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14 帝国にて
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アドルフ皇太子は機嫌良く部下を部屋に迎え入れた。部下のシュッツは息も絶え絶えだ。
「やあ、遅かったじゃないか。私の命令なんて忘れてしまったのかと思ったよ」
「遅かったって…これでも最速ですよ?ノーゲル王国から帝国までどれだけあると思ってんですか…ほんと人使い荒いんですから…」
「それで?どうなったって?早く教えてくれ」
彼が身を乗り出して尋ねると、部下は手に持っていた紙を彼に渡した。
「リリア様は婚約破棄を考えられているようですね。実家の公爵家に帰られたようです」
それをきくやいなや、青年の目はらんらんと輝きだした。紙を広げて見つめ、そして無邪気な子供のような笑みを浮かべる。
「…あははっ。ほんとに?すごいなあ。ねえ、私の言った通りだったろう?」
「…時々、あなた様が敵でなくてよかったと思いますよ。相手のご令嬢もおかわいそうに」
「なにそれ、私が相手では彼女が不幸になるって言いたいの?」
「まさか。ご令嬢には何としても帝国に来ていただかなければ。そうでなければ殿下がどうなってしまうか…考えただけでも恐ろしい」
「私の部下殿は大げさだなあ。ま、彼女を諦めるつもりなんてないけどね?」
「分かってますよ。彼女のために普段の政務を犠牲にしてまでいろいろ裏工作なさったようですし」
それをきいた皇太子は目を丸くして、しれっと言う。
「やだな、政務をサボったことなんて無いよ。というか、やっぱりシュッツは気づいてたんだね?」
「あなた様の楽しそうな裏工作のことなら、何も存じませんよ。正直巻き込まれたくありませんが、側近としてどういうことをなさっているのかは一応きいておきたいです」
「そうだね。もう計画も最終段階だし。シュッツには話せるだけ話してあげるよ」
皇太子は椅子に腰掛け、すらりとした足を組んだ。
「まず、リリアのいるノーゲル王国の停戦協定違反についてだ。かの国は停戦協定で禁止された事前協議なしの関税の引き上げを数年前から行っており、わが帝国の度重なる警告にもかかわらず改善が見られない。さらにその事実は貴族含めノーゲル王国の国民の大半は知らされていないようだね」
「なんと…まったく、あの国にも困ったものですな。停戦協定を一方的に破ったあげく、度重なる殿下のしつこい…ゴホン、熱心な求婚も断ってきたのですから」
皇太子は指先でペンをいじりながら部下に答える。
「ほんとだよねえ。一方的な関税の引き上げ。あれでうちは大損したよ。そもそも停戦協定だって帝国が最後の情けで打診したから成立したようなもので、それがなければ今頃あの国は地図上に存在してなかっただろうに。その恩を忘れてこんななめた真似してくれて。それに一番許せないのはリリアのことだ」
皇太子は部下から受け取った紙をくしゃっと握りつぶした。
「私はリリアと結婚させてくれって言ったんだよ?それなのに、「うちの第一王女はいかがですか」だって?あの国王は会話の仕方を知らないのか?それとも頭が足りないのかな?」
「まあ、あの国王はいろいろ考えて行動できる人物ではありませんからな。帝国の皇太子と娘が婚約すれば自国内での自身の求心力が上がると思ったから言ってみたのでしょう」
「その後何度も打診するもリリアは王太子と結婚するからの一点張り。こちらの方が大国なのによくそんな強気になれるよね。関税を勝手に引き上げた負い目なんて無いのかな?」
「あの手の国の指導者は自国内での評価しか気にしませんからね。だから外交では恐ろしいほど無能なのです。長期的な視点が欠けているともいえますが」
皇太子は部下を見つめて優しげな瞳を細めた。
「ほんとだね。でも、その関税の件に関してはすでに報復措置を取ってあるんだ」
「やあ、遅かったじゃないか。私の命令なんて忘れてしまったのかと思ったよ」
「遅かったって…これでも最速ですよ?ノーゲル王国から帝国までどれだけあると思ってんですか…ほんと人使い荒いんですから…」
「それで?どうなったって?早く教えてくれ」
彼が身を乗り出して尋ねると、部下は手に持っていた紙を彼に渡した。
「リリア様は婚約破棄を考えられているようですね。実家の公爵家に帰られたようです」
それをきくやいなや、青年の目はらんらんと輝きだした。紙を広げて見つめ、そして無邪気な子供のような笑みを浮かべる。
「…あははっ。ほんとに?すごいなあ。ねえ、私の言った通りだったろう?」
「…時々、あなた様が敵でなくてよかったと思いますよ。相手のご令嬢もおかわいそうに」
「なにそれ、私が相手では彼女が不幸になるって言いたいの?」
「まさか。ご令嬢には何としても帝国に来ていただかなければ。そうでなければ殿下がどうなってしまうか…考えただけでも恐ろしい」
「私の部下殿は大げさだなあ。ま、彼女を諦めるつもりなんてないけどね?」
「分かってますよ。彼女のために普段の政務を犠牲にしてまでいろいろ裏工作なさったようですし」
それをきいた皇太子は目を丸くして、しれっと言う。
「やだな、政務をサボったことなんて無いよ。というか、やっぱりシュッツは気づいてたんだね?」
「あなた様の楽しそうな裏工作のことなら、何も存じませんよ。正直巻き込まれたくありませんが、側近としてどういうことをなさっているのかは一応きいておきたいです」
「そうだね。もう計画も最終段階だし。シュッツには話せるだけ話してあげるよ」
皇太子は椅子に腰掛け、すらりとした足を組んだ。
「まず、リリアのいるノーゲル王国の停戦協定違反についてだ。かの国は停戦協定で禁止された事前協議なしの関税の引き上げを数年前から行っており、わが帝国の度重なる警告にもかかわらず改善が見られない。さらにその事実は貴族含めノーゲル王国の国民の大半は知らされていないようだね」
「なんと…まったく、あの国にも困ったものですな。停戦協定を一方的に破ったあげく、度重なる殿下のしつこい…ゴホン、熱心な求婚も断ってきたのですから」
皇太子は指先でペンをいじりながら部下に答える。
「ほんとだよねえ。一方的な関税の引き上げ。あれでうちは大損したよ。そもそも停戦協定だって帝国が最後の情けで打診したから成立したようなもので、それがなければ今頃あの国は地図上に存在してなかっただろうに。その恩を忘れてこんななめた真似してくれて。それに一番許せないのはリリアのことだ」
皇太子は部下から受け取った紙をくしゃっと握りつぶした。
「私はリリアと結婚させてくれって言ったんだよ?それなのに、「うちの第一王女はいかがですか」だって?あの国王は会話の仕方を知らないのか?それとも頭が足りないのかな?」
「まあ、あの国王はいろいろ考えて行動できる人物ではありませんからな。帝国の皇太子と娘が婚約すれば自国内での自身の求心力が上がると思ったから言ってみたのでしょう」
「その後何度も打診するもリリアは王太子と結婚するからの一点張り。こちらの方が大国なのによくそんな強気になれるよね。関税を勝手に引き上げた負い目なんて無いのかな?」
「あの手の国の指導者は自国内での評価しか気にしませんからね。だから外交では恐ろしいほど無能なのです。長期的な視点が欠けているともいえますが」
皇太子は部下を見つめて優しげな瞳を細めた。
「ほんとだね。でも、その関税の件に関してはすでに報復措置を取ってあるんだ」
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