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憧れの先輩オリビア

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「ユキ君」

 その優しい声音にユキの心臓がドキリと跳ね上がった。

「オリビア」

 ユキたちより三つ年上のオリビアと呼ばれた少女は、ニコリと微笑みを返した。

「また、リオンさんに怒られたんだって」
「怒られたわけじゃないよ」

 いつの話題なのかわからないが、とりあえず否定する。
 それからハッとして一歩後ろに下がる。

「どうしたの?」
「ごめんオリビアそれ以上近づかない方がいい」
「どうして?」

 その時オリビアの鼻孔を甘ったるい香りがくすぐった。

「いい香りね」
「ごめん」
「?」

 きっとオリビアも気持ち悪くなって口を押さえて走り去るに違いない。とユキは思った。
 だが、オリビアはそんなユキの様子に首を傾げてじっと見つめたまま、その場から立ち去る様子はない。

「気持ち悪くない? お腹とか痛くならない?」
「大丈夫だけど?」
「薬の効果が切れたのかな?」

 ほっと胸を撫でおろす。
 ユキもオリビアのそんな姿は見たくなかった。

「おかしなユキね」

 クスクスと笑うと、ユキの頭をそっと撫ぜる。
 オリビアには下に三人も弟がいる、だから頭を撫ぜるのは癖みたいなものなのだ、『学校』でもオリビアはよくユキの頭を撫ぜてくれる。
 ユキはその手の暖かさを感じてこそばゆそうにへへっと笑った。

「じゃあ、私お手伝いの途中だから」
「あっ、僕も薬届けに行く途中だったんだ」

 オリビアとのやさしい一時に思わず忘れるところだった。
 ユキはオリビアと別れるとドレアの家に急いだ。
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