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第21幕 卒業旅行は終わりで始まり
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「その……なんだ。みんな今までありがとう。充実した三年間だった。馬鹿ップル二人には振り回されることもあったけど、いい意味で勉強にはなった」
みんなでキョトンと驚きを示す。まさか多澤から感謝の言葉を言われるとは思ってもいなかったのだ。照れ臭い雰囲気を払拭するように、村上が挙手して立ち上がった。
「はいはい! 俺も~! 毎日飽きることなく生活できたのは、みんなのおかげ! 天使の柳ちゃん、ハイスペックな王子、多澤の毒舌も、カナちゃんのツンデレも、実千流ちゃんの破天荒振りも! あっ環樹先輩の変態っぷりも! みんな俺のいい仲間! ありがとう♪ 次カナちゃんどうぞ~」
「はぁ~? なんだよこの流れ。……まぁ、腐ってた自分がまともになれたのは、ここに居る全員が迎えてくれたからだ。その、感謝してる。ヤナには得に……声掛けてくれたの、お前が一番最初だったからよ。ありがとうな。……って、次斎賀!」
「えっと、なんか改めてって……ちょい恥ずいけど。いきなり女装で現れて、今思うとヤバイ奴だけど、男だって解ったあとからもみんな優しくて、友達になってくれてありがとう。じゃ、次部外者だけど環樹!」
「えっ、僕もいいの~♪ いやぁ、君たちって本当に仲良しで羨ましいよ。生徒会もしっかり纏めてくれたし感謝しているよ。この関係はこれからも続いて欲しいと心から願っている。あと、卒業旅行なのに来ちゃってごめんね~♪」
旅行に来てしまったことを気にする環樹先輩。俺たちは先輩をいつもいじって遊ぶが、本当は感謝している。いつもおちゃらけている環樹先輩から、褒めてもらえたことに戸惑い、みんなちょっぴり照れている。
「なになに~♪ もうみんな可愛い後輩だな~♪ ほんじゃ、次は不器用王子~♪」
「不器用ってなんですか? 俺もね、みんなが友達でよかったよ。いっぱい笑うこともできて、いっぱい怒られたりもした。瀬菜とこうしていられるのもみんなが居たから。本当にありがとう。また迷惑掛けることもあると思うけど、間違えたりしていたら叱ってやって? それじゃ、瀬菜の番だよ?」
「……うーんと……。その……ありがとう……」
みんなは続きがあると、無言で俺の言葉を待ってくれている。なにを話そうか、順番が回ってくるまでずっと考えていた。でも、俺の口からはそれ以上の言葉は出てこなかった。
「以上っ‼︎ おしまい‼︎」
ポカンとするみんな。
「おいおい嘘だろ?」
「柳ちゃん、もう一声!」
「もうちっとなんかあるだろ? 頑張れヤナ」
「あはははー! 瀬菜らしい!」
「姫乃ちゃんは変わらないね~♪」
「クスッ、瀬菜はそのひと言に思いを込めたんだよね?」
たぶん言いたいことや伝えたいことは山ほどある。纏めるにはあまりにも沢山あり過ぎて、思考が定まらないのだ。
「俺、みんなに助けてもらってばかりだった。だから、ありがとう以外、ほかに思いつく言葉浮かばなかったんだ」
この三年間は俺の宝物。様々な困難を乗り越えられたのは友人たちのおかげでもある。
下を向く俺の頭を多澤がグリグリと掻き混ぜる。上を向けば珍しく優しい笑顔で宥められた。
「まぁ、瀬菜の気持ちも伝わったことだし、もう一回乾杯だな」
「おぉ、ならゲストの環樹先輩頼みます~」
「それじゃ、君たちの卒業と、今後の成功を祈って! かん~ぱぁ~いっ!」
まぁるい輪っかが一点を目指し繋がる。カツンカツンと音を立て、これからの未来へと祝福を奏でてくれる。
この仲間が居ればきっとこれからも大丈夫。一人ひとりの顔を眺め、そっと穏やかに微笑んだ。
みんなでキョトンと驚きを示す。まさか多澤から感謝の言葉を言われるとは思ってもいなかったのだ。照れ臭い雰囲気を払拭するように、村上が挙手して立ち上がった。
「はいはい! 俺も~! 毎日飽きることなく生活できたのは、みんなのおかげ! 天使の柳ちゃん、ハイスペックな王子、多澤の毒舌も、カナちゃんのツンデレも、実千流ちゃんの破天荒振りも! あっ環樹先輩の変態っぷりも! みんな俺のいい仲間! ありがとう♪ 次カナちゃんどうぞ~」
「はぁ~? なんだよこの流れ。……まぁ、腐ってた自分がまともになれたのは、ここに居る全員が迎えてくれたからだ。その、感謝してる。ヤナには得に……声掛けてくれたの、お前が一番最初だったからよ。ありがとうな。……って、次斎賀!」
「えっと、なんか改めてって……ちょい恥ずいけど。いきなり女装で現れて、今思うとヤバイ奴だけど、男だって解ったあとからもみんな優しくて、友達になってくれてありがとう。じゃ、次部外者だけど環樹!」
「えっ、僕もいいの~♪ いやぁ、君たちって本当に仲良しで羨ましいよ。生徒会もしっかり纏めてくれたし感謝しているよ。この関係はこれからも続いて欲しいと心から願っている。あと、卒業旅行なのに来ちゃってごめんね~♪」
旅行に来てしまったことを気にする環樹先輩。俺たちは先輩をいつもいじって遊ぶが、本当は感謝している。いつもおちゃらけている環樹先輩から、褒めてもらえたことに戸惑い、みんなちょっぴり照れている。
「なになに~♪ もうみんな可愛い後輩だな~♪ ほんじゃ、次は不器用王子~♪」
「不器用ってなんですか? 俺もね、みんなが友達でよかったよ。いっぱい笑うこともできて、いっぱい怒られたりもした。瀬菜とこうしていられるのもみんなが居たから。本当にありがとう。また迷惑掛けることもあると思うけど、間違えたりしていたら叱ってやって? それじゃ、瀬菜の番だよ?」
「……うーんと……。その……ありがとう……」
みんなは続きがあると、無言で俺の言葉を待ってくれている。なにを話そうか、順番が回ってくるまでずっと考えていた。でも、俺の口からはそれ以上の言葉は出てこなかった。
「以上っ‼︎ おしまい‼︎」
ポカンとするみんな。
「おいおい嘘だろ?」
「柳ちゃん、もう一声!」
「もうちっとなんかあるだろ? 頑張れヤナ」
「あはははー! 瀬菜らしい!」
「姫乃ちゃんは変わらないね~♪」
「クスッ、瀬菜はそのひと言に思いを込めたんだよね?」
たぶん言いたいことや伝えたいことは山ほどある。纏めるにはあまりにも沢山あり過ぎて、思考が定まらないのだ。
「俺、みんなに助けてもらってばかりだった。だから、ありがとう以外、ほかに思いつく言葉浮かばなかったんだ」
この三年間は俺の宝物。様々な困難を乗り越えられたのは友人たちのおかげでもある。
下を向く俺の頭を多澤がグリグリと掻き混ぜる。上を向けば珍しく優しい笑顔で宥められた。
「まぁ、瀬菜の気持ちも伝わったことだし、もう一回乾杯だな」
「おぉ、ならゲストの環樹先輩頼みます~」
「それじゃ、君たちの卒業と、今後の成功を祈って! かん~ぱぁ~いっ!」
まぁるい輪っかが一点を目指し繋がる。カツンカツンと音を立て、これからの未来へと祝福を奏でてくれる。
この仲間が居ればきっとこれからも大丈夫。一人ひとりの顔を眺め、そっと穏やかに微笑んだ。
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