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第25幕 伝えるということ
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舌が入り込み上顎から歯列を辿ると、舌全体を転がされる。厚くて弾力のある悠斗の舌が、俺の舌に絡まり掬い上げると唇を喰まれる。
ツンと尖った舌先を吸い上げられると、ビリビリと身体中に痺れが走る。チュッ……チュルと深く交わされる口付けに、自身も習うように貪った。
「……んッ……ふっ……はっ……」
鼻から抜けた艶のある声。角度を変える度に息を吸い込み舌を絡める。互いに気が済むまで唇を触れ合わせると、深く交わす口付けを解いていった。
鼻を突き合わせ、余韻を楽しむように小さく唇をチュッチュと啄む。まるで小鳥たちがくちばしを突き合い、愛情を確かめているようだ。
「クスッ……可愛い。トロンとしちゃって」
「仕方ないだろ……悠斗とのキスはクラクラするんだ」
「あっ、今誰かと比べたでしょ?」
「比べてない!」
「何度したの?」
「それ聞いてどうするんだ。聞いたら悠斗、意地悪するじゃんか」
「んー……意地悪はしないけど、瀬菜にその分キスしてもらう」
「これからいっぱいするだろ? 折角仲直りしたのに」
「いっぱいはする。けど、瀬菜からしてもらうことが重要なの。なら仲直りの印に瀬菜からキスして?」
モジモジしながら悠斗の唇にキスを落とそうとすると、視線が気になりそちらへ目を向ける。興味津々といった様子で、ユウがニコニコ顔で尻尾を振りながら俺たちをジッと観察していた。
「……ユウが見てる」
子供に見られた親のような気分に、キスを中断すると悠斗もユウに視線を移した。
「こらお前、覗きはダメだよ?」
「ウゥ~……」
「そんな声出さないで? そうだあとでもっと美味しいご飯あげるからしばらく二人にしてくれる?」
「……バゥ!」
ユウは小さくひと声鳴き反応を示すと、スッと立ち上がりカツカツ足音を弾ませながらキッチンのほうへと行ってしまった。俺の言いつけなど聞きもしないのに、悠斗に従うユウにムッとしそうだ。
「なんで悠斗には素直なんだよ……」
「ふふっ、なんでかな?」
「アイツ俺を主人と思ってない」
「そうかな? 瀬菜のことが大好きって感じするよ? あの子とは波長が合ってよかった」
「あー……お前たち、見た目も中身もそっくりだよな」
「そっくり?」
「うん。ユウをおふくろから預かったとき、ゆうちゃんみたいに天使だったのにさ。成長したらまるで悠斗だ。悪戯好きだけど悲しんでいるときは寄り添ってくれて。悠斗の存在が近くにあるみたいだった。最初は悠斗の生き霊かなにかかと思っていたんだ」
「生き霊って酷いな。けど、いい番犬にはなってるみたい。瀬菜のおばさんは見る目があるよね」
「えっ? ユウは悠斗がくれたんじゃ……」
てっきり悠斗がユウを俺に託したとばかり思っていた。ひとりでも寂しくないようにと。
犬は人の心に敏感だ。隣に居るだけで癒やしてくれる。毎日家に帰る義務と、目が覚めてからの安心感。一匹の存在だけでずいぶん人間らしく生活してこれた。
ツンと尖った舌先を吸い上げられると、ビリビリと身体中に痺れが走る。チュッ……チュルと深く交わされる口付けに、自身も習うように貪った。
「……んッ……ふっ……はっ……」
鼻から抜けた艶のある声。角度を変える度に息を吸い込み舌を絡める。互いに気が済むまで唇を触れ合わせると、深く交わす口付けを解いていった。
鼻を突き合わせ、余韻を楽しむように小さく唇をチュッチュと啄む。まるで小鳥たちがくちばしを突き合い、愛情を確かめているようだ。
「クスッ……可愛い。トロンとしちゃって」
「仕方ないだろ……悠斗とのキスはクラクラするんだ」
「あっ、今誰かと比べたでしょ?」
「比べてない!」
「何度したの?」
「それ聞いてどうするんだ。聞いたら悠斗、意地悪するじゃんか」
「んー……意地悪はしないけど、瀬菜にその分キスしてもらう」
「これからいっぱいするだろ? 折角仲直りしたのに」
「いっぱいはする。けど、瀬菜からしてもらうことが重要なの。なら仲直りの印に瀬菜からキスして?」
モジモジしながら悠斗の唇にキスを落とそうとすると、視線が気になりそちらへ目を向ける。興味津々といった様子で、ユウがニコニコ顔で尻尾を振りながら俺たちをジッと観察していた。
「……ユウが見てる」
子供に見られた親のような気分に、キスを中断すると悠斗もユウに視線を移した。
「こらお前、覗きはダメだよ?」
「ウゥ~……」
「そんな声出さないで? そうだあとでもっと美味しいご飯あげるからしばらく二人にしてくれる?」
「……バゥ!」
ユウは小さくひと声鳴き反応を示すと、スッと立ち上がりカツカツ足音を弾ませながらキッチンのほうへと行ってしまった。俺の言いつけなど聞きもしないのに、悠斗に従うユウにムッとしそうだ。
「なんで悠斗には素直なんだよ……」
「ふふっ、なんでかな?」
「アイツ俺を主人と思ってない」
「そうかな? 瀬菜のことが大好きって感じするよ? あの子とは波長が合ってよかった」
「あー……お前たち、見た目も中身もそっくりだよな」
「そっくり?」
「うん。ユウをおふくろから預かったとき、ゆうちゃんみたいに天使だったのにさ。成長したらまるで悠斗だ。悪戯好きだけど悲しんでいるときは寄り添ってくれて。悠斗の存在が近くにあるみたいだった。最初は悠斗の生き霊かなにかかと思っていたんだ」
「生き霊って酷いな。けど、いい番犬にはなってるみたい。瀬菜のおばさんは見る目があるよね」
「えっ? ユウは悠斗がくれたんじゃ……」
てっきり悠斗がユウを俺に託したとばかり思っていた。ひとりでも寂しくないようにと。
犬は人の心に敏感だ。隣に居るだけで癒やしてくれる。毎日家に帰る義務と、目が覚めてからの安心感。一匹の存在だけでずいぶん人間らしく生活してこれた。
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