魔法使いの弟子 ~不愛想師匠とドジっ子弟子は、今日も村人たちに愛されている~

トト

文字の大きさ
上 下
4 / 6

憧れの先輩オリビア

しおりを挟む
「ユキ君」

 その優しい声音にユキの心臓がドキリと跳ね上がった。

「オリビア」

 ユキたちより三つ年上のオリビアと呼ばれた少女は、ニコリと微笑みを返した。

「また、リオンさんに怒られたんだって」
「怒られたわけじゃないよ」

 いつの話題なのかわからないが、とりあえず否定する。
 それからハッとして一歩後ろに下がる。

「どうしたの?」
「ごめんオリビアそれ以上近づかない方がいい」
「どうして?」

 その時オリビアの鼻孔を甘ったるい香りがくすぐった。

「いい香りね」
「ごめん」
「?」

 きっとオリビアも気持ち悪くなって口を押さえて走り去るに違いない。とユキは思った。
 だが、オリビアはそんなユキの様子に首を傾げてじっと見つめたまま、その場から立ち去る様子はない。

「気持ち悪くない? お腹とか痛くならない?」
「大丈夫だけど?」
「薬の効果が切れたのかな?」

 ほっと胸を撫でおろす。
 ユキもオリビアのそんな姿は見たくなかった。

「おかしなユキね」

 クスクスと笑うと、ユキの頭をそっと撫ぜる。
 オリビアには下に三人も弟がいる、だから頭を撫ぜるのは癖みたいなものなのだ、『学校』でもオリビアはよくユキの頭を撫ぜてくれる。
 ユキはその手の暖かさを感じてこそばゆそうにへへっと笑った。

「じゃあ、私お手伝いの途中だから」
「あっ、僕も薬届けに行く途中だったんだ」

 オリビアとのやさしい一時に思わず忘れるところだった。
 ユキはオリビアと別れるとドレアの家に急いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔法の森の秘密

味噌坊主
児童書・童話
**アリアンドラ**は、小さな村の近くに住む普通の少女でした。彼女はいつも森に憧れていました。ある日、彼女は勇気を振り絞って、魔法の森への冒険を決意しました。

小鬼の兄弟とまんじゅう

さぶれ@6作コミカライズ配信・原作家
児童書・童話
ほのぼのとしたお話。 今回は絵本風に仕上げました。 是非、楽しんで下さい。 何時も応援ありがとうございます! 表紙デザイン・玉置朱音様 幻想的な音楽・写真の創作活動をされています。 Youtubeの曲は必聴! 曲が本当に素晴らしいです! ツイッター https://twitter.com/akane__tamaki Youtube https://www.youtube.com/channel/UCK2UIMESQj3GMKhOYls_VEw

小さな歌姫と大きな騎士さまのねがいごと

石河 翠
児童書・童話
むかしむかしとある国で、戦いに疲れた騎士がいました。政争に敗れた彼は王都を離れ、辺境のとりでを守っています。そこで彼は、心優しい小さな歌姫に出会いました。 歌姫は彼の心を癒し、生きる意味を教えてくれました。彼らはお互いをかけがえのないものとしてみなすようになります。ところがある日、隣の国が攻めこんできたという知らせが届くのです。 大切な歌姫が傷つくことを恐れ、歌姫に急ぎ逃げるように告げる騎士。実は高貴な身分である彼は、ともに逃げることも叶わず、そのまま戦場へ向かいます。一方で、彼のことを諦められない歌姫は騎士の後を追いかけます。しかし、すでに騎士は敵に囲まれ、絶対絶命の危機に陥っていました。 愛するひとを傷つけさせたりはしない。騎士を救うべく、歌姫は命を賭けてある決断を下すのです。戦場に美しい花があふれたそのとき、騎士が目にしたものとは……。 恋した騎士にすべてを捧げた小さな歌姫と、彼女のことを最後まで待ちつづけた不器用な騎士の物語。 扉絵は、あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

とんでもなく悪い奴

板倉恭司
児童書・童話
とんでもなく悪い奴のチャックは、盗みがバレて捕まり、十年も牢屋に入れられていました。しかし、素直に反省するような男ではありません。牢屋から出ると同時に、さっそく悪さを始めるのでした。

金色のさかな

くにん
児童書・童話
これは今よりもずいぶんと昔、フランスがまだガリアと呼ばれていたころのお話です。 ローヌ川と呼ばれる清流には、タラスクという守り神の元で、魚や鳥たちが楽しく暮らしていました。 でも、その中には、自分の美しさを自慢するばかりで、周りのものに迷惑をかけてタラスクを困らせる、マルタという金色の魚がいたのでした。

①『るなとお月さまの物語』〜るなとお月さまシリーズ〜

天月乃綾
児童書・童話
ある小さな村に住む、るなという少女がいました。星空を見るのが大好きで、毎日窓辺から、お月さまを見ていました。ある満月の夜のこと。るなは、月にささやきました。 「ねぇ、、、お月さま、、、。優しい笑顔になるお話が、聞きたい、、、」 かつて恐れられていた龍が、心優しい存在であったことが明かされ、人々を救うために力強く行動する様子が描かれます。龍の優しさと助け合いの力が、るなと村人たちの心を癒やし、絆を深めたのです。

ブルとプッププップ

こぐまじゅんこ
児童書・童話
ぼくは、犬を飼っている。 ブルドッグのブル。 かわいいんだよ。

処理中です...