王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第26幕 iの意味

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「元々は僕たちのせいで君たち二人に辛い思いをさせてしまった。もし君たち二人が別れてしまったら、僕と歩も別れようって話していたんだ」
「えっ! それはダメだよ! 俺たちの問題と祐一さんたちの問題は、全く別で……」
「うん、でも……切っかけは、お爺様を説得できなかった僕たちのせいだから」
「祐一さん、それは違うよ。それにさ、悠斗も俺も今はこうして……俺、正直しんどかったけど、振り返るとよかったかなって。まだまだ弱虫で頼りないけど、この二年間で凄く強くなれたんだ。みんなをいっぱい傷付けてしまったけど、悠斗の想いも、仲間の想いも、これからもっと大切にしたいなって」
「おっ! 瀬菜、いいこと言うね~♪ まっ、この前まで瀬菜はダメダメ人間だったけどね~♪」

 クスクス笑いながら、実千流が茶化してくる。言い返せないのは、俺が本当にダメ人間だったから仕方がない。
 神妙な面持ちの祐一さんも、そんな俺たちの明るい様子に笑ってくれた。

「僕たちもね、やっとこお爺様を説得できたんだ。それでね、養子縁組して歩と家族になったんだよ。今日はその報告も兼ねてだったんだけど……どうやらお邪魔しちゃったみたいで」

 照れ臭そうに笑いながら、祐一さんは「本当に僕たちって、空気読めないよね~」と呟いていた。

「わぁ~おめでとう! へへっ、なんか心強いな。そっか、家族か~」
「凄い~♪ 祐一さん、おめでとうございます! 瀬菜、いいお手本だよ! 俺たちもあとに続かなきゃだね!」
「二人共ありがとう。えへへっ、なんか……照れるね」
「折角休みもらったんだし、祐一さんたちもゆっくりしてって。佐伯さんも、ああして手伝ってくれてる訳だし!」
「いいの⁉︎ それじゃお言葉に甘えようかな」

 幸せそうにする祐一さん。幸せな姿の裏で、祐一さんも佐伯さんも二人でいっぱい戦ってきたのだろう。
 だからこそきっと今、素敵な笑顔になれているはずだ。

「俺も、もっと頑張らないと……」
「瀬菜は頑張り過ぎて空回りするんだから、今ぐらいでいいよ!」
「そうそう! 瀬菜君ひとりで考え込むからね~」

 二人の言葉にギクッとしながら、三人で吹き出してしまう。

「おーい、そこの姫君たち。そろそろ女子トークは終わりにして、少しは手伝え~」

 環樹先輩が嫌味交じりに、料理をテーブルに並べた。このあと多澤と由良りん、村上と玉夫も来る予定だ。
 大人数のパーティーには、料理はまだ足りなそうだ。料理人のように悠斗と佐伯さんは、次から次へと料理を作ってくれていれていた。

「環樹じゃ戦力にならないもんね!」
「アホ言え~。実千流よりはマシだ。だいたい手伝うからって早く来たんだろ? 喋っていてどうする」
「あー環樹君だっけ? ごめんね? なら僕も張り切って参戦しようかな!」
「……祐一、お前はもう先に飲ませてもらえ」
「ちょっと! 歩! 僕だって料理ぐらい!」
「いや、本当に止めてくれ。折角の新居を火事にしたくない」
「ククッ……そういうことなら。綺麗なお兄さん、僕がお注ぎしますよ~♪」
「あーー環樹またそうやって‼︎」

 部屋の中に笑い声と、料理のいい匂いがしている。広いリビングも人が増えると賑やかだ。
 楽しそうにワイワイしているみんなの姿を眺めているだけで、平和だなと自然と笑みが溢れてしまう。
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