697 / 716
第26幕 iの意味
16
しおりを挟む
涙を拭い「へへっ……下手っぴだよ?」と伝えると、データーが入ったタブレットを取りに、趣味用に充てがった小部屋に向かおうとし立ち止まる。
そういえば……部長には何度も言われた。
『柳の写真はいつも切ないな~』
『どんな気持ちで毎日撮ってるんだ?』
『お前、もしかして片想いでもしてるのか?』
部長の言葉を思い出すと顔を真っ赤に染め、耳まで痛いぐらいに熱くなる。ドクドクと心臓が鳴り響き胸を叩いてくる。
散々気持ちを吐露して、今さら羞恥もなにもない訳だが、言葉にするのと写真を見られるとでは、レベルが遥かに異なる。例えるなら丸裸にされてしまう……そんな気分。
悠斗が俺の写真を見ながら、どう思うかは正直分からない。けれど雑誌に掲載されたカットだけで、感想をスラスラ口にしていたのだ。
写真を悠斗に見せる──ということは、すなわち悠斗に対する俺の想いをぶち撒けることに繋がる。
事情を知らない部長にもダダ漏れの俺の写真。一枚、また一枚と捲る度、『好き……逢いたい……』っと言っているようなものではないか。
今まで自分が撮った写真を脳裏に浮かべ、見せるべきではないのではと頭を抱えていた。
「……瀬菜? もしかして酔ってる?」
「へっ? あっ、うん! あっ、でも全然酔ってない!」
心配そうに俺に歩み寄る悠斗が、俯く俺の前にしゃがみ込み俺の両手を握ってくる。
「酔ってるのに全然酔ってないって、それ……どっちなの?」
「へへっ……どっちだろ」
「瀬菜の酔っ払い姿、どんなか知っているけどな」
「あれだよ! ほろ酔いみたいな……悠斗は? 眠くない?」
目を泳がせながら言い訳を探す俺を、探るように覗き込む悠斗。きっと俺の心のうちを知ったら、余計に見せろとせがまれるに違いない。
「……あのさ、今日はもう遅いし、また今度にしよ!」
「ん? 休みだし、少しぐらい夜ふかししても……」
「あはは……いや、そうだけど……ほら、お風呂も入らないとだし!」
「お酒飲んでるのに?」
「ベッドには清い身体で入りたいだろ?」
「あぁ、そっか……うん」
不服そうにしていた悠斗は、ニコリと笑顔で立ち上がり、スッと手を頬に滑らせると耳元に顔を寄せ、蕩ける甘い声を送り込んだ。
「……セックスしたいなら、そう言ってくれればいいのに。最近してなかったし、我慢できないってことだよね?」
「──ッ! なっなっなっ‼︎」
クスクスと笑いながら、悠斗は勘違いをしている様子。考えてもいなかったことを言われ、ひとり焦るのだった。
そういえば……部長には何度も言われた。
『柳の写真はいつも切ないな~』
『どんな気持ちで毎日撮ってるんだ?』
『お前、もしかして片想いでもしてるのか?』
部長の言葉を思い出すと顔を真っ赤に染め、耳まで痛いぐらいに熱くなる。ドクドクと心臓が鳴り響き胸を叩いてくる。
散々気持ちを吐露して、今さら羞恥もなにもない訳だが、言葉にするのと写真を見られるとでは、レベルが遥かに異なる。例えるなら丸裸にされてしまう……そんな気分。
悠斗が俺の写真を見ながら、どう思うかは正直分からない。けれど雑誌に掲載されたカットだけで、感想をスラスラ口にしていたのだ。
写真を悠斗に見せる──ということは、すなわち悠斗に対する俺の想いをぶち撒けることに繋がる。
事情を知らない部長にもダダ漏れの俺の写真。一枚、また一枚と捲る度、『好き……逢いたい……』っと言っているようなものではないか。
今まで自分が撮った写真を脳裏に浮かべ、見せるべきではないのではと頭を抱えていた。
「……瀬菜? もしかして酔ってる?」
「へっ? あっ、うん! あっ、でも全然酔ってない!」
心配そうに俺に歩み寄る悠斗が、俯く俺の前にしゃがみ込み俺の両手を握ってくる。
「酔ってるのに全然酔ってないって、それ……どっちなの?」
「へへっ……どっちだろ」
「瀬菜の酔っ払い姿、どんなか知っているけどな」
「あれだよ! ほろ酔いみたいな……悠斗は? 眠くない?」
目を泳がせながら言い訳を探す俺を、探るように覗き込む悠斗。きっと俺の心のうちを知ったら、余計に見せろとせがまれるに違いない。
「……あのさ、今日はもう遅いし、また今度にしよ!」
「ん? 休みだし、少しぐらい夜ふかししても……」
「あはは……いや、そうだけど……ほら、お風呂も入らないとだし!」
「お酒飲んでるのに?」
「ベッドには清い身体で入りたいだろ?」
「あぁ、そっか……うん」
不服そうにしていた悠斗は、ニコリと笑顔で立ち上がり、スッと手を頬に滑らせると耳元に顔を寄せ、蕩ける甘い声を送り込んだ。
「……セックスしたいなら、そう言ってくれればいいのに。最近してなかったし、我慢できないってことだよね?」
「──ッ! なっなっなっ‼︎」
クスクスと笑いながら、悠斗は勘違いをしている様子。考えてもいなかったことを言われ、ひとり焦るのだった。
0
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
Take On Me 2
マン太
BL
大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。
そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。
岳は仕方なく会うことにするが…。
※絡みの表現は控え目です。
※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる