急車呼んだ方が良いのかな...」
「具合が悪いけど病院に行った方がいいのかな...」
 こんなとき、あなたはどうしますか?
 そんな時は「救急安心センター事業(♯7119)」

 そして、電話でいくつかの質問に答えていた。

 7119「会話はできてますか?」
 私「はい、今気持ち悪いといってます、でも大丈夫だと」
 7119「なら、朝まで様子みてもだいじょうぶそうですね」
 私「わかりました」

 電話口でそういわれ、ちょっと安心して電話を切ろうと思ったまさにその時だった。

 さっきまで私の質問に受け答えして私の方を目で見ていた息子が急にガクリと気を失ったのだ。

 ──あぁ書いていたら恐怖で涙が出てくる。

 近くで様子を見ていた旦那が名前を呼んでも全く返事がない。
 口から軽く泡が出ている。

 私は電話口で悲鳴をあげた。
 幸い電話はまだ切れていなかった。
 すぐに電話先が救急車の要請をしてくれた。
 救急車を待つ間に、息子はとりあえず意識を取り戻した。
 しかし気を失ってる間に失禁してしまっていたので、このまま病院に連れていくのはためらわれ、旦那が急いでお風呂場に連れていき、体を綺麗にしてくれた。
 息子はしかし意識はあるものの立つことすらできない。(果たしてお風呂で綺麗にしたのは行動的にはどうだったのか、本当はこういう時動かさず、救急隊員を待つ方が良いのか。まあ今だから言えるが失禁した服で救急車に乗せその後もずっといるのは大変だったからよかったのだが、帰りはタクシーだったし)

 そして救急車到着。
 そのころには息子はしっかり目を覚ましていて救急車隊員にもちゃんと対応しているかに見えた。
 しかしそれも見えていただけであった。
 救急車の隊員が息子の指に心拍などを量るものだろうか(?)何かを取り付けたいのだが、息子はそれをすぐ取り外してしまう。そして救急車から逃げようと手を振り回して暴れる。
 私や救急車隊員が説明してもよくわかってくれない。
 そこで救急車隊員が「お子さんはいつもこんな感じなんですか?」
 どうやら頭の知能が低い子だと思われたらしい。
 私はそれにどう答えたか覚えてないが、それを否定した。

 そして病院に着く。
 そのころには熱も38度代に下がり(救急車隊員が計った時には40度を超えてしまっていた)息子の様子も少し落ち着いていた。
 変に落ち着いていたので逆に救急だが、少し順番が遅くなると言われた。
 まぁ今は私とはちゃんと会話してるし、緊急性が下がったのだから仕方ない。

 そこで私と息子は待合室で待たされることになる。
 もちろん息子は歩けないので車いすに乗せている。
 そして私たちの診察の順番が来た。

 医者の質問に対し息子はなぜか不機嫌に答えている。
 しかし「学校担任の名前は」という質問に答えられなかったりいくつか、当たり前のことが答えられない。
 私は頭に異常がきたのではないかと内心気が気ではなかった。

 しかし医者いわく、
『熱せん妄』──夢と現実の区別がつかずパニック状態になること
 であるから熱が下がれば大丈夫だとの診断。
 薬は解熱剤のみだされることになった。

 しかし私には一つ不安なことが、こんなに熱が高いのだし、一応インフルエンザの検査もして欲しいと頼んだ。
 しかし医者はそれを拒否。
 なんだかわからないが、まあ確かに熱がでて12時間ほどたたないとインフルエンザの判断は難しいが、うちの子は多分夕方ぐらいから熱がではじめたので、結果はでるかもしれない。それに、また明日熱のある子を病院に連れて行くのは忍びない、とりあえず検査をして欲しかった。
 しかし医者曰く、インフルエンザは薬を飲まなくても治る病気だから、わざわざ調べる必要はない、それにこんなに熱があるんだから、治るまで家で安静にしてればいい。みたいなことを言われた気がする。
 家に帰ってからなんだか腹が立ったのだが、その時はまだ私も放心状態だったので、いわれるがまま診察室を出ていった。

 そしてとりあえず会計と薬を待っていたその時だった。

息子「お母さん。あそこにバルタン星人がいるよ」
私「え?」

 なにかそれらしき置物でもあるのかと周りを見渡すがなにもない。

息子「お母さん、僕はバルタン星人と戦うからウルトラマンに変身しないといけないから、僕を外に連れて行って」
私「(ヤバい、ヤバい、ヤバい)」

 私は受け付けの人に頼んでもう一度先生に会いに行った。
 しかし先生曰く、
「それも熱せん妄が見せる幻なので、熱が下がれば大丈夫です」みたいなことをいわれる。
 はっきり言って全然私は大丈夫ではない。
 でも先生がそういうのだし、それにこの先生ちょと冷たい。所詮大病院。先生たちは何人も同じような患者を診てきているからそんなふうに言えるのだろう、そんなの常識かもしれないが、私は初めてなんだよ。もっと安心させる言葉はないのか。
 そう思ったが、まあ結局きっとそうなのだろうと、自分を納得させる。

 その後も息子のバルタン星人は息子の周りに何度も現れる。
 あまりにせがむので車いすで外に連れていく。
 しかし息子は立てない(本当にこの時立てなくてよかったよ、体が元気だったら、病院から走り出してたかも)

 変身のポーズをとるが彼の中で変身はできたのであろうか?
 世界は救えたのであろうか?

 そしてタクシーで自宅に向かう。
 その間も意味の分からないことを私に話しかけてくる。
 とりあえず全て肯定してあげる。

 そして家に帰ると息子は普通に眠った。
 そして朝。
 熱はだいぶ下がっている。

 私は息子に「昨夜(もう当日になっていたが)のこと覚えてる?」と問いかけた。

 「覚えているよ」

 あぁ、正常に戻ったんだ。

「バルタン星人たちが攻めてきて、僕をさらおうとしたから僕は抵抗したんだ」
「────?!」

 そう息子が救急車で暴れたのはバルタン星人にさらわれて宇宙船に乗せられたと思っての行動だったのだ。

「そうなんだ、もう少し寝てて」
「うんでもここに気持ち悪いのがいるから気持ち悪い」

 そういって息子はなにもないふすまをさしてそれからまた眠った。

 私はしばし恐怖で戦慄したままふすまをじっと見つめた。


 本当に怖かったです。
 でもまだ見えたのがバルタン星人で良かった。
 お爺さんお婆さんが見えるとかいわれたら、お迎えが来てるのかと焦るし。
 最後の気持ち悪いものがずっと見えてたら私もおばけじゃないかとそっちでも怖いし((((;゚Д゚)))))))

 ただ、この事件で思ったこと。
 インフルエンザのタミフルのせいで異常行動を起こすと一時期話題になったが、あれは薬のせいだけじゃないと思った。高熱であれだけの幻覚を見るのだ。
 幸い(?)なのかうちの子は動ける状態でなかったので、暴れたりはしなかったが、動けたらどうなっていたか。
 
 小学4年生。
 親はだんだん病気に対して油断してくる年齢。
 多少熱があっても家で留守番できるよねと思ってしまう人もいるだろう。
 しかし息子は38度代から急に40度を超えた。
 そして気を失った。
 幻覚を見た。
 急変という言葉が存在する。
 だから子供が熱を出したときは、絶対一人にしないでください。
 特に熱の上がり始めは、近くにいてあげてください。
 お願いします。

次回は次男が熱せん妄になった時のお話。
「エクソシスト 母戦慄!熱せん妄の恐怖再び」
よかったら続けて読んでください。
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